偽作 不思議の国のアリス 20 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい



  ドアを開けると 大きなキッチンがあり、

  部屋全体に 刺激の強い煙が充満していました。


「 うわっ ! ゲロゲ~ロ ! 」


  公爵夫人とおぼしきが 部屋の真ん中の椅子に座り、

  赤ちゃんを あやしています。

  コックは かまどの上のスープ鍋を かきまぜています。


「 へぇっくしょん ~! こん 、、ちく こしょう~ ! 」


  アリスは クシャミをしました、

  部屋中 コショウが舞っているのです。


「 スープに コショウ入れすぎじゃね ? 」


  公爵夫人らしき人も、クシャミをしています。

  赤ちゃんも クシャミをし 泣きわめいているのでした。

  台所でクシャミをしないのは、

  コックと かまどの側にいる大きな猫だけでした。

  猫は、耳から耳まで裂けた大きな口で ニタニタしています。

  アリスは猫好きなので、奇妙な猫が気になってしまいました。

 
「 あのぉ、教えていただけませんでしょうか ? 」

  と アリスは、公爵夫人らしき人に聞きました。


「 何 ? おまえは 誰 ? 」


「 あたす アリス で ありんす 」


「 あっそう 」


「 なぜ あのトトロに似た顔の猫は、

  大口でニタニタと笑うんでしょうか ? 」


「 あぁ * チェシャ猫 だから そのせいだよ、

  こっちが オリジナルなんだよ 」


「 チェシャ猫 ? 」


「 このブタめ ! 」 と 公爵夫人。


「 えぇ ! あたしは こんなにカャワュイィのにぃ 、、、 」


  アリスは ムッとしました、ブタと間違われたのかと思いました。


「 あぁ ブタは おまえじゃなくて この子だよ 」

 
  アリスはブタと罵られたのではないのがわかりました。

  アリスは また聞いてみました。


「 チェシャ猫が ニヤニヤ笑うとは知らなかったです。

  というか、そもそも猫が ニタニタ笑うって知りませんでした 」


「 みんな笑うよ、ほとんどの猫は 笑ってる 」

  と 公爵夫人。


「 あたしは、笑ってる猫は見たことないんです 」

  と アリス。

 
「 おまえは 物を知らない子だねぇ ~、

  あたしの言うことに間違いないよ 」

  と 公爵夫人。


  アリスは この侮蔑の言葉が カチンときました。


「 うちにも ダイナという猫がいるんですよ ! 」


「 あぁ そうかい きっと人が寝静まったら、

  おまえの間抜けな顔を思い出し

  ニタニタ笑っているよ、

  猫は なついても 媚びないからね 」


  コックはスープ鍋を火から下し、

  すぐに 周囲にある物を手あたりしだいに、

  公爵夫人と赤ちゃんに 投げつけだしました

  かまどの火かき道具、小皿、中皿、大皿を投げつけています。

  公爵夫人は、それが当たっても まったく無視していました。

  赤ちゃんは、もともと泣きわめいていたので、

  皿が当たって痛がっているのかどうかがわかりません。


「 ちょいと コックさん !

  自分のやってる事が わかってんの !?

  今時 物を壊すコントは苦情殺到よ、

  赤ちゃんにも気をつけてよ ! 」

  と アリスは怒って怒鳴りました。

  大きなソース皿が赤ちゃんの顔の近くをかすめていって、

  あやうく当たるところでした。

「 ちょいと ! 赤ちゃんの首が もげたらどうすんのよ ! 」

  コックは 知らんぷりです。


「 ふ ん ! 

  みんなが 自分だけに気をつけて、

  人のやる事に 口出ししなけりゃ、

  この世は今より ず~っと てきぱきと動くことだろうよ 」

  と公爵夫人が、他人事のように言いました。


「 そうですよね、

  他人に感心を持たずに 自分だけ良ければ

  良いんじゃね ? って考えもありますよね、

  良かれと思って他国に攻め込んで国の体制を壊したら

  逆に 余計手に負えなくなることもあるし、

  残党の跳ね返り者達が あちこちで暴れだしたら

  きっと大変なことになるはずですもの、

  激しい空爆をして 民間人の命も奪われ、

  軍事産業だけが ウハウハ ♪ 」


「 おまえ うざい ! 

  国際情勢も 他所の国の政治体制も 興味はないよ、

  おい コック ! 

  この娘の頭を 包丁で首チョンパして、

  スープに煮込んじまいな ! 」

  と 公爵夫人。


「 ひぃぃい ~!! 

  それは 時節柄 非人道的で許されない事よ !

