発行歌誌より(6) ※ 文章を省き、短歌のみ紹介
20.はしどい
予兆のように凌霄花枯れて故郷の弟、義姉の逝きしこの年 渡辺静子
朝まだき粉雪降りて静かなり今日の仕事をかんがえてをり
21.一粒(林 多美子の個人誌)
右耳のさえずり今宵は流麗でしばらく吾は森をただよう 織本英子
みずからを鼓舞するように踏み出さん初雪の来る予感の朝は 佐川節子
塒(ねぐら)へと風かきわけてあらわるる冬の鴉も間をとりながら 中瀬サチ子
22.歌誌あかびら90集
カラオケに唄ふ一途な父の声保存テープに吾より若い 河崎富美子
朝ごとに頷く鏡に問いかける私は上手く老いているかと 中村洋子
23.旭川歌壇
暮れさうで暮れぬたそがれ塞ぎたる人の心に寄り道しつつ 斎藤純子
新月の暗闇深しその闇に双手のばせば外は土砂降り 大関法子
24.コスモスさっぽろ61
打ち寄せる鵡川の浜の波の音 カムイサウルスの聞きし波の音 稲葉洋子
雪ふらぬ初冬の森はしんしんと寒さに充ちてみづのにほいす 髙橋妙子