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弘前大学 フィールドサイエンス研究会(F研)

弘前大学公認サークル「フィールドサイエンス研究会」(F研)のブログです。 弘前大学を拠点に,海・川・山林で生物の観察や採集をしています。
毎週月曜日18:00~農生棟203で定例会を行っています。

続けざまに投稿します、佐藤 (仁) です。

先日引っ越して、調理時の加熱器具がIHからガスに変わりました。
おかげで何の予備知識もなかった自分は今になってとても苦労しています。
都市ガスだかプロパンだか、13A・12Aだとか、強火が右か左か……。
そもそも「ガステーブルは自分で買う物」ということ自体を初めて知りました (前いたアパートには既に備え付けてあったので) 。
んなもん知らんがな(´・ω・`)……。
 
まぁ、ただガス火の強みは「ジャムの瓶を開ける時にすごく便利」ってところですね。
IHだと瓶の蓋を温められなかったので。
 

さて、前回の続き・森を駆けるちびステルスちゃんことスズメガ科です。
 
最初はウンモンスズメ (Callambulyx tatarinovii) です。
 

背中側は鮮やかな緑・複眼や腹側はオレンジがかっており、色遣いがおしゃれな種です。
しかし、死ぬと色が褪せてしまうようです。是非生きている時の緑を見てみてください。
 

次はクメ (Acherontia lachesis) の顔です。
 

この種自体が割と大型、というのもあるのですが、なんだか口吻が他に比べて太い気がします。
正面から見た感じだと、何の変哲もありませんが・・・・・・、
 

この種の最大の特徴は、
もう一つの「顔」
 

「羊たちの沈黙」という映画をご存知でしょうか ?
1991年公開のアメリカ映画で、「主人公の女性・クラリスが、アメリカ各地で起きた連続猟奇殺人事件の犯人を、元・精神科医の猟奇殺人犯・レクターの助言や交流を受けながら追っていく」というミステリー作品です。

この映画の有名なポスターには、人の顔の、口の部分にメンガタスズメの成虫が写っています。 (詳しくは画像検索してみてください。)
また映画本編で、この事件の被害者の遺体の口腔内には、共通して「メンガタスズメの蛹」が入っていました。
 
メンガタスズメは、1990年代に映画デビューしていたんですね。(※ただし、写 (映) っているのは日本に生息している種ではなく、その近縁種……だそうです。)
 
クロ「メンガタ」スズメの名の通り、胸部背側にまるでドクロのような模様があるのが特徴です。
日本にはクロメンガタスズメ (A. lachesis) とメンガタスズメ (A. styx) の2種が生息しています。
どちらも背側にドクロが出てきますが、クロメンガタは明るい灰色になり、メンガタの場合ドクロが黒ずみます。
おどろおどろしさが出るのはクロメンガタかな、と個人的に思っています。
 

次はハネナガブドウスズメ (Acosmeryx naga) です。
 

灰色の凛々しい顔が特徴的。
ブドウとか言っておきながら、幼虫の食草はマタタビ科 (サルナシ) です (ブドウスズメ (A. castanea) の幼虫はマトモにブドウを食べます。) 。
北の方のスズメガとしては大型の部類に入ります。
 
ところで。
森のちびステルスことスズメガちゃんは、ライトトラップをしているとたま~にヒトに突っ込んできます。
大型蛾類が時速30~40kmで飛んでくるので、物理的に痛いです。もちろん本人 (?) に悪気はないし、行き先に立っていたヒトも悪いのでしょうけど。
しかし、物理的に痛い原因は、速さと重さだけではない気がします (個人的に) 。

スズメガの頭部を横から見ると、額 (?) の先が尖っています。
 

一方、同じ大型蛾類のウスタビガの額 (?) は丸くなっています。
 
 
……あの重さ・速さで、尖ったものがぶつかってきたら、ちょっと痛いと思います…… (個人的に) 。
 

最後!
東北民には (ほぼ) 幻の!
オオスカシバ (Cephonodes hylas) !
正面から撮れなかった上にピントも合っていませんが!!!
 

顔の上は緑、口から下は白。緑と白の間に黒の一本線。
偽瞳孔のおかげで、より小動物らしい可愛さがあります (もちろん昆虫も小動物なのですが) 。
そして耳のような触角!
いつか、いつかコレを真正面からじっくり眺めたい!
かわいい!!!
 

……ということで、これでスズメガ科および蛾類編、終了です!
次は (命がけの) ハチさんだー!!
 
