結社【釧路歌人会誌】
双方の言い分きいて頷くもファスナー布に噛んだままなり 石森邑子
霧の花ふるえるように咲く朝は冬の終わりの風の音する 一戸陽子
秋蝶の薄翅ひろげて辿りゆく忘れていた事あるやもしれぬ 伊藤郁子
弓なりに大きく波紋を描くフェリー日本海へと舵をきる夏 橋本秀子
過去からの雪ふりくれば古りし家音もひかりもあはあはとどく 三上糸志
結社【坐】
プレゼントに平和が欲しいとウクライナの子らの言葉に心が痛む 太田喜代子
夜半目覚め暴風雨にたたかるる花穂伸びたるルピナス想う 新井陽子
ガードマン赤銅色の笑顔むけ注意うながす炎天の工事 竹下直子
ゆく夏の海辺に立てば北斎の版画のごとき波が砕けむ 松島佐知子
バイオリンの奏ずる詩魂糸を引き空に留まる目には見えねど 大家 勤