イギリスの夏 - 019 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 ケンブリッジについては旅行案内書の記述みたいになってしまった。ご勘弁ねがいたい。何せ自分用に書き留めておいた日記なので。

ヴィオさんの旅行ブログ-England Map

 さてM11を一気に走り抜け帰路についた。イギリスは緯度が高いから、まだ太陽は高く、車内への直射日光も結構厳しい。風の音とタイヤの騒音とエンジンの唸音で頭がボーとしてきた。イギリスは寒い国だ。エアコンが無い国だ。自動車にも無いし、電車にも無いし、家にも無いし、ホテルにも無いし、デパートにも無し、の無々尽くしである。当時はエアコンのある方が異常に感じられた。イギリスは寒い国だからだ。しかし、それ以上に理由がありそうだ。イギリス人は新しい家電的なものが好きでないのだ。だから旧式なものをいまだに大切に使っている。それに、こんなに暑い夏は滅多にあるものでない。ノッコは後ろの座席でまともに風と闘っている。閉めると暑い、開けると飛ばされそうだ。車窓に流れる夕暮れの田園風景を楽しんでいる余裕はない。
 時間がどんどん過ぎてゆき、お母さんの事が心配になってきた。1時間ほど走ってエッピングの町に着いた。今日は6時半までに帰ってチャールズの家で一緒に食事をすることにしていた。帰りがけに、エッピングのフィシュ・アンド・チップスの店へ寄って、お母さんの希望で魚のフライを買う予定だった。ここの店のフィッシュ・アンド・チップスは美味しいのだとチャールズが言う。店内では客が列を作っている。食欲をそそる魚と油の香ばしい匂い。久し振りのフィッシュ・アンド・チップスの匂いだった。極端な話、本格的なのは18年前にミネソタで食べて以来だった。
 大学のミネアポリス・キャンパスにあるスタジアムの東側に本格的なフィッシュ・アンド・チップスの店が開店し、何度か買って帰って夕食のおかずにしたことがあった。まともな魚が簡単に手に入らない土地柄だったので、揚げたての温かいディープ・フライの魚はとても美味しかった。そういえば、このエッピングの店はウナギの寝床みたいな店構えといい、白塗りの店内の雰囲気といい、ミネアポリスの店とよく似ている。


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