作品展望 №24(伊藤典子) | 短歌活動をめざす北海道歌人会

短歌活動をめざす北海道歌人会

北海道在住の歌人や愛好者、もしくは道外転出者も希望によって会員とする北海道歌人会です。短歌における親睦と創作を希望する方はどなたでも加入できます。ぜひ、一緒に短歌を楽しみましょう!

 

 

令和5年度短歌年鑑より (※ 解釈文省き、各結社短歌を10首前後紹介)

 

【坐】平成9年の創刊、編集発行人は大家勤氏。

 

せせらぎの途切れ勝ちなる春の風や波打つ笹の傍らを行きぬ   山口正二

 

ミニトマト一つ洗って口に入れ今日一日の元気いただく   河合伊代子

 

雄大な太平洋の彼方には夕日に光る船小さく見ゆ   太田喜代子

 

森中に聞こゆる鳥の声聞けば目線は上へ導かれゆく   斎藤弘子

 

ピンポンの黄色の球を二十ほどちりばめ冬待つ庭のカラタチ   大家 勤

 

 

【あかびら】昭和31年創刊、編集発行人は川崎富美子氏。

 

空っぽな高速バスは人間の疲れだけのせ中空をゆく   堀口淳子

 

車椅子のパンク続出サッカーの画像に叫ぶ吾も車椅子   田岡紀子

 

まだ惜しき命なりしよコロナ禍のワクチン接種の予約のコール   神馬幸子

 

カラオケに唄ふ一途な父の声保存テープは吾より若い   川崎富美子

 

死んでなほわれら見つめる猫抱いて桃の木の下柿の木の下   杉本敦子

 

歩きつつ更地になるも思い出す月下美人の咲きしあの窓   平瀬明美

 

黙々とストック握り散歩する米寿の夫にスポットライト   中田トミ子

 

お揃いのオレンジ色のスニーカー眩しい朝を駆け抜ける父子   菅原恵一

 

切れ間より碧空みえる日曜日水たまりよけ検診車に並ぶ   丸山賀世