『大衝突-巨大国家群・対決の行方』 池上彰 集英社
「今のロシア」がわかる本 日本人が知っておきたいロシア経済とその世界戦略 畔蒜泰助 三笠書房
ニュースの断片的な情報だけでは、世界で今何が起こっているのか、全然把握できていない。いつの間にか、世界情勢に疎くなっているので、手ごろな2冊を読んだ。『大衝突・・・・・』は、NHKで子供向けニュース解説番組を担当していた池上彰さんの著書。
内容は
第1章 中国vs.アメリカ「太平洋をめぐる対決」
第2章 ロシアvs.アメリカ・EU「異質な国との対決」
第3章 EUvs.アメリカ「グローバルスタンダードをめぐる対決」
第4章 サウジアラビアvs.アメリカ「中東への影響力をめぐる対決」
第5章 中国vs.日本「アジアの覇者を掛けた対決」
5つの国家群のせめぎあいについて。平易な言葉で、少しくどいくらいに内容が重複しているが、わかりやすく説明している。
世界の基軸通貨がドルからユーロにシフトしていることがひしひしと伝わる。今の恐慌の状況も見て、アメリカの時代が終わる、そんな予感が頭をかすめる。
『「今のロシア」がわかる本』は、ロシアウォッチャー、畔蒜泰助さんによるプーチン政権以降のロシアについて。
オリガリヒ(新興財閥)vs.シロビキ(KGBの流れを汲む治安機関出身者、プーチン及びその側近)
シロビキとペテルブルクリベラル派(現メドベージェフ大統領)の関係
チェチェンとプーチンの対テロ戦争
アメリカのネオコン、反ネオコンとの駆け引き
天然ガスを武器にした対EU・周辺国とのせめぎあい
ウラン濃縮技術を元にしたエネルギー戦略
サウジ・イスラエル・イラン・・・・中東での影響力拡大
リトビネンコ暗殺事件とロンドンのマネーロンダリング
等、畔蒜氏の視点によるここ10年のロシアの歩み。
『大衝突・・・・・』も『「今のロシア」がわかる本』も、自国が生き残るために後世からは非難されるかもしれないが、内政のコントロールと外交の駆け引きで有利な状況を生み出そうとする泥泥とした意思を感じる。
石油高騰で天然ガス需要が伸び、たった10年で世界の最貧国から世界3位の外貨準備高を誇る国に変貌を遂げたロシア。天然ガスにより、あからさまにEUへの圧力をかけるロシア、『国益に反する奴は暗殺してもOK』という法律が平気で存在する不気味な国ではあるが、プーチンが有能な政治家であることには間違いない。
ブラジル、ノルウェーは自国の領海内で海底油田開発を行い100%自給できる(はず?)。ロシアと同じようにエネルギー政策では受身でなく攻めの体勢。エネルギー政策では戦略のない日本。東シナ海に中国が海底油井を作るのをノンビリ見ていたり、日本近海に大量に埋蔵しているメタンハイドレート、開発にお金がかかると言う理由から、日本政府は何もしない宣言をしていた(何というアホな決断)。が、一転、今年5月、アメリカと協働で開発することになったが・・・・・。
イラクが地図上のどこにあるかわからない、日本の政治家には到底太刀打ちできない世界がここにある。
今年の5月と10月に出た本ではあるが、既にロシアのグルジア侵攻、リーマン倒産に始まる世界経済恐慌と新しい様相を世界は見せている。日本の政治家も私たちも世界情勢のプレイヤーでなく観客でしか存在していないと言うのは寂しい限り。麻生、小沢レベルを超える政治家が出るのは所詮無理かな。

