令和5年度短歌年鑑より (※ 解釈文省き、各結社短歌を10首前後紹介)
【坐】平成9年の創刊、編集発行人は大家勤氏。
せせらぎの途切れ勝ちなる春の風や波打つ笹の傍らを行きぬ 山口正二
ミニトマト一つ洗って口に入れ今日一日の元気いただく 河合伊代子
雄大な太平洋の彼方には夕日に光る船小さく見ゆ 太田喜代子
森中に聞こゆる鳥の声聞けば目線は上へ導かれゆく 斎藤弘子
ピンポンの黄色の球を二十ほどちりばめ冬待つ庭のカラタチ 大家 勤
【あかびら】昭和31年創刊、編集発行人は川崎富美子氏。
空っぽな高速バスは人間の疲れだけのせ中空をゆく 堀口淳子
車椅子のパンク続出サッカーの画像に叫ぶ吾も車椅子 田岡紀子
まだ惜しき命なりしよコロナ禍のワクチン接種の予約のコール 神馬幸子
カラオケに唄ふ一途な父の声保存テープは吾より若い 川崎富美子
死んでなほわれら見つめる猫抱いて桃の木の下柿の木の下 杉本敦子
歩きつつ更地になるも思い出す月下美人の咲きしあの窓 平瀬明美
黙々とストック握り散歩する米寿の夫にスポットライト 中田トミ子
お揃いのオレンジ色のスニーカー眩しい朝を駆け抜ける父子 菅原恵一
切れ間より碧空みえる日曜日水たまりよけ検診車に並ぶ 丸山賀世