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「 この赤ちゃんたら、どうしてやったら 機嫌よくなるんだろう ? 」
と アリスが思ったとき、赤ちゃんは また鼻を鳴らしました。
<<< ぶぅ~ぶぶぶび !! ぶびぶびびぶび ~!! >>>
アリスは イラッとしながら
赤ちゃんの 頭にかかっているベビー服のフードを上げて
その顔を しっかりと覗きこみました。
「 あんた うるさいわよ ! ブタじゃあるまいし ~!
って こいつ 本物のブタ じゃ~~ん !!
なんなのよ ブタの赤ちゃん じゃないの ~ ! 」
アリスは これ以上 ブタをあやすのは無意味だと思い、
ブタを地面に下しました。
「 ぶ~ ぶ~ 言うのも無理ないわねぇ 」
ブタは 「 ブヒブヒ ! 」 と森に向かい歩いて行きました。
「 あのまま 人として大きくなったら、
目も当てられないほど みっともない子どもになったでしょうね。
でもブタなら まぁまぁかな、美味しく育ってほしいな ♪ 」
アリスは友達の中でブタになったほうが容姿を気にせず
お気楽に生きていけそうな子たちを頭に思いうかべました。
「 あの子たちを ブタに変えるアイテムがあればいいのにね、
ぶふぶふ ぶひひひ ぶひひひひ ♪ 」
アリスは 自分のことは棚に上げ
友達の容姿を嘲笑う いけない女の子なのでした。
ふと気配を感じ 見上げると、
木の枝に チェシャ猫が座っていました。
「 き ゃ っ ! 」 と、
アリスは びっくりしました。
極東の島国に棲むという
トト□という 化け猫に似たチェシャ猫は、
ニタニタしています。
「 大口開けて笑って 気色悪いけど
べつだん 襲ってくるわけでもなさそうだし、
悪い猫じゃ無いのかな ? 」
とアリスは思いました。しかし、
「 長いツメと、大きな口に
あんなに たくさんの歯を むき出しにしてるわ、
油断して 狩られないように気をつけなくっちゃ 」
そうも思いました。
「 チェシャ猫さん 、、、 」
アリスは、声をかけました。
チェシャ猫は ニタニタ笑って振り向きました。
「 まぁまぁ そこそこ機嫌が いいのかもね 」
アリスは思いました。
「 ねぇ 教えてちょうだい ! 」
「 何だい ? 」
「 あなたは 高い木の上に座っているでしょう 」
「 ふん ふん 」
「 あたしは 綺麗な花壇と噴水のある お庭に行きたいの、
もし あなた そこから辺りを見回して手がかりがあったら、
ここから どっちへ行ったらいいのか教えて 」
「 それは、あんたが どこの方向へ行きたいかによるよなぁ 」
と チェシャ猫。
「 どこの方向でも 庭に行ければいいんですけどね 」
とアリス。
「 なら どっちへ行っても関係ないね ふふん 」
とチェシャ猫。
「 でも綺麗な花咲く お庭には ど~うしても行きたいんです、
今まで さんざん苦労したんですもの 」
と アリス。
「 まぁ、いつかは辿りつくよ、
う~んと あちこち隈なく歩けばね 」
「 だめだ こりゃ 」
と アリスは思ったので、
別の質問をしてみました。
「 ここら辺りには、どんな人が住んでるんですか ? 」
「 あっちの方向には 帽子屋が住んでる。
それと あっちの方向には *三月うさぎ が住んでる。
好きな方を 尋ねるといいよ、