クィーンズ・ロードを上り切り、広いハイロードを右に折れる。道の両側には木立や雑草が生茂る。無造作に放置された小さな緑地帯のようだが、日本と違ってゴミだらけでないので汚いという感覚はない。むしろ、森の一部として自然に任せてあるように思えた。
そのまま5分ほど歩くと、昨朝と同じ場所に出た。通りの右側には家々が並ぶ。普通の家でも色彩が豊かで、色の組合せは家の形と町並によくマッチして、見ているだけで楽しい。小さな前庭はよく手入れされ、玄関には本物と見違えるような犬の置物があったりする。家を建てるなら、こんなのがいいとか、あんなのがいいとか、楽しい散歩だった。
ホテルに戻った。そのまま1階のレストランへ直行する。今朝はキッパー(燻製のニシン料理)を注文。ノッコはいつもの通りコンチネンタルを変えない。今日は中国系らしい新米のウエイターが来た。英語が怪しくて、注文の意味が解ったのかどうか、料理が出てくる迄はそのへんのことは判明しない。
奥のテーブルからジュースを注いで席に戻ると、フロント係りの栗毛で小柄な女の子がいきよいよくレストランに飛込んで来た。
「電話です」
大きな可愛い瞳をクリクリさせながら覗き込むように屈みながら小声で言う。
チャールズからかと思って、フロントの反対側にある電話室で受話器をとった。予期に反して、チャオの少しかすれた声が返ってきた。こうゆう時は一瞬いやな予感が走るものだが、極力冷静を装う。用件はパリのポールとジュディの住所と電話番号だった。東京でレンヌのフィリップとパリのジュディの電話番号をKDDに調べてもらったのだが、ジュディの方は番号を公開していないとのことで不明のままだった。急いで手紙を送ったのだが、遂に返事がこなかった。こちらからはパリのホテル名と電話番号を書いて置いたので、最悪でもホテルにメッセージが入っているだろと期待して、余り気にしていなかった。
ミネソタの遠い日々
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