 
 
 
 
文責: (あんまり昔の映画は見ないけどグレムリンは見てみたい) 佐藤 (仁) (ギズモがかわいい)
 お久しぶりです、佐藤 (仁) です。
 先日卒業式に出席しました。自分は大好きなヤママユカラー・山吹色の振袖で参加して、そのことを友人に伝えたら「そ、そっかぁ……(^^;)(汗)」と……。
 どうやら一言余計だったようです。
 (実は成人式の振袖もオオミズアオのカラーリングで選んでました。すみませんでした。)
 

 さて、今回からはスズメガ科の虫顔です!森林を駆け抜けるちびステルス!
 これも数が多いので、2回に分けます。
 

 最初の子はクロテンケンモンスズメ (Kentrochrysalis consimilis) です。
 
 
 複眼の間の額 (?) が、黒と灰白色の2色で構成されていますね。前回までのヤママユガ科他と違い、顔が2色で構成される種がみられます。
 今後は額 (?) の色にも注目してみてください。
 
 ところでこの子の属名「Kentrochrysalis」、この語は「Kentro」と「chrysalis」に分けられます。
 この「Kentro」は「刺す」という意味のラテン語だそうです。(後ろの「chrysalis」は「蛹」を意味するラテン語のようです。英単語にもありますね。)
 んで、Kentro な chrysalis とはどういうことか、というと、この種の蛹 (の殻) の尾部が鋭く尖っており、恐らくそのことを指しているのだと思います。
 (詳しくはリンク先の画像を見てみてね。)
 

 次はクチバスズメ (Marumba sperchius) です。
 薄いココア色が渋カワイイ。
 
 
 この種はスズメガ科の中でも「ウチスズメ亜科」というグループに分けられ、この亜科では口吻をもたない種が多く見られます。
 しかし、飛翔筋がモノを言う (?) はずのスズメガでエネルギー源を得られないというのは、かなり致命傷というか、よろしくないというか……。
 せっかくよく飛べる体つきになったのに、エサをとらずに生殖に全力を注ごうとしたのは何故なのでしょう ?
 

 次は家スズメことウチスズメ (Smerinthus planus) です (何のひねりもありません)。
 こげ茶色一色のふわふわなお顔の持ち主。
 
 
 この種は三兄弟で、長男のウチスズメ (S. planus) ・次男のヒメウチスズメ (S. caecus) ・三男のコウチスズメ (S. tokyonis) で構成されています。
 ……まぁ、兄弟構成は冗談です。 (サイズで判断しました。地理的・遺伝子的な関係は考慮していません。)
 長男は北海道~対馬、三男は本州~対馬まで生息しているのに対し、次男だけは北海道の東側に生息しています。
 国外だと、次男はユーラシア大陸全域で見られ、長男が中国・朝鮮・モンゴル・バイカル湖あたりで見られ、三男は日本固有種 (日本でのみ見られる) とのことなので、恐らく遺伝子というか、分化した順番は
次男→長男→三男、かな……?
自分は進化・分類学は専門外です。誰か助けて……。
 

 さてこのページのトリはエゾスズメ (Phyllosphingia dissimilis) です。
 黒めのお顔で、おっとりした表情です。
 

 由緒ある図鑑でも体色が「チョコレート色」と形容されています。かわいい。スイーツ系スズメ……。
 翅の形が特殊で、翅をたたんで停まる時に、前翅前縁から後翅がはみ出ます。
 後翅が幅広なんですね。
 
 
 

 ……ということで今回はここまで。
 次回はさらに強烈なメンバーが出てきます!
 多分!!!
 
 
 
 
 
文責: (卒業式後の祝賀会でパーティードレスを着なかった) 佐藤 (仁) (持ってなかったんです……ごめんなさい)
 こんにちは、佐藤 (仁) です。
 最近は寒暖差がひどい様で、昨日までは20℃あったのに、今日になって雪が降った、なんてことが続いています。
 福島県南部でも、つい先日キタテハを複数頭確認したのに、その2日後に雪が降りました。しかも積もってます。
 このようなとき、キタテハのからだは「休眠明けモード」から「休眠モード」に戻ることは可能なのでしょうか?
 

 さて、今回はヤママユガ科第2弾!晩秋のヤママユガちゃんたちです。
 この時期の東北はかなり気温が下がりますが、彼らはモフモフの毛をまとい寒空を翔けていきます! (むしろ先にダウンするのは人間のような気もする……。)
 

 まずはクロウスタビガ (Rhodinia jankowskii) ちゃん! (※写真はオス個体)
 

 黄色の毛がふわふわしていて、黒い複眼がちょっと埋もれている……。
 
 クロウスタビガはウスタビガ (後述) と同じ属名をもち、遺伝子的に近いとされています。
 ただし幼虫の食草や営繭する場所が異なり、 ウスタビガが木の枝に営繭するのに対し、クロウスタビガは地面で営繭します。
 でもそのくせ成虫の見た目はよく似るから、この2種が進化 (分化) した過程に一体何があったのでしょう?
 

