短歌活動をめざす北海道歌人会

短歌活動をめざす北海道歌人会

北海道在住の歌人や愛好者、もしくは道外転出者も希望によって会員とする北海道歌人会です。短歌における親睦と創作を希望する方はどなたでも加入できます。ぜひ、一緒に短歌を楽しみましょう!

 

 

 

 

【かぎろひ】

 

猛暑日といへど成さねばならぬこと二つ三つあり明日も生きる  安藤のどか

 

辛くても希望も少し涌いてくる夏は胡瓜の塩揉みがいい  福屋みゆき

 

その日には原爆ドームだけ映りそれだけの街ヒロシマになる  緑川恵子

 

ポケットを叩けばコインが増えていく手品を君と見ていたことも  桑原憂太郎

 

 

夏空にてんつくてんつく伸びゆける木立葵のくれないの花  柊 明日香

 

モモちゃんと点滴棒に名前つけ二人で今日も散歩病棟散歩  佐藤満雄

 

水張田に映る美瑛岳のてつぺんに登頂せしごと蛙顔出す  本間久美子

 

すき焼きを食べ「相棒」を見て終わるほぼ定型の元日の夜  故 西勝洋一

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【辛夷】

 

暁鳥あたたかに啼き呼びている心の中に呼ぶごとくして  本多正孝

 

海のあたり失くしたようなあたたかい霧むれて誰ともとおい真実  坪谷捷介

 

君の履く透明な靴につま先を差し入れ哀しみひたひたと染む  山本三奈

 

この青い大地を次に継ぐため一粒の麦われも蒔かねば  真柳富貴子

 

閉山で森に還りし学び舎は昇る朝日に真向かうところ  佐藤 泉

 

尊厳といふ姿見つ老い人は杖をかかげて車道を渡る  高 昭宏

 

欲しければ斯くなる奪ひかたもある廃屋すつぽり蔦の葉  吉田真弓

 

太陽に焦がれ一両編成の列車が夜の砂漠を走る  山内 昌人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【コスモスさっぽろ】

 

のけぞつて空の真中を見上げればひつくり返つた北斗七星  稲葉洋子

 

北大の銀杏並木を駈けてゆく自転車の風デジャブを誘ふ  大桃小やゑ

 

林ぬけゴンドラのゆっくり昇りゆく夕日の帯に巻かれゆくがに  金子幸子

 

炊ぐこと厭ふにあらずそれのみに暮れたる今日を思ひてはかな  後藤美子

 

寂聴は「愛した 書いた 祈った」と墓碑に記すを希みて逝けり  清水芳洞

 

久々に庭にカッコウ来て鳴けり戦のニュース消して聴き入る  新保弥代枝

 

大男影からぬつと出てきそう数多の風車立ちたる丘に  吉田真弓