偽作 クリスマスキャロル 6 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい



「 何ということだ~! クラチットは どこだ~! 」

  スクルージは 叫びました。





  しかしスクルージの店に クラチットはいません。

  あわてて彼の家に行っても 

  クラチットはいませんでした。
 
  彼は 病気の息子のために 

  薄給のスクルージの仕事を辞め、より高給を求め

  大英帝国下の植民地に出稼ぎに行ったのです。


  しかし時すでに遅く

  貧しいクラチット家の息子のティムは、

  医師に頻繁にかかることも出来ず、

  薬も満足に買えず、

  母の看護も虚しく 亡くなってしまいました。

  教会の墓地に ティムの名の

  小さな墓標が建てられていました。





「 あぁぁ まだ

  あんなに小さな子どもなのに 、、、 」
 
  幼い日の 自分の姿を重ねあわせ

  スクルージは さめざめと ひとしきり泣きました。


「 ところで ワシの墓は

  どこに建てられるのだろう ? 」


「 自分の墓が 見たいのか ? うひょひょ ♪ 」

  未来の精霊が 言いました。

「 もちろんじゃ 」

「 ならば 自分の眼で確かめるがよい、

  お前の人生の結末に ふさわしい墓だ 

  うぉっほほほほ ♪ 」  

「 ワシの業績に相応しく 

  さぞやスタイリッシュで 立派な墓だろうからな 」


  ところが 身寄りの無かったスクルージは

  死後、財産を全て国に没収され、

  個人の墓を 建てられる事もなく、

  彼の遺体は、無縁者の共同墓地に、

  生ごみでも捨てるように、

  粗雑にポイと埋葬されていました。


「 何ということだ ~!

  財産が山ほどあるのに 

  一文無しの行き倒れの者と 同じ末路だとは ~! 

  例え、守銭奴と人に嫌われようと 

  死に物狂いで、人生の全てをかけて

  働いて来たのに ~ 」


  良く見ると 立て看板がありました。


「 なんじゃ ? どれどれ ? 

  近頃 老眼で乱視も入って 、、、 」

  そこには 

『 ざまぁみろ 守銭奴スクルージ いい気味だ

  二度と 地獄から戻ってくるんじゃねぇぞ ! 』

  と 殴り書きしてありました。


「 あぁぁああ ! なんという事じゃ ! 

  死んでからも罵倒され、辱められるとは !

  ワシの人生とは 

  ただの自己満足の徒労じゃったのか ?

  お金とは、金儲けとは 

  いったい何だったのじゃ ~!?  」


  哀れで、悲惨な未来を見せつけられて、

  スクルージは精霊の黒い衣服に とりすがりました。


「 この忌まわしい未来は

  絶対に変わらないものなのかぁああ ? 」


「 さぁ どうだろう ? 

  運命は たぶん 変わらないんじゃぁないかぁ、 

  泣き言っても お前の寿命は変わらないぞぉ

  強欲な人生が お前の持ち味だろぅ ?

  長年の生き方は いまさら

  変えられないのではないのかなぁ ? 

  生きている時も

  死んでからも 人々に侮蔑される人生

  悪い意味で 一本 筋が通ってる、
 
  だから このままでも いいんじゃね ? 

  うぉっほほほほほ ♪ 」

「 なんじゃと !

  何が クリスマスの精霊じゃ !

  コメディアンのコントみたいなカッコしやがって !

  あぁ かってにするさ !

  わしの思うがままにな !

  どうせ死ぬんじゃ !

  こんな世の中に 復讐してやるぅぅううう ! 」

  スクルージは 精霊の胸ぐらを掴みました。


         続 く