道の両側には時折古い民家が現れる。歴史的な価値は判らないが、16、7世紀の古い家が道筋に点在する。特にチューダー朝様式の木組みの家が保存状態も良く、その優美さがなんともいえない。イギリスの田舎はいい。イギリスでは田舎に本当のイギリスが隠れているような気がする。今回は是非とも田舎を回りたかった。
道路わきの雑草の上を若い娘が乗馬をしている。乗馬クラブから借りてきたのか、新米らしく緊張した面持ちでヨタヨタと馬を進めている。通りがかりの車が馬を驚かさないようにスピードを落とす。いかにもイギリスらしい気配りがいい。しかし、どこの国も同じで、時には唸りを上げて車をぶっとばして行く不心得者がいて、馬は神経質だから大パニックを起こすこともあるという。
グレート・シェルフォードを過ぎてクリークを渡り広い街道へ出た。イギリスの地名には×××フォードと『フォード』が付くものが多い。チャールズの説明では川の浅瀬を意味する言葉で、古くは川の流れを指したそうである。だから×××フォードには必ず川がある(あった)と思えばよい。オックスフォードは文字通り『牛が渡る浅瀬』となる。新しい所は例外として、古い地名に定型的に付く接尾語の意味を覚えておくと、旅行が楽しくなりそうだ。
11時半になっていた。チャールズが昼食の話をむしかえした。
「昼飯食べるか食べないか、決めるには今が限界だ」
ハムレットみたいに言う。
「よし判った。食べよう。場所はチャールスに任せるよ」
突然、チャールスは今来た道をとって返した。結局、ケンブリッジの遥か手前で食べることになった。15分ほど走ってウイットルスフォードの駅の前で車を止めた。全く人気の無い駅の駐車場は半日で10ペンス。めちゃ安い。チャールズでさえその安さに驚く。チャールズは歩道橋を渡って鉄道の線路の反対側へ行く。駅の近くに木組の古い建物が見えた。屋根が歪んでうねっている。旅館兼食堂兼パブのレッド・ライオン・インである。
ミネソタの遠い日々
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