作品展望 №11(解説~鹿内美奈子) | 短歌活動をめざす北海道歌人会

短歌活動をめざす北海道歌人会

北海道在住の歌人や愛好者、もしくは道外転出者も希望によって会員とする北海道歌人会です。短歌における親睦と創作を希望する方はどなたでも加入できます。ぜひ、一緒に短歌を楽しみましょう!

 

 

結社【原始林】その一

 

月光は祈りのようだ何事も終わらぬままに師走近づく  川村悦子

 

養蚕の成功祈る皇后の筆にガラスの小宝光れり  原田哲男

 

茹でたての黄身を裏ごしミモザとしサラダの皿に春咲かせをり  岡本優子

 

外来の患者を見下ろす吹抜けに浮遊してゐる娑婆の片鱗  佐藤美幸

 

ああ風は神の嗚咽だウクライナに何もできない神の嗚咽だ  井原茂明

 

戦争をするヒト、椅子より落ちるヒト、土に生きる蟻、いろいろゐるなあ  村田俊秋

 

雫のやうなピアノの音が響くのみ画面は坂本龍一の背  大朝暁子

 

さよなかの窓打つ風は亡夫ならん吹雪くガラス戸開けて風吸う  大熊桂子

 

人のやさしさ身にしむる夜水ほそく流してしばらく眼鏡を洗ふ  台野登代子

 

北庭にソメノヨシノの玉と咲く日には真青のそらにてあれよ  宮川桂子