『世界を変える偉大なNPOの条件』 | 元広島ではたらく社長のblog

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六本木ヒルズや、ITベンチャーのカッコイイ社長とはいきませんが、人生半ばにして、広島で起業し、がんばっている社長の日記。日々の仕事、プライベート、本、映画、世の中の出来事についての思いをつづります。そろそろ自分の人生とは何かを考え始めた人間の等身大の毎日。

『世界を変える偉大なNPOの条件』レスレー・R・クラッチフィールド ヘザー・マクラウド・グラント ダイヤモンド社を読んだ。


 この本は、『社会セクター版ビジョナリーカンパニー』『NPO版ビジョナリーカンパニー』とも呼ばれている本。『ビジョナリーカンパニー』は、雑誌でビジネス書のベスト10を企画すれば、必ず3本の指に入る評価を得ている既に古典化している本。簡単に言えば、エクセレントカンパニーと呼ばれる好業績で知名度も高く世界中で指示される企業、しかも、2番でなく、1番の企業に共通な条件とは何かを、膨大な調査や資料から分析したもの。この本に影響を受けて、取り上げられている企業に負けないような企業文化、企業精神を作り上げようとしてきた会社は、多々あるはず。
 ただし、古典とは、言ったが、今なら、少し疑問を感じる企業も入っている。業績を重視したため、創業時のビジョン、創業者の思いが薄れ、社会に不誠実な企業も出てきているかもしれない。『ビジョナリーカンパニー』も4冊出て、そこは少しづつ変わってきている。会社も変わってきている。

『世界を変える偉大なNPOの条件』は、世界を舞台にする非営利組織NPOのなかの12組織に付いて、その成功の理由、共通する条件を探るもの。企業と違い売り上げや、利益と言う尺度は使えないが、活動する国や地域の数、扱う予算規模、これまでに関わった人々の数、政策や法案への影響力と言った観点から、成功している組織に特有な条件を探っている。

 貿易赤字、財政赤字と、20世紀後半から今に至るまで、アメリカと言えば赤字の国。所得格差はどんどん広がり、劣悪な生活を送っている人の数も膨大だ。しかし、アメリカが破産することは無い。強いドルと、世界最強の消費力、軍事力に裏付けされた経済力、世界中の科学者を惹き付ける大学の力、そして、おぞましいほどの金融支配力、アメリカは、アメリカのままだ。
 一日にハンバーガー数個しか食べられない人が居る一方で、経済的な大成功を遂げる者も多数居る。貧富の格差が広がり低所得者が広がる一方で、アメリカ人の社会活動への寄付金、文化教育への寄付金の総額は大きい。アメリカの過去の成功者が気づき上げた莫大な富、その遺産を受け継いだ者、そして一般の人が形成する、アメリカの寄付金、遺産、信託財産といった規模は驚くほど大きい。日本では、地方都市が抱える楽団が困窮しているが、アメリカでは、そういう市民楽団を支える寄付金も潤沢であるという。(最新の状況は分からないけど)また、この本で紹介するNPO等へ流れる寄付金も膨大だ。最近では、ビルゲイツも、私財を投じて財団を作ったように、ビジネスで成功をした者が、その次に選ぶのは、その富を社会を良い方向に進めるために自分の財団を作ったり、NPOを支援することが、当然のアメリカンドリームの続きのようになっている。

 邦題は『世界を変える偉大なNPOの条件』となっているが、原題は『Forces for good』あまりにもストレートすぎて、これでは何のことか分からない。正義や善といった言葉と同じように、そのまま使うには恥ずかしい気もする。考えてみれば、昔のアニメや特撮のヒーローと一緒に臆面も無く使えていた言葉が、いつの間にか、そんなおもはゆい言葉に変わってしまいって居る。

しかし、ここに取り上げたNPOは確実にこの『良き力』を発現している。

この本に取り上げられたNPOは、次の12組織。詳しく知りたい人は検索すればすぐ出てくる。

アメリカズ・セカンド・ハーベスト
予算・政策プライオリティセンター
シティイヤー
エンバイロンメンタル・ディフェンス
エクスプローラトリアム
ハビタットフォー・ヒューマニティ
ヘリテージ財団
ラ・ラザ全米協議会
セルフヘルプ
シェアアワーストレングス
ティーチフォーアメリカ
ユースビルドUSA

 このうち、日本でも活動している組織がある。また、同じような仕組みを日本風にアレンジしているNPOもある。食品会社、飲食店と提携し、賞味期限直前の食品や余ったパンを、それを必要としている施設に提供するNPOも、元のモデルはアメリカズ・セカンド・ハーベストだ。
 肥満大国であるアメリカで、ろくに食べることができない人が居る。国全体では必要摂取量を遥かに超えるカロリー、栄養を摂取していながら、そういう貧困層が居ることは、貧富の二極化が進んでいる日本も他人事ではない。その不均衡ををなくすのが行政ではなくNPOに頼らないと行けないというのが今の現実だ。

日本でもNPO活動が盛んだ。
①社会にある問題がある。
②問題解決の担い手が居ない。
③行政の手が回らない。あるいは、ノウハウがない。
こういう状況があれば、NPOの活動する余地はある。この問題を打開するすばらしいアイディアがあれば、予算が無い、人が居ない、スキームが無い状況であっても、『世界を変える偉大なNPOの条件』にあるように、スポンサー企業、ボランティア参加者を呼び込み、さらには行政を動かす影響力を持つことができるかもしれない。

 タイトルには『POWER』でなく『FORCES』を使っている。スターウオーズの賢者ヨーダが主人公に授ける超能力は『FORCE』。悪玉ダースベイダーもこの超能力を持っている。『POWER』という、権力や集団の勢力という意味合いでなく、個々人が持つ力や思いの『FORCE』がやがて、『POWER』を凌駕して行く。
そんなことがもう起きている時代になっている。TVに出てくる様々な出来事を見ているとを、人間が進化しているとは到底感じないけど、人間ていいなと思える本でした。
ただ、そこを、情緒でなく、分析してビジネス書にしたのはさすがアメリカ人だ。