『東芝グランドコンサート in 川崎』 | 元広島ではたらく社長のblog

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六本木ヒルズや、ITベンチャーのカッコイイ社長とはいきませんが、人生半ばにして、広島で起業し、がんばっている社長の日記。日々の仕事、プライベート、本、映画、世の中の出来事についての思いをつづります。そろそろ自分の人生とは何かを考え始めた人間の等身大の毎日。

生まれて初めて、クラシックのコンサートを聴きに行った。


ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団と指揮者のサカリ・オラモ氏、そして、ピアニスト、アリス=紗良・オットという組み合わせ。


場所は、ミューザ川崎シンフォニーホール。直径30メートル深さ4mくらいのプールが、最下層のらせん状に客席が設定されるワインヤード型のシンフォニーホール。ベルリンフィルの本拠地も同じように客席が5角形に配置され、反響版などを使い、どの席からも眺め、音が楽しめるようになっている。自分は2階席だったが、数十メートル先に演奏者が見えて、特に独奏場面なんかは見てるこっちが緊張するくらい身近に感じた。できて5年。日本にもこんなホールができたのか。


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客のほとんどが高齢者。拍手に強度と持続力が無い。季節のせいもあるのか、わずかな楽章間では、皆我慢していた咳の合唱が始まる。でも皆さん年季の入ったクラシック好きなんだろうな。


最初の曲目はシベリウス:交響詩「エン・サガ(伝説)」作品9


シベリウスといえば、交響詩『フィンランディア』。昔あったアニメ『牧場の少女カトリ』は、フィンランド独立前夜の一少女の成長記。国民的叙事詩『カレワラ』をきっかけに、羊番の境遇から、その勤勉さ、勉学に対するひたむきさから、次第に周囲から認められ、人生を切り開いていくという話。その間中流れていたのが、フィンランディア。森と湖の国にふさわしい音だった。

そのシベリウスの、「エン・サガ(伝説)」。演奏が始まるとバイオリン奏者全員が、弧を描くように弓を弦の山に行ったりきたり沿わせる。引くというより触れるだけのわずかな音もが集まり、みんなで艪をこいで海に漕ぎ出すような風景。ひゅんひゅんというバイオリンが続く。

ここにほかの音が重なるが、不安や、焦燥感を感じさせる音。南欧や、宗教音楽とも違う、私たちが巨人や融通の聞かない神々の出る北欧神話に抱くイメージそのものを音にしたよう。

サカリ・オラモ氏のタクトが指す方向に静かに音の炎(ほむら)が立つ。フルートを指せばか細い炎が。バイオリンを指せば、会場すべては4つのバイオリンから立ち上がる4つの炎を見ることになる。

スピーカーから聞こえる音でなく、音源となる一演奏者一人ひとりから音が届いてくる。2000人で聴いているというより、1対1のさしで勝負しているような緊張感が続く。

ヨーロッパの南の方の闊達さや、エンターテイメントとしての盛り上がりには欠ける、少し硬めの音。それでも内に秘めた未開放のエネルギーは、祖国独立の夢をみなぎらせた当時の社会と、作者シベリウスの思いでもあるかのように静かな激しさを持つ。そして、太陽の光の恩恵は少ないが、なによりも太陽を望む大地が生んだ曲が終わった。


拍手が沸き起こり、サカリ・オラモ氏がにこやかに応える。いったん舞台裏に行き。ピアノが運び込まれる。そしてアリス=紗良・オットとともに再入場。エメラルドグリーンのドレスにひょろひょろっとした白く細いからだとはじける笑顔。指揮台に立ったサカリ・オラモ氏も得意げな笑み。しかしエスコートに気をとられたのか、譜面を持ってくるのを忘れ、あわてて取りに帰る。どこか、ユーモラスで、ちょっと動きがカマっぽいオラモ氏。ここから彼の指揮が遺憾なく発揮される。


2曲目はチャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23


あまりにも有名な冒頭部分以外は意外と聞いていないこの曲。ピアノの独奏が至るところにある。ピアノの独奏シーンでは、指揮棒は振らず、静かに、アリスのピアノを聴いている。アリスは、指で弾くというより体すべてで弾いている。オーケストラ全員に負けじと派手に体を動かす。時折髪をかきあげるしぐさすら演奏の一部のよう。

この曲、途中結構コミカルな演奏が入る。オラモ氏の解釈なのかどうかわからないけど、にこやかにタクトを振る。空いた左手で他のパートに合図を送るところは、今晩飲むか?なんて合図している感じ。キックも出て、ステップも軽やかに、ノッテイルオラモ氏。

ピアノ協奏曲 第1番って、今回のオーケストラの解釈なのか、結構コミカルなところもある。

アリスも弾きながら、顔は、バイオリンパートに向けて微笑みかけているのか?「お前たち、ついてこいよ!」と掛け合っているのか、さながらロックコンサートのよう。

・・・でも、やはり、アリスの独奏が、最高潮に達して、曲が終っていく。そしてあふれんばかりの拍手。(開演時の拍手とは打って変わって力強い)


アンコールはスラブ舞曲。短いながらも、メロディのしっかりした曲で、素直にいい曲だと思った。


さらにアンコール。ショパンのノクターン嬰ロ・・・・あと覚えきれず。マイクのない、人の肉声ってか細い。しかし2階までしっかり聞こえてきた。