佐藤可士和プロデュース『タオル』を使ってみたい | 元広島ではたらく社長のblog

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六本木ヒルズや、ITベンチャーのカッコイイ社長とはいきませんが、人生半ばにして、広島で起業し、がんばっている社長の日記。日々の仕事、プライベート、本、映画、世の中の出来事についての思いをつづります。そろそろ自分の人生とは何かを考え始めた人間の等身大の毎日。

クローズアップ現代は、地場産業の復活についての内容だった。


採り上げられていたのは、愛媛県、今治市のタオル産業。現在、中国からの輸入タオルに押されて、200社以上あった会社が150を切るようになった。

生き残りを賭けて、「モネ」の絵画を模したデザインや、ミカンの形をしたタオルを作ったりと「デザイン」に特化した戦略を打ち出したが、結果は芳しくなかった。

ここで起用したのが、アートディレクター佐藤可士和さん。この人が関わった商品企画は成功間違いなし!と言う泣く子も黙る業界のスーパースター!と、言うと、本人は不本意かもしれないし、TV、雑誌で見る限り、そんな気負いもない人のようだ。

そんな神様のような人を起用した今治の経営者、佐藤さんを現場に案内し、イザ、打ち出された施策は、「5秒ルール」と「白いタオル」というもの。


「5秒ルール」は、タオルの基本機能である、吸水性に関する技術基準。タオルを切った小片をビーカーの水に浮かべる。従来品と比べると、あっという間に水を吸い、水底に沈んでいく。製造業者は、従来よりも半分の糸の細さで織り込み、その吸水性と、きめ細かい肌触りを達成した。「白いタオル」は、奇抜なデザインや、色でなく、タオル本来の良さをアピールできる「白」を使っていこう、と言うもの。業界では「白いタオル」は、安かろう、悪かろうの代名詞。その印象がぬぐい得ない提案と、もっと奇抜なアイディアを期待していた製造業者は、半信半疑だったそうだ・・・・・・。


現在、東京のある百貨店では、一つ1万円以上のタオルが、売れているという。今年春には、他の百貨店も売り出し、家電メーカーからは、粗品用に5万本の注文が入っていると言う。

確かに、ホテルで使う、いいタオルに驚きを感じることがある。デザインより、身体を拭いてこそ感じるタオルの良さがある。


ユニークなデザインと、派手な広告宣伝、佐藤可士和さんの仕事を、そういうふうに理解していたら、大間違い。「全く新しい付加価値を、外からつけるのではなくて、今あるいいものを磨く」という考えの下、今回のタオル業界の今回の成功につながったよう。佐藤さんの仕事に驚くと共に、旧弊にとらわれず、佐藤さんの提案にチャレンジしたタオル工場の経営者もすごいと思う。


中国で作る工業製品は、圧倒的にコスト面で有利。日本での高コスト構造は、宿命みたいなもの。このため、生き残るためには、どうしても、利幅の取れる高級品志向にならざるを得ない。タオル業界の場合、絵画のようなタオルデザインでなく、吸水性、肌触りといった基本部分で高級品志向に応えることが出来たので成功につながった。高級品を作れば売れるのではなく、何に対して大きなお金を払うかを、探り出すことができるかが鍵。

しかし、すべての企業が高級品市場に入ることは出来ない。高級品を購入する高所得者にも限りがある。供給側、需要側共に限界があり、TVや雑誌の成功物語の陰で、やはり退場者も出ていることであろう。


番組では、栃木から広島までの酒造業者・醤油会社10社で協同販社(http://www.j-fla.com/index.html )を作った事例、長野の須坂市の、富士通(?)撤退後残された下請工場が、通産省新連携支援制度で派遣されたアドバイザーと共に、画期的な新技術を、事業化する事例が紹介されていました。


ニュースでは、世界同時株安と投資家の東京市場離れで、日本の経済はダメ!という悲観論ばかりだけど、こうやって頑張っている人は、日本中にごまんと居るし、実際成功した人もいる。こういう人たちからもらえる”勇気”こそ、TVは発信しないといけないと思うけどな。