バックハースト・ヒル - 005 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 改めて散歩にでかけた。クィーンズ・ロードのかなり手前のグラッドストーン通りを左へ折れ、古い住宅が長屋のように並ぶ坂道を下だった。100年以上は経ったような古い2階建ての石造りの建物だが、いかにもイギリスらしく白い縞子の窓枠が個性的で、美しい素敵な町並みである。庶民的なテラスだが、バーミンガムあたりの工員長屋とは違って、一軒一軒個性がある。ただ、やたらと『For Sale』の看板が多いのが気になった。高齢者の多い町だが、やはり、彼等が去った後に、売りに出されるのだろうか。
ヴィオさんの旅行ブログ-バックハースト
 バックハースト・ヒルも1972年にはこのあたりの高台は歩いていないので、遂に迷子になってしまった。勘をたよりにウエストベリー・ロードの坂道を登って行くうちに広 い道路に出た。パーマーストーン・ロード。その角の白いアパートの庭先で小さな金髪の女の子と庭いじりをしている中年の男性に道を聞いた。土で汚れた手でメガネを押し上げ、指をさし、「細い小路を抜けたら、そこがそうだよ」と歳には似合わない若くて軽い声で言う。彼が指す方向へ2ブロック程真直ぐ行くと、小路の奥にクィーンズ・ロードが見えてきた。
 バックハースト・ヒル。ロンドン市の北東に広がるエセックスの南端にある小さな町である。エッピングの森を背にバックハースト・ヒルの駅まで7百メートル程の坂道が通っている。これがこの町のメーンストリートのクィーンズ・ロード。
 道の両側に小さな素敵な店が軒を連ねる。道はかなりの勾配があって、真直ぐに延びているが、渋谷の道玄坂くらいの感じはある。昔は坂の上から遠くに教会の塔や森や平野が道の奥に見通せた。今は車道の両側にビッシリと駐車している車が視界を遮ってあの素晴らしい眺めはもう望めなかった。

ミネソタの遠い日々 - 1970年に夫婦子供連れでのミネソタ大学留学記 にもどうぞ。