  世界的にも非難の声が湧き上がるわ、

  どこぞの 痔ハーディ・痔ョンみたいな

  残虐な鬼畜テロリストたちと同じよ ~ 」

   アリスは コックを見ました。

  コックは混沌とした刺激臭のする世情のような

  カオスなスープをかき混ぜるのに夢中でした。


「 鬼畜 ? 家畜 ? 」

  と 公爵夫人。


「 鬼畜です、家畜は ふつう大人しいのよ、

  とにかく 簡単に人の命を奪うのは賛成できませんね 」

  と アリス。


「 倫理観は みんな一緒とは限らないんだよ、

  自分の考えだけで世の中を渡ろうとすると

  危ないことは 山盛り 大盛り てんこ盛り、
 
  その身に振りかかるんだよ、

  特に この界隈 危険なんだよ 」


「 ま ぁ 」


「 お前も せいぜい気をつけるこったね 」 


  また赤ちゃんを あやし、子もり歌を歌いだしました。

  赤ちゃんを 強く揺さぶっています。


「 ♪ ガキには 荒っぽい口をきけ

   くしゃみしたら ぶん殴れ

   どうせ くしゃみは いやがらせ

   こっちが 怒るの知っててやってる ♪ 」


  公爵夫人は、子守唄を歌いながら、

  赤ちゃんを 乱暴に放りあげています。

  赤ちゃんが 泣きわめくので、

  アリスには 歌詩が聞こえませんでした。


「 ♪ ガキには 辛辣な口をきけ

  くしゃみをしたら ぶっ飛ばせ

  食事の時には コショウ入りでも

  意地汚く しっかり美味しく味わうくせに ♪ 」


  変拍子で音程の変な子守唄でした。


「 ほれ、なんなら お前にも あやさせてやるよ 」

  公爵夫人は赤ちゃんを 投げつけて、

  アリスは キャッチしました。

「 そうそう あたしゃ これから女王様と

  ちょっくらちょいと クロケーをするんで支度があるからね、

  遅れて女王様を怒らせたりしたもんなら 

  命の危険がデンジャラスでクライシスなんだよ 」

「 メイドが知らせに 家の中に入ってこないのに

  何で知ってるんですか ? 」

「 あたしゃ 地獄耳なんだよ お~ほっほほ ♪ 」

  公爵夫人は 部屋を出てしまいました。


< ビュ~ン >  <  ガ チ ョ ~ ン ! >


  コックは、部屋を出て行く公爵夫人に 

  フライパンを投げつけましたが、あいにく外れました。


「 まるで古い映画のドタバタ・コメディよね、

  コックさんも 公爵夫人を心良く思っていないのね、

  きっと虐げられたり 貧困の日常の鬱積した気持ちが

  コショウを入れ過ぎたり 過激な破壊衝動に結びつくのね。

  当事者はともかく 他人には迷惑だわ、

  ブラックな職場は 辞めればいいのに、やれやれ 」

  
  放り投げられた赤ちゃんを抱きながら、
 
「 変 な の ! 」

  と アリスは思いました。

  赤ちゃんは 蒸気機関車みたい唸って泣いて、

  体を曲げ伸ばしたりするので、抱えるだけで一苦労でした。


「 コショウの空気が いけないんだわ 」
 
  アリスは赤ちゃんを外に連れ出しました。


「 この子といっしょに コショウだらけの部屋にいたら、

  一日で死んじゃうかもね、もし置き去りにしてったら、

  明らかに ネグレクトで 殺人に等しいでしょう ?

  子供は 人類の 未来を築くのよ、大事に育てなくっちゃ、

  捨てたり、命を奪ったりしちゃダメなのよ 」

 
  すると変な赤ちゃんは、返事のかわりに鼻を鳴らしました。


<  ぶ ~ >


「 良い事 言ってるのに 何が気に食わないの ? 」


<  ぶ ~ ! >


「 なによ、鼻をならしちゃダメよ、

  ブーイングは意見を言うのに

  上品な やり方じゃないわよ 」


<  ぶ ~ ! >


   変な赤ちゃんは また鼻を鳴らしました、

  アリスは心配になって、

  ベビー服のフードを被った顔を覗きこんで見ました。

  この赤ちゃんは上向きの鼻をしていてブタ鼻でした。


「 可愛くないわ やっぱ 見た目って大事よねぇ、

  乱暴に扱われるのも仕方ないのかも ~ 」


  アリスの心の奥底に 差別的な気持ちが

  どす黒く 湧き上がりました。

  女の子は 美醜に関しては けっこう、

  冷徹、非情とも言えるほどの感性を持つのです。

  イケメンからは 何をされても許しがちなのですが、

  どんなに心優しいブサメンでも

  目が合うだけで自分が汚された気がして、

  同じ空間で呼吸しているだけでも気に入らないのです。

  ハゲ、デブ、チビ、脂症、オタク、

  公権力で社会から隔離して欲しいくらいです、

  もしかするとブサメンは 人間の範疇にはいらず、

  ゴキブリに等しいと思っているのかも知れません。

  でも 逆に男の子たちも また然りなのです、

  でも ぽちゃり大好きのデブ専もいたりします。


  とかく 人は見た目だけに振り回されることが多いのです。

  本当に 人に大切なものは 眼に見えないのです、

  そして 大半の人は それに気づかないのです。



「 いい子にしなさい、

  ブタみたいにブーイングするなら、

  もう 子守しないわよ ! 」

  と アリス。

「 ぶ ~! 」

「 煮豚に するわよ ! 」

「 ぶ ~~ ! 」

「 トンカツに するわよ ! 」

「 ぶ ~ ! ぶ ~ ! 」

「 ポークジンジャー・ソテーに するわよ ! 」

「 ぶ ~ ! ぶ ~ ! ぶ ~ ! 」

「 酢豚にして 皆が嫌がるパイナップルを入れるわよ ! 」

「 ぶ ~ ! ぶ ~ ! ぶ ~ ! ぶ ~ ! 」



     続 く





  
* 「 チェシャ猫 」

  「 チェシャ猫のように笑う 」

  ( grin like a Cheshire cat )

    という英語表現は、キャロルが

  『 不思議の国のアリス 』 を書いた当時

    ありふれた慣用表現であった。

    チェシャ州はキャロルが生まれた地方である。

    チェシャ州の住民がもっとも好んでする説明は、

  「 チェシャ州には酪農家がたくさんあり、

    ミルクとクリームが豊富にあるので

    常に猫が笑っている 」 というものである。

  ( ウィキペディア )