『落日の宴』 | 元広島ではたらく社長のblog

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六本木ヒルズや、ITベンチャーのカッコイイ社長とはいきませんが、人生半ばにして、広島で起業し、がんばっている社長の日記。日々の仕事、プライベート、本、映画、世の中の出来事についての思いをつづります。そろそろ自分の人生とは何かを考え始めた人間の等身大の毎日。

吉村昭の『落日の宴』講談社を読んだ。


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『落日の宴』は、幕末の勘定奉行川路利聖謨の半生を描いた小説。文庫は表紙がプチャーチンであることでもわかるように、ペリー来航、日米和親、日米修好通商条約と同時進行していたロシアの使節プチャーチンとの交渉役で知られる。


といっても、学校の歴史ではほとんどとり挙げることのない人。しかし彼は、現代でいうところの、財務次官、財務大臣、防衛大臣、国土交通大臣、文部科学大臣、そして外務大臣を兼任した”スーパー官僚”。


民主党が政権を取って、”脱官僚政治”というのが現実味を帯びてきた。しかし成功しないであろうという声もある。天下り、官僚の言いなり大臣、自己保身、縦割り行政・・・・、【官僚】=【悪】という図式をTVは盛んに言うが、行政を実施するには、官僚制は、人類が考え出した最も適した仕組み。弊害はあれど、官僚制は続くし、官僚を凌駕する実務知識を持った大臣の誕生はOBでもない限り生まれないだろう。変わらなくてはいけないのは、官僚のほうでなく、政治家(大臣)の方。国民や国民とともに描いた国家ビジョン、理想の社会をどう官僚を動かして創造していくか、強力なリーダーシップと推進力を必要とする。とりあえず、民主党に期待するとして、話は川路に戻す。


川路は、大分、日田の代官所の官吏の子供。その後、小普請組の川路家の養子となり、勘定奉行の下級官吏としてのキャリアをスタートさせる。寺社奉行、佐渡奉行、奈良奉行、大坂町奉行、再び勘定奉行、そしてロシア使節の応接掛と異例の出世をする。身分の上下で出世の限界のあった封建時代でも、幕末のこの変革期にあっては、能力のある者が登用され、西洋に比べ、はるかに後れをとっていると思われていた日本が諸外国に対峙していくのに必要な人材をおおく輩出している。

しかし、そんな川路であっても、2度政争に巻き込まれている。田沼政治時代の鳥居耀蔵の禍と井伊直弼の安政の大獄期。