冬景色  森 君江

 

哀しみや辛さをみんな包み込み雪は私の憂いを隠す

 

雪道に馬橇の鈴が遠ざかる音は今なお我が胸に鳴る

 

目覚めると白一色に包まれた村の家々朝餉の煙

 

雪景色イタンキ浜に息子らの小さな足跡スキップしてる

 

製鉄の構内に見るクレーン車は雪掴むごと腕を伸ばして

 

 

 

憧れ  森田直也

 

夭折に憧れし頃もう過ぎて汚れちまった中也の詩集

 

モカコーヒー大人の味に憧れて寺山修司を読みたる日々よ

 

風前のともしびとなる憧れも未明まで飲む友も減りゆき

 

列車にてワンカップ酒飲むことに憧れ今も果てなき旅路

 

酒と詩と日々に憧れ最果てを目指す人生まだまだ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鏡開き  村山幹治

 

凍て空の春待月に賑はふや寒さ吹き飛ぶココノススキノ

 

鏡開き北海道神宮に妻と吾の大吉みくじ密かに笑みぬ

 

涅槃雪やみて潤ふ庭見つつ萌えむ緑の一位いきほふ

 

沫雪はやはらに降りて消えやすし春の陽ざしに胸躍りれり

 

ほれぼれと北海道神宮の境内に能楽囃子の「玉鬘」の舞ひ

 

 

 

春の雪  元起雪子

 

春の雪放置したれば隣家より案ずる声の電話ありたり

 

降りながら消えてゆく雪彼岸あけ母より継ぎし手の甲かざす

 

父に似し複製ありて買い求むほの暗きパリの「郵便配達夫」

 

身を伏せる母にかわりて米をとぐ太き血管走りし父の手

 

電線は虹を切りさき西へゆく争いの根よメビウスの輪よ

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の晩飯  村田正則

 

塩分を控へよとテレビや新聞焼いた塩鮭骨までしやぶる

 

エレベーター下りてそのまま魂を置いてくるよなやみつき「ストン」

 

牛タンを焼き食みながら温暖化のげっぷ関与の話をすなり

 

枕をば安眠用に替へたれば夢が遠のき道草できぬ

 

百年の先の世なくとも楽しみは今日の晩飯笑顔で過ごす

 

 

震度七  村山朝子

 

子らの来て誕生ケーキに祝はるる元日の地震能登震度七

 

胃癌にて二、三ヶ月の余命といふ君の電話に我はたぢろぐ

 

何事も我の後押ししてくれし君の逝くてを阻むすべなし

 

開拓の当時を云ふ一位の木切り倒されて根を日に晒す

 

ガソリンを入れねば走らぬ車に似て朝数錠の薬に動く