イギリスの道 - 002 | 遠い夏に想いを

遠い夏に想いを

アメリカ留学、直後の72年の夏に3ヶ月間親子でパリに滞在。その後、思い出を求めて度々訪欧。

「田舎の道を走ろうか」
突然、チャールズ
が言った。
「時間があるならその方がいいよ」
 私も高速道路が余りにも単調になってきていた。ロンドン郊外の景色を味わうために途中で田舎の道へ入るのもいい。南のガトウィック空港からエセックスまでは相当の距離を走らなければならないし、なにせ、高速道路上はやたらと暑いのだ。一歩高速道から離れると、遥か遠くに起伏のある草原が広がる。東京の郊外では想像もつかない豊かでのんびりとした自然が続く。

遠い夏に想いを-イギリスの畑
 イギリスの道路には2種類あるといわれている。イギリス古来の道、ケルトの道とでもいおうか、曲がりくねった道だ。イギリス全土がこの曲がりくねった道で張り巡らされている。畑は小さく区切られて、色々な形をなして丘陵地帯にへばりつき、波のようにうねって地平線に消えてゆく。道も畑の形にあわせて地面をはうように曲がりくねっている。直線道路は100メートルと続かない。この様子は空から見るとよく分かる。北欧の国々やフランスの畑は縦横が整然と区切られているが、イギリスの畑はモザイクのように雑然としている。そして、この2車線がやっとという狭い道で猛スピードの車がすれ違う。慣れないと肝を冷やす。
 もう一つの道はローマの道。ローマ人は土木事業に関して天才的才能を示した。自然が障害になるなんて考えない。どこまでも真っ直ぐ道を作れば、戦略的にも素早く行動できて効率的と考える。自然の条件がどうあれ、真っ直ぐ通してしまう。現在のAルートは殆どがもとはローマ人が作った道路の後を利用している。