北にて歌う~「私の目指す短歌」新作10首(1) | 短歌活動をめざす北海道歌人会

短歌活動をめざす北海道歌人会

北海道在住の歌人や愛好者、もしくは道外転出者も希望によって会員とする北海道歌人会です。短歌における親睦と創作を希望する方はどなたでも加入できます。ぜひ、一緒に短歌を楽しみましょう!

 

 

 風の声明  五百川紘子(潮)

 

秋ですね 穂芒われを呼び止むる山路に鎮もる風の声明

 

かの世にも秋の来てゐむ呼応する桜ももぢり光(かげ)の一瞬

 

飽和してゐる悲しみを放たむかシャボン玉吹いてわたしが飛んで

 

波が波追ふを見てをり捉われてわたしは海の藻 夜を眠らず

 

潮溜まりの鷗とわれを灼く落暉寂しさ分かつに今は声なく

 

おんおんと霧湧く峠二つ越ゆ 怨嗟のごとき町明かりあり

 

苦きビール飲み干し語らむあれからを序章にはつか風の動けり

 

逝きて星になるとふあなたの明るさは届かぬ夜の底ひ虫鳴く

 

山頭火 過り行きたる幻想の窓辺の秋はほとほと寂し

 

秋昏をまとふ画布(カンバス)の片隅に私がゐます膝を抱へて