パブとビター - 021 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 食後のお茶を飲んだ後、余り遅くならないうちに帰ることにした。犬の散歩をかねてチャールズがホテルまでついて来てくれた。夕暮れが迫っていたが、西の空はピンクに染まっていた。近道を教えてあげるという。クイーンズ・ロードをいったん下り、キングズ・アベニューを通りを左折し、さらに左に大きくカーブするローバック・レーンをのぼるとホテルの裏手に出た。

ヴィオさんの旅行ブログ-,ホテルパブ  ノッコは疲れたからと部屋へ上がっていった。チャールズと2人でホテルのパブへ行き、外のテラスヘ出てビールを飲んだ。イギリスのビターは微かに甘味があり、香りと味に独特の風味と苦みがある。最初は取っ付き難いが、馴れるほどに止められなくなる。ドイツのラーガーは冷やして飲むが、ビター(イギリスのパブでだす生ビール)は余り冷やさないし、度数が低く、酒の弱いご主人には飲み易く、不思議に悪酔いしないのが有難い。また、ハーフ・パイントのグラスをゆっくりと飲むのもいい。日本人はビールをガブガブと一気に飲むものと決めているが、イギリスではパブでもゆっくり味わい、楽しみながら飲む。「つまみ」など殆どとらずに、ビターだけをチビチビと飲む。上面醗酵のビターはこの冷やさない飲み方がいい。
 今日は金曜日、夜になってホテルの1階の小さなホールで結婚披露宴が催されていた。4階の屋根裏部屋まで大きな話声と笑い声が聞こえてくる。突然、警報ベルの大きな音がホテル中に響きわたった。「火事だ」と直感。泊り客がドタドタと階段を駆けおりて行く。私達も後に続いた。しかし、火事の気配もない。結婚披露宴の花嫁も花婿も出席者も泊り客もみな玄関前の薄明るい広場に集まった。誰も文句を言わず、結構ニコニコ・ワイワイやっている。しばらくして、ホテルの小柄なマネジャーが出てきて、何事もなかったので部屋に戻れという。日本なら平身低頭だろうが、いたって、さらりと事務的だ。このへんも日本と心情的に異なる。どうも、披露宴の客がだすタバコの煙を感知したらしい。今日は長い一日だった。何か、芯から疲れた感じで、後は寝ることだけしか頭になかった。

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