3人で一緒に写真を撮ってもらおうと周囲を見回しているが、誰も振り向いてくれない。近くにいた30代の夫婦の小柄な奥さんが見かねて、「撮ってあげましょう」といってくれた。余り訛のないきれいな英語だが、どこかオランダあたりから来た夫婦のようで、とても親切だった。
中庭を一回りしてキングズ・カレッジのチャペルへ行く。チャペルとしては巨大である。この奥の主祭壇にはルーベンスの大きな「三賢人の礼拜図」がある。近年この大学に寄贈され、チャペルの宝物になった。堂内の売店で大学の案内書を捜す。いつもノッコが英、仏、伊、独語を欲しがるから、何処へ行っても数か国語のパンフレットを手に入れることになり、トランクが満杯になる。
ここを出てキングズ橋を渡ってバックスへ出る。更にクレア橋を渡ってキンスズ・カレッジの中を抜けトランピントン通りへ出た。そのままトランピントン通りを南に進む。相変わらず暑い。疲れも出てきて喉も乾いた。
喫茶店を2,3軒覗いてみたが、表通りの店は全て満員だ。トランピントン通りを看板を頼りに細い路地を左に曲がった。白と緑と黒でストライプに塗られた今風の店があり、小さな入口から地下室へ下りた。ウナギの寝床のような店でトランピントン通りの方向に伸びている。
奥のテーブルに座り、飲物を注文し、周りを見回すと壁には戦時中の古い新聞が数枚貼ってある。古ぼけた新聞の写真には戦時中の英国の戦闘機や英陸軍の兵士の姿が写っている。店は新しい作りだから、何か古い物をという訳でもあるまいに。もしかして、店のオーナーは英国の退役軍人で英国魂を懐かしんでいるのだろうか。オレンジジュースで喉を潤す。何時まで憩んでいても、足の痛みや疲れがすっかりとれるわけでもないので、元気をだして出かけることにした。
再びトランピントン通りへ出る。画廊などを覗いて道を歩くうちに、コーパス・クリスティ・カレッジの門の前に出た。
ミネソタの遠い日々
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