『陸奥爆沈』『零式戦闘機』『井上成美』『米内光政』『山本五十六』『流氷の海』『阿片王-満州の夜と霧』と、戦争物の本をよく読んでいる。大正、昭和初期から戦争が舞台で、いずれもたくさんの登場人物が登場する。
そのうち、『流氷の海』の中で、池田末雄大佐という人が出てくる。千島列島、最北端、占守島で、戦車大11連隊長を務めた。(11は、漢字で十一、これをつなげて士とし、白虎隊のように、少年兵が多かったことから、士魂部隊と呼んでいた)
昭和45年8月18日、3日前に、日本はポツダム宣言を受諾し、天皇の玉音放送と共に戦争は終結したはずなのに、どさくさにまぎれて、少しでも領土を得たいソ連は、国際法を無視し、その夜、突然、占守島に上陸した。最前線で、圧倒的なソ連軍を食い止め、孤立した村上大隊を援護すべく、池田戦車隊が助けにいく。終戦で武装解除中の連隊は、準備が出来たものから出撃していく。池田大佐は乱戦で命を落とすも、ソ連は陣容を立て直すべく後退する。簡単に落とせると思っていた小さな島で、予想以上の大打撃を受け、ソ連軍は、日本侵攻を見直さざるを得なくなった。村上、池田の隊の奮戦が無ければ、北海道の北半分は、今でもロシアだろうといわれた戦いがあった。彼らの終戦記念日は8月15日ではない。
その池田大佐には、4人の子どもがあって、孝子、誠、忠、礼といった。いずれも、儒教でいう徳や、人として、忘れてはならない大事なことで、戦争終結にもかかわらず、前線で孤立した仲間を救うべく、わずかな兵力で向かっていった、その行動そのものが物語っていること。
いま、自分の子どもに、こういった人としての徳目を、名前につける人って居るのだろうか?
「たまごくらぶ」「ひよこくらぶ」等の雑誌のあるベネッセの『赤ちゃんの名前ランキング』
http://women.benesse.ne.jp/hakase/sitemap/namae.html
明治安田生命の『赤ちゃん名前ランキング』
http://www.meijiyasuda.co.jp/profile/etc/ranking/best100/
大きい、悠、といった形容詞。海、空、陸といった自然。あとは漫画の主人公の影響なのか、相変わらず翔、翼。和とか智とか仁といった概念をあらわす名前がわずか、ベストテンには皆無。
ちょっと読めない変わった名前、悪魔なんて名前をつけようとした親もいたけど、それ以上に、誠とか、義とか、信とかつける親があまり居ないよう。携帯電話、電車やバスの乗り方、公共のマナーがひどい現代、礼なんて、子どもの名前どころか、社会からどんどん消えていっている。
「名は体を表す」とは、よく言うけど、海や空、大きかったり、翔んだりする名前なら、さぞかし雄大な人間に育つことだろう。誠、義、信、礼、忠、孝、仁こういった言葉は、すべて、人間と人間の関係性を表す言葉、友人、同輩、君臣、親子・・・・における、こうあるべきという関係。自分にこういった言葉が入っていると、人と人の関係を思わずにはいられないだろう。
もちろん、現代の子どもの命名の流行で、社会性の無い子どもが増えるとは、思わないし、権兵衛、弥平なんて付けないのと同様、時代によって変わって当たり前なのだろう。
ただ、戦後日本の恩人の一人、池田末雄大佐の子どもの名前のエピソードを読んでふと思った。