 次はヒメヤママユ (Saturnia jonasii) ちゃん! (※写真はオ(以下略))
 こちらは前回登場したクスサン (Saturnia japonica) の親戚筋です。
 

 
 翅の模様は掲載していませんが、結構似てます。
 クスサンの複眼の間にある額 (?) の幅が狭くなったような感じの顔。
 頭の上の白いバンドがチャームポイント……かも。
 
 んで!
 いや、どの子もこんなことしたら絶対かわいいけど!
 ヒメちゃんの首傾げが!
 とんでもなくかわいい!!!
 
 
\ねー/
 

 最後にウスタビガ (Rhodinia fugax) ちゃん! (※写(以下略))
 上のクロウスタビガの親戚です。
 

 こちらも黄色いもっふもふが特徴。ヒヨコみたい。
 そして頭の上の白いバンドも特徴。これはクロウスタビガの場合は見えにくくなっています。 (無いわけでもないのですが、黒っぽくて細い線であるため目立ちません。)
 
 
 
 
 ……と、いうことで、晩秋の寒さに負けない毛むくじゃら三兄弟でした。
 いや、かわいい。
 もこもこって正義。

 人に話を聞くと「夜中に窓にとまってるのがキモい」とか「柄がムリ」など評価はさんざんですが、翅ではなくて顔を見れば、案外哺乳類っぽくて好きになれるかも……? (しかし高校時代に聞いたところ、ヤママユガ科で一番好かれた部位は「腹部」でした。毛に覆われたところが哺乳類っぽかったようです。顔はちょっと……とのこと。)
 

次回はスズメガ科特集!
 

文責:(今年の春からヤママユガ科昆虫を研究できる予定の) 佐藤 (仁) (すごく楽しみ)
どうも、佐藤 (仁) です。
先日、弘前から県外に引っ越しましたが、
ごみの分別方法が自治体によって違うってのが何より面倒くさいです。
弘前じゃ「もえるゴミ」だったものが他所では「資源ゴミ」になっていたり、ゴミ袋に自分の名前を書かないといけなかったり……。
正直、弘前はゆるかったです。
 
 
んで!
今回からは!
魅惑のヤママユガ!!!
2回に分けて書きます!
 
 
最初はオオミズアオ (Actias aliena)
 

ヤママユガ科 (成虫) のなかでも珍しく、白い毛をもつ種です (大抵は茶色です) 。
黄色の触角・ピンク色の前脚・黒の複眼・白の毛、とカラフルでキュート。
地域によって1年のうちに出現する回数が異なり、青森では年に1度、福島・長野では年に2度現れます。

……なんか、噂によると「貞子3D」にこの種が登場しているようです。
私は怖くて見てません。誰か確認よろしく……。
 
 
次はヤママユ (Antheraea yamamai)
 
 
すごく触角が大きいですね!
基本的にヤママユガ科昆虫は
・オスの触角は羽毛状・幅広
・メスの触角は極細
です (※ただしシンジュサンのようにこの法則が適用されない種もいます)。
つまりこの写真の個体はオスです。
 
ちなみに、ヤママユベビーの顔がこちら。
 
 
(3ω3) ←みたいな顔してる……グリンピースみたいなフレッシュグリーンが映える子です。
なんだか某アニメのの〇太君が眼鏡をはずしたときの顔に似ていますが、鱗翅目の幼虫がもつ単眼は光の色が分かるくらいのもので、解像度(?)はよくありません。
ただし、紫外線を認識することができるそうです。

次はクスサン(Saturnia japonica)
 

先ほどのヤママユと似た体色をしていますが、どうもこれら2種は個体によって色の濃さに大きく差があり、クスサンの場合、濃い茶色の子もいれば黄土色の子もいるようです。
この種も幼虫ちゃんが撮れたのでご覧ください。
 

緑地に白い毛が生えたいわゆる「毛虫」で、「白髪太郎」とも呼ばれます。
毛虫と言っても毒は無いので、手乗りも余裕です。
案外がっしりと手を掴み、力強く歩きます。
 
 
\ほらね!/
 
 
とまぁ、第1回目はここまで。
次回はクロウスタビガヒメヤママユウスタビガです。

寒い時期に出てくるヤママユガ科は、他の種と比較して体サイズが小さいです。(今回紹介したオオミズアオ・ヤママユ・クスサンは初夏~晩夏あたりに出現する大型種ですが、クロウスタビガ・ヒメヤママユ・ウスタビガ・エゾヨツメは先の3種より小型です。沖縄のヨナグニサンは日本最大ですしね。)

最後に注意ですが、
毛虫には触っていい奴と触っちゃいけない奴がいます。
図鑑で調べてから触ってください。
触らぬドクガに祟りなし、です。
 

文責:(今度はクマケムシの手乗りに挑戦だ!) 佐藤(仁)
 お久しぶりです。佐藤 (仁) です。「虫顔これくしょん」の人です。
 ……え?もう卒業したでしょ、って?
 いやいや、我々学部4年生は正式には3月末日で卒業、すなわちまだ弘大の4年生なのです。
 それに「虫顔だけは書ききる」って言っちゃったしね。
 
 
 さて、今回からは3回連続「魅惑の蛾顔シリーズ」です!!!
 ふふふやっと書ける……!
 さて初回はカイコガ科!
 といっても、3種類しかいません。
 
 んで、まずはトップバッター・クワコちゃん (Bombyx mandarina)
 

 茶色い毛に黒くてつぶらな目がかわいい。ぬいぐるみみたい。
 触角が少々独特で、ヤママユのオスに見られる「羽毛状の触角」を、中央の線に沿って90°角に折り曲げたような形状をしています。 (「棍棒」とか「櫛歯」など、ちゃんと触角の形状を例える単語があるのですが、忘れてしまいました……ごめんなさい。)
 この種には口吻 (チョウが持ってるストローみたいなアレ) がありません。成虫は絶食します。 (後述のカイコも同様。)
 
 ちなみに、幼虫の顔はこんな感じ。 (写真がないのでイラストです。) 
 
 
 幼虫もメインカラーは茶色です。 オレンジと黒の眼状紋が目立ちます。(※この図で幼虫の頭部は、下に飛び出している半円状の部分です。オレンジや青のある部分は胸部にあたります。)
 
 
 次はカイコ (Bombyx mori)!純白天使☆オシラサマ!
 カラーリングが白くなった以外は、ほぼクワコと同じ顔つきをしています。
 

 クワコとは属名 (Bombyx) が同じで、遺伝子的に割と近い仲間です。
 ただし染色体の数が異なり、クワコが2n=54であるのに対しカイコは2n=56となっています。
 日本のクワコよりは大陸産 (中国など) クワコの遺伝子の方が近いそうです。(クワコの種小名「mandarina」は、どうも中国に関わる単語のようです。mandarin orangeでミカンだし。)
 こちらも幼虫の顔写真を見てみましょう。
 
 

 幼虫もクワコのそれと同じような模様をしています。眼状紋は健在。 (※この図で幼虫の頭部は左下の影にかかった部分、白・オレンジ・黒色のある部分は幼虫の胸部です。)
 実は気性 (性格?) や体質? も異なり、カイコの幼虫は移動性が低く、蓋のないケースに入れておいても逃げません。
 それに対しクワコは逃げてしまうようです。
 
 
……って言ってやりたいところだけど、
残念ながらカイコも逃げます。
学生実験のときに逃げたカイコが
未だに見つかりません。
 
 ところで、クワコ・カイコの食草には「クワ(桑)」がありますが、このクワ科に含まれる「ヤマグワ」の学名がMorus bombycisで、カイコの属名・種小名を逆にしたみたいになります。
 
 
 最後にオオクワゴモドキ (Oberthueria falcigera)
 この子だけ属名が違います。遺伝子的にちょっと離れているんです。
 

 よく見ると、ちょっと触角の形が違う気がします。
 クワコとカイコは、先端が紡錘形であるのに対し、オオクワゴモドキは途中から触角が細くなっている、ような。
 
 この種の食草は、クワではなくカエデのなかまです。
 ……さて、同じカイコガ科ですが、果たしてこの種の繭からは糸が採れるのでしょうか?
 

 と、ここでカイコガ科の虫顔はおわりです。
 みんな小顔だからね……特にモドキちゃんの手ぶれというか、ピントがひどいですね……。
 
 
 さぁ次回は
魅惑のヤママユガ科の虫顔!!!
 カイコを上回るモフモフが待っています!
 

 それとサクラダ君、虫捕りは多分まだできます。
 4年生になったら確実に出来なくなるので、3年生のうちに一杯楽しんでください。
 
 
 

文責:(学生実験でカイコ逃亡ほう助の疑いを真っ先に向けられた) 佐藤 (仁)