ロンドンのピッツァなんて -034 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 レストランの中央でピッツァを焼いている男は気難しい顔をしたイタリア人。ピッツァの味はこの男の腕次第だ。2人いるウエイターのうち1人はローマやミラノの旅行者向けの安レストランでよく見かける若いナイスガイ。もう一人は少し腹が突出し始めた20代後半のイギリス人のようである。遠い夏に想いを-ナプキン
 本格的ピッツァなど期待もせずに注文した。イギリスのピッツァなど食えるものかと内心では思ったからだ。『ピッツァ・エクスプレス』だから素早く焼き上がって、時間の節約と胃袋の満腹感だけで充分とたかをくくっていた。
 ところが、一口頬ばって驚いた。美味い。今まで食べたピッツァのなかでトップ・ランクに入る。最近は日本でもアメリカナイズされたピッツァばかりで、昔は「こんな、ケチャップとプロセスチーズの甘ったるいピッツァなど食えるか」と反発していたものだが、最近は「ピッツァなんて所詮こんな程度の食いものさ」と不美味さに馴れっこになっていた。ここのピッツァはお薦めだ(今では東京原宿に直営店[写真下]があるが、店の体裁はロンドンのとは全く異なりモダーンだ)。ピッツァとはこんなに美味しいものだと思い直させてくれただけでも価遠い夏に想いを-Pizza
値があった。ナポリには行ったことはないが、ナポリの二流か三流どころには勝てると思う。チェーン店でこれだけの焼き具合と味を出せれば満足すべきだ。アメリカ系のチェーン店など足元にも及ばない。
 店を出るときにノッコがこの店の紙のナプキンを記念に持って帰りたいと言いだした。腹の出たウエイターに新しいのを頼んだ。しばらくして忘れた頃になって持ってきて、目の前に突出した。血の色のように赤いナプキン。まさにロンドンの色だ。

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