朝 食 - 004 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

 最初の長い一日が終り、一夜が明けた。今日はチャールズとケンブリッジへ行く計画であった。朝早く目を覚ましたが、思切ってベッドを抜け出して、2人で散歩に出かけることにした。
 ホテルから広場の先のハイ・ロードに出て、そこを左へ折れ、歩道を南へ進んだ。時折、車が勢いよく走り抜けて行く。昨日の昼間は結構暑かったが、明け方はかなり涼しい。9月のミネソタの早朝か、札幌の明け方の感じだ。肌がキリッと引締まる。気持ちがシャキッとして心地よい。
 クィーンズ・ロードのかなり手前で左に折れてみようか、と思ったところで余りの涼しさとカメラを忘れたことに気付き、ホテルへ戻ることにした。
ヴィオさんの旅行ブログ-レストラン

 ホテルのレストランは7時に開くので先に朝食をとることにした。黒い柱に白壁の古い食堂には朝日が差し込んで心地よい。まだ客は一人もいない。一番乗りだ。何か食欲が湧かない雰囲気だなーと思っている所へ、黒髪のほっそりとしたラテン系のウエイトレスが注文をとりに来た。メニューはあるがよく解らない。英語は解るのに、言葉と皿のイメージが結びつかない。考えてもしようがないので、イギリス風の朝食に決めた。ジュースとフルーツとヨーグルトは勝手にどうぞのセルフサービスである。
 ほどなく出てきた卵焼きはベーコンとフライドポテトが山盛りで食べ切れない。イギリス料理は不美味いとチャールズでさえ言う。イギリス料理というものは余り聞いたことがない。東京でもイギリス料理とうたったレストランがない訳ではないが、誰も気にも留めない。しかし、ただ一つ世界に冠たるものがある。イングリッシュ・ブレックファストだ。世界中のホテルやレストランで朝食といえばイングリッシュかコンチネンタルが主役である。アメリカの一般のホテルの朝食は英国式かその亜流である。朝食はイギリス人にとって最も大切な食事だ。だから夕食には下手な料理を取るより、もう一度朝食を食べた方がましである。とにかく、美味しいけれど、ボリュームがあって降参である。