サフランボルの町はずれを歩いていると、黒いヴェ
ールを被った女性二人が、小さな子供を連れて通り
過ぎていくのを見た。
道は山岳地帯の荒野へと続いている。
たったそれだけの光景であるのに、懐かしく、ノス
タルジックな思いがこみあげてきた。
心の中で渦巻いていたものが、一本の線となり、それ
がどこまでも続く荒野へとつながっていた。
その先に何があるというわけではないのに、その世界
にあって、自分は小さな客体であると感じた
とき、長い間何処かへ彷徨っていた心が、何か大きな
エネルギーに包まれながら、自分の肉体に帰ってきた
ような安らぎと至福で心が満たされていました。
音もなく、風もなく、神々しい夕焼けが絵のように
空いっぱいに広がり、その茜色の空から降りてきた
かのような、澄んだ瞳の子供たちに出会ったとき、
帰ってきた自分の心が世界と結合している
ような、不思議な気持ちになっていました。



