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短歌活動をめざす北海道歌人会

北海道在住の歌人や愛好者、もしくは道外転出者も希望によって会員とする北海道歌人会です。短歌における親睦と創作を希望する方はどなたでも加入できます。ぜひ、一緒に短歌を楽しみましょう!

 

 

 

 

あすなろ 大熊桂子

 

あすなろに垂るる氷柱に陽のさしてこぼるるやうな言葉あれかし

 

父の背に瘤ひとつあり戦争の傷あとにして汗にひかるを

 

ガザ地区の瓦礫の穴に子供らは戦争見てゐる むかしのわたし

 

二階より丘のなだりに見ゆる墓地今朝降る雪につつまれゆけり

 

我が丘の団地はむかし熊たちの住処にあれば尋ね来たるよ

 

天神の森に夜神楽ひびきゐてむかしの人となりて聞きゐる

 

一葉なき紅葉の一樹歌ふ鳥来よと待ちゐるあしたにゆふべに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

半角の日々 山内昌人

 

パスワード探して寒き親指を震わせている半角の日々

 

こうとしか生きられなくて帰り路みんなの顔を思い返せば

 

頼るものなき片隅に独りいて人の気配を耳に集める

 

顔のない誰かに話しかけているいつもの想いいつかあなたに

 

ひとりきり日がな浜辺を見ておればこんなに優しかったか夕陽

 

聞き取れなかった言葉が耳に残り今も忘れぬ人のあること

 

一度も答えを出した人はまだいない世界に繰り返す朝

 

 

 

 

 

 

 

 

中沢久子 (新墾、トワ・フルール、潮音)

 

さかな屋も八百屋も対面はなくなりて空疎なビルはいよよ古びる

 

一台の重機が首を伸ばしゐる都会の空はどこまでも紺

 

ランダムに椅子を置きゐるビル空間ひろびろとして明るき孤独

 

お国のためとか非国民とかは死語なれど言ふだろう今も未来も

 

フィギュアを組み立てるやうに嬉々として殺人兵器を作りゐるのか

 

細長き道のやうなるガザ地区に230万人が逃げやうもなき

 

翅ひろげ動けぬ蝶をさらひゆく風よほんのわずかの愛が

 

あまたなる虫を養ひし草むらも枯れ枯れにして新たな抒情

 

そろりそろりと氷紋動きて緑暗の水は荒れたる冬を曳きつつ