偽作 クリスマスキャロル 5 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい

  次の精霊が現れました。


「 あんたは だ~れ ? 」

「 われは 『 未来のクリスマスの精霊 』 なるぞ 

  お前の未来を見せてやろう

  よく見てみそしるぶぷれ 」


  見慣れた街並みが現れました。





「 あぁ ここは ワシの住む街だ 」

  産業革命が もたらしたスモッグで薄汚れた町に 

  資本家に搾取され 劣悪な労働環境で働く 

  薄汚れ 疲労した人達が 

  スクルージが死んだ事を 声高く噂し 
  
  悲しみもせず それどころか 

  喜んでいるのを 目の当たりにします。


「 あの業突く張りの スクルージが死んだそうだぞ 」

「 それは良い知らせだ めでたい ! 」

「 あの守銭奴には苦しめられた人間も多かっただろうな 」

「 ほんと 良いクリスマスプレゼントだなぁ 」

「 おいら借金があったが これでチャラだぜ !

  うひひひ ♪ 」

「 俺もだ 神様 ありがとうございます

  これで 生活が楽になります 」


  借金や利息を返さずに済む人は 小躍りしています。

  何の関係もない人まで、この街から 

『 強欲じじい 』 が消えたことを

  神に感謝しているようです、
 
  まるでパレードさえ行われそうな騒ぎです。


「 ワシの死を 喜んでいるとはのぅ、世も末じゃ。  

  金が絡むと なんと人間は あさましく

  醜いのじゃろうか 哀れなものじゃ 、、、 」


  自分の事を棚に上げ、そんな言葉が口に出ました。

「 お前さんが そんなことをよく言えるものだ、、 」
 
  クリスマスの精霊は 呆れました。


  うんざりした想いで 自分の家に行くと 

  スクルージの 老いさらばえた遺体が 

  ベッドに 横たわっていました。


「 あぁ ワシの亡骸をこの眼で見ることになるとは

  トホホ 」

  なにやら 家探している者たちがいました、

  警察か 教会関係者か それとも葬儀屋でしょうか。


「 お前らは 誰じゃ ~ !? 」

  しかし スクルージの声は 聞こえないようです。

  暗闇で 誰だかは分かりませんでしたが、

  スクルージに 金を借りていたり

  恨みを持つ者たち なのでしょう。





「 でっかい金庫だ !!

  たんまり金が 入っていることだろうなぁ 」

「 開けてみろよ 」

「 え~と ダイヤルを回してと 、、」
 
< ガチャガチャ ガチャガチャ >

「 ふふん お前らなんぞに 開けられるものか、 

  そんじょそこいらの 安物の金庫じゃないぞ 」

  スクルージは つぶやきました。


「 だめだ !

  さすがに この金庫は開けられないなぁ 残念だ 」

「 おい 誰か 金庫破りを知らないか ? 」

「 そういえば フランスに有名な天才的大泥棒がいるとか ? 」

「 アルコール・ルンペン、とか言ったかなぁ ? 」





「 アルセ~ヌル・パン じゃろう

  金持ちを狙うというからな 」

  微妙に名前が違いましたが 蛇の道は蛇

  守銭奴のスクルージは 犯罪者にも詳しいのでした。


「 そいつに 頼みに行くか ? 」

「 ばか ! 何日かかると思ってるんだ、

  ここは 19世紀のロンドンだぞ 」

「 そのうち 鉄道で行けるんじゃないか ? 」

「 ふん どうやってドーバー海峡を鉄道が渡るんだ 」

「 じゃぁ 空を飛んだりとか ? 」

「 お前 ジュール・ベルヌの与太話 読み過ぎだろう 」

「 じゃぁ ロンドン暗黒街の黒幕の

  モリァ~テ、なんとか教授はどうだ ? 」

「 それ 話が ややっこしくなるから やめておけ、 

  きっと、シャ~ロック・ホ~ムレス とかなんとか言う

  ロンドンの事件を混んがらせる、

  あの変人奇人の 探偵もしゃしゃり出てくるぞ、 

  相当な ヤク中らしいじゃないか 」


「 ヤクをキメて ビクトリア女王のイニシャルを

  自分の部屋の壁に 銃で撃ちぬくとか、

  ノイズバイオリンで 空を飛ぶ鳥を落とすとか 」

「 奴は 何をするかわからん、

  くわばら くわばら 」

「 今のロンドンには ろくな奴がいないなぁ 」


「 こらぁぁああ ~! お前らが言うな ~! 」

  スクルージが 叫びましたが 聞こえてはいません。


「 それにしても さすがスクルージ 

  ケチ臭い家だなぁ

  他に 金目の物は ないようだぞ ~ 」

  遺体から衣 服を剥ぎ取ろうとしている者もいます。


「 売れば 幾らかには なるだろう 

  こいつには もう服など 必要ないのさ ひひひ 」

「 なんてことをするのじゃ ! 」

  スクルージは叫びました、しかし声は聞こえないようです。


「 指輪とかしてないな、そうだ金歯はないか ?

  口を こじ開けてみろよ 」

「 薄気味悪いなぁ 」

「 意気地が無いぞ、金鉱掘るより楽だろうよ

  ハイホ~、ハイホ~♪ 」 

「 う~ん ! う~ん ! あぁ~! 

  死後硬直で カチカチ ダメだぁ~  」


「 お前ら 呪ってやるぅぅううう ギリギリギリ ! 」

  スクルージは 歯噛みをしながら叫びました。


「 おっ こんなとこに 借金の証文があったぞ

  債務の確認でもしてたのか ? 

  金庫に入れてないでやんの。 

  そうか 金庫に入れる前に くたばったんだろうな、

  ざまぁみろ 燃やしてしまえ ! うひひひ ♪ 」

「 強欲ジジイも さすがに もう誰にも請求できないし

  地獄にまでは 金は持っていけまいよ げへへへ 」

「 どうせ 身寄りもいないんだから  

  財産は 国に没収されるんだ ぐふふふ 」

「 いい気味 いい気味 ♪ 」

「 稼ぐだけ稼いで ご苦労なこった へっへへへ 」

「 生きてるうちに お金は使わないとなぁ 」

「 結局は 哀れな人生だったんだろうなぁ 」

  それを見て スクルージは叫びました。


「 何ということだぁぁあ ~!

  ワシの大切な 財産がぁぁぁああ ~!

  そうだ ! クラチット 

  クラチットは どこじゃぁぁぁあああ ~! 」


      続 く