次の精霊が現れました。
「 あんたは だ~れ ? 」
「 われは 『 未来のクリスマスの精霊 』 なるぞ
お前の未来を見せてやろう
よく見てみそしるぶぷれ 」
見慣れた街並みが現れました。
「 あぁ ここは ワシの住む街だ 」
産業革命が もたらしたスモッグで薄汚れた町に
資本家に搾取され 劣悪な労働環境で働く
薄汚れ 疲労した人達が
スクルージが死んだ事を 声高く噂し
悲しみもせず それどころか
喜んでいるのを 目の当たりにします。
「 あの業突く張りの スクルージが死んだそうだぞ 」
「 それは良い知らせだ めでたい ! 」
「 あの守銭奴には苦しめられた人間も多かっただろうな 」
「 ほんと 良いクリスマスプレゼントだなぁ 」
「 おいら借金があったが これでチャラだぜ !
うひひひ ♪ 」
「 俺もだ 神様 ありがとうございます
これで 生活が楽になります 」
借金や利息を返さずに済む人は 小躍りしています。
何の関係もない人まで、この街から
『 強欲じじい 』 が消えたことを
神に感謝しているようです、
まるでパレードさえ行われそうな騒ぎです。
「 ワシの死を 喜んでいるとはのぅ、世も末じゃ。
金が絡むと なんと人間は あさましく
醜いのじゃろうか 哀れなものじゃ 、、、 」
自分の事を棚に上げ、そんな言葉が口に出ました。
「 お前さんが そんなことをよく言えるものだ、、 」
クリスマスの精霊は 呆れました。
うんざりした想いで 自分の家に行くと
スクルージの 老いさらばえた遺体が
ベッドに 横たわっていました。
「 あぁ ワシの亡骸をこの眼で見ることになるとは
トホホ 」
なにやら 家探している者たちがいました、
警察か 教会関係者か それとも葬儀屋でしょうか。
「 お前らは 誰じゃ ~ !? 」
しかし スクルージの声は 聞こえないようです。
暗闇で 誰だかは分かりませんでしたが、
スクルージに 金を借りていたり
恨みを持つ者たち なのでしょう。
「 でっかい金庫だ !!
たんまり金が 入っていることだろうなぁ 」
「 開けてみろよ 」
「 え~と ダイヤルを回してと 、、」
< ガチャガチャ ガチャガチャ >
「 ふふん お前らなんぞに 開けられるものか、
そんじょそこいらの 安物の金庫じゃないぞ 」
スクルージは つぶやきました。
「 だめだ !
さすがに この金庫は開けられないなぁ 残念だ 」
「 おい 誰か 金庫破りを知らないか ? 」
「 そういえば フランスに有名な天才的大泥棒がいるとか ? 」
「 アルコール・ルンペン、とか言ったかなぁ ? 」
「 アルセ~ヌル・パン じゃろう
金持ちを狙うというからな 」
微妙に名前が違いましたが 蛇の道は蛇
守銭奴のスクルージは 犯罪者にも詳しいのでした。
「 そいつに 頼みに行くか ? 」
「 ばか ! 何日かかると思ってるんだ、
ここは 19世紀のロンドンだぞ 」
「 そのうち 鉄道で行けるんじゃないか ? 」
「 ふん どうやってドーバー海峡を鉄道が渡るんだ 」
「 じゃぁ 空を飛んだりとか ? 」
「 お前 ジュール・ベルヌの与太話 読み過ぎだろう 」
「 じゃぁ ロンドン暗黒街の黒幕の
モリァ~テ、なんとか教授はどうだ ? 」
「 それ 話が ややっこしくなるから やめておけ、
きっと、シャ~ロック・ホ~ムレス とかなんとか言う
ロンドンの事件を混んがらせる、
あの変人奇人の 探偵もしゃしゃり出てくるぞ、
相当な ヤク中らしいじゃないか 」
「 ヤクをキメて ビクトリア女王のイニシャルを
自分の部屋の壁に 銃で撃ちぬくとか、
ノイズバイオリンで 空を飛ぶ鳥を落とすとか 」
「 奴は 何をするかわからん、
くわばら くわばら 」
「 今のロンドンには ろくな奴がいないなぁ 」
「 こらぁぁああ ~! お前らが言うな ~! 」
スクルージが 叫びましたが 聞こえてはいません。
「 それにしても さすがスクルージ
ケチ臭い家だなぁ
他に 金目の物は ないようだぞ ~ 」
遺体から衣 服を剥ぎ取ろうとしている者もいます。
「 売れば 幾らかには なるだろう
こいつには もう服など 必要ないのさ ひひひ 」
「 なんてことをするのじゃ ! 」
スクルージは叫びました、しかし声は聞こえないようです。
「 指輪とかしてないな、そうだ金歯はないか ?
口を こじ開けてみろよ 」
「 薄気味悪いなぁ 」
「 意気地が無いぞ、金鉱掘るより楽だろうよ
ハイホ~、ハイホ~♪ 」
「 う~ん ! う~ん ! あぁ~!
死後硬直で カチカチ ダメだぁ~ 」
「 お前ら 呪ってやるぅぅううう ギリギリギリ ! 」
スクルージは 歯噛みをしながら叫びました。
「 おっ こんなとこに 借金の証文があったぞ
債務の確認でもしてたのか ?
金庫に入れてないでやんの。
そうか 金庫に入れる前に くたばったんだろうな、
ざまぁみろ 燃やしてしまえ ! うひひひ ♪ 」
「 強欲ジジイも さすがに もう誰にも請求できないし
地獄にまでは 金は持っていけまいよ げへへへ 」
「 どうせ 身寄りもいないんだから
財産は 国に没収されるんだ ぐふふふ 」
「 いい気味 いい気味 ♪ 」
「 稼ぐだけ稼いで ご苦労なこった へっへへへ 」
「 生きてるうちに お金は使わないとなぁ 」
「 結局は 哀れな人生だったんだろうなぁ 」
それを見て スクルージは叫びました。
「 何ということだぁぁあ ~!
ワシの大切な 財産がぁぁぁああ ~!
そうだ ! クラチット
クラチットは どこじゃぁぁぁあああ ~! 」
続 く