『ひまわり』 | 元広島ではたらく社長のblog

元広島ではたらく社長のblog

六本木ヒルズや、ITベンチャーのカッコイイ社長とはいきませんが、人生半ばにして、広島で起業し、がんばっている社長の日記。日々の仕事、プライベート、本、映画、世の中の出来事についての思いをつづります。そろそろ自分の人生とは何かを考え始めた人間の等身大の毎日。

長引く不況と、若者の映画離れから、渋谷を中心にしたミニシアターが次々に閉館。というニュースが1年位前に流れた。近所にあるキネカ大森 は、スーパー西友の中にある小さな映画館。数百人入れる小部屋がいくつかあり、できた当初は、シネマコンプレックスの走りだったらしいが、場末感がにじみ出ている。ゴメン!


しかし、しばらく前から、名画座に切り替わり、結構面白い特集を組んでいる。


先日、息子さんの事件でギター奏者のクロードチアリさんの名前をネットで見た。クロードチアリさんといえば、昔のヤクザ映画『冬の華』の有名なBGM。YOU TUBEで検索すると、誰かがUPしていた。

高倉健演じる、ぜんぜん勇ましくない、さびしいヤクザ。映画のほうも見たくなった。


画面右側の関連映画の中に、ヘンリーマンシーニの名画『ひまわり』のBGM。名画といわれる『ひまわり』むかし、TVで1度見たきり、そういえば、キネカ大森でやっていたような、と思い出し検索すると、ちょうど今週、デジタルリマスターで上映していた。TSUTAYAに行けばいつでも見れると思ったけど、映画館に行くことに。


TVで見たのは、大分昔。見覚えの無いシーンが山ほど出てきた。TV版は相当編集されていたのかもしれない。メインのストーリーは、もう私が新しいことを付け足すことは無いので、ここでは省略。その他の雑感をいくつか。


当時、米ソ冷戦時代。鉄のカーテン内のロケは初めてらしく、舞台設定は1954年ごろだが、ロケは、映画公開の1970年の前年くらいだろうか。フルシチョフ、ブレジネフ時代のソ連の発展振りと、国力の充実振りがわかる。西側に見せる宣伝の作為があったとしても、巨大な建築物、超満員のサッカースタジアムには電光掲示板がある!(広島市民球場のスコアボードが電光掲示板になったのは1994年)、マルチェロマストロヤンニが住むロシアの片田舎の駅舎の背景には、巨大な原子力発電所と思しき不釣合いな冷却塔(実は火力発電所らしい)。圧巻は、街中も、工場の出入り口も、新しくできた団地にも、ヒトヒトヒト。共産党の元すべてエキストラかもしれないけど、同時代の高度経済成長時の日本にも劣らないほど人々の活況がわかる。画像に出てくる人たちは貧しいが、今の時代には無いエネルギーが人々の顔に満ち溢れている。


題名にもなった有名なひまわり畑。その下には、戦争で死んだ人間が埋まっていると、登場人物が言う。イタリア兵にかかわらずロシア兵も、年寄り、子供すべての人々が。ソフィアローレンとマルチェロマストロヤンニの人生のみならず、ロシアの大地に死んでいった人すべてが、主人公なのかもしれない。ひまわり畑の下に眠る人の数だけ、物語があるはずだ。

別の場面では、丘を覆いつくすイタリア兵の墓がある。少しずつ、画面が引いて、最初数基と思われていた十字架が、あたり一面、さらに、別の丘をも埋め尽くす、おびただしい数になる映像は、映画という表現方法が人の頭と、その記憶に切り込む最良の技法かも。


ソフィアローレンが、ひまわり畑を列車の窓から最初に見るシーンは、手持ちのカメラで撮ったのか、画面がぶれにぶれる。もしかしたら、ロケの移動中、列車の窓に広がる圧巻のひまわり畑を慌てて写したのかもしれない。となると、あらかじめ予定していた撮影でなく、ロケ中に遭遇した、このひまわり畑を、最後に、映画のモチーフとしてタイトルにまでしたのかもしれない。ビットリオデシーカ監督は、『自転車泥棒』『終着駅』が有名。イタリア映画といえば、最近でも『ニュー・シネマ・パラダイス』『マイ・ライフ・イズ・ビューティフル』と、戦争を含めて人生の悲喜こもごもを映像に結晶化するのがうまい。ここら辺は、日本人にも、ぐっと来るところ。


そして、ソフィアローレンがすばらしい女優であることがはじめてわかった。世界の美人女優というより、妖怪人間のベラを実写化したような強烈な印象を与える表情が怖かったが、この『ひまわり』の場面場面で見せるさまざまな表情には、現実にはいないであろう、まさしく映画の中で必要とされる表現力をあますことなく出している。しかも、思っていた以上にグラマラス。ソフィアローレンの主演映画探してみよっと。


CGや派手なアクションがある映画ではないので、レンタル屋で借りてきて十分かもしれないけど、大きな画面で見たい人は、とりあえず10日金曜までにどうぞ。