作家の城山三郎さんが亡くなられた。
昨年の吉村昭さんに続き、歴史小説、伝記小説のすばらしい作家さんがこの世を去った。11年前に司馬遼太郎さんが亡くなり、大好きな歴史作家3人衆が、いなくなってしまった。もちろんその残された作品の全てを読んでいないから、まだまだ、3人から学ぶことが多い。また学ぶ義務もあるような気がする。
城山さんの小説、読んで思い出せるのは
「総会屋錦城」
「素直な戦士たち」
「官僚たちの夏」
「雄気堂々」・・・・渋沢栄一
「男子の本懐」・・・浜口雄幸
「落日燃ゆ」・・・広田弘毅
「黄金の日々」
「秀吉と武吉」
「望郷のとき」
「わしの目は10年先が見える」・・・大原孫三郎
「賢人たちの世」・・・前尾繁三郎、灘尾弘吉、椎名悦三郎
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あれ、こんなもんか、まだまだ、城山さんの作品のファンというにはおこがましいレベルだ。
城山さんは、戦後の中山素平さんとか石坂泰三さんのような現在に近い人の伝記が多い。司馬さんが日本の全時代を網羅、吉村さんが幕末から太平洋戦争までを中心に書かれているのに比べると、現代に近く、また経済人、財界人を題材にした作品が多い。
前回のブログ『華麗なる一族』の話にも、銀行の志、その前に書いた西武の裏金問題でも、儒教にある徳目の大事さを書いた。この2つの重要さを既に言っていたのが、日本の経済の礎を築いた渋沢栄一。「論語とそろばん」ということばで、倫理や、和心といった部分の重要さと、ただ利に走ることへの戒めも説いてきた。その渋沢栄一の生き様を教えてくれた「雄気堂々」
また、唯一文官として、A級戦犯となり、巣鴨の露と消えた広田弘毅首相。「太平洋戦争とは何か」という命題を高校生の私に教えてくれたのも「落日燃ゆ」
行き過ぎた顧客満足を求めるあまり、社員が疲弊しきっている現代の企業。しかし100年前に、労働者の福利厚生のために、社会問題研究所を作ったり、会社が病院(倉敷中央病院)を作ったり、西洋の本当の美術を一般庶民が見れる施設(大原美術館)を作った大原孫三郎。時代が未熟だったせいで幾多の困難を味わったが、10年どころか、100年先の現代まで通用する社会像を提示した「わしのは10年先が見える」
これから書店には、城山三郎追悼フェアとして、多くの本が並べられると思うので、ぜひ、手にとって見てください。
最後に、御冥福お祈りします。