草と花 上原詩穂子(歌群)
雪の下ぺちゃんこになったホウレン草春の陽を浴び背伸びしている
桃の枝雪の重みで全て折れ香り豊かな時は幻
夫植えたなでしこ一輪花開く冬の寒さをもろともせずに
ロンドンで逝ったあなたの化身かな雪玉みたいなコデマリの花
この姿老女が叫んでいるようだもう咲き終えたツツジを見ると
韮の花まだ文月なのに咲き出したわたしはここよと自己主張して
雨あがり出てきたスベリヒユ立ちはだかって私を襲う
ドクニンジン線香花火のような可憐な声で歌っているよ
紫陽花は青・紫と色々で酸性・中性土もいろいろ
草と花声出し話さないけれどいつでも我に語り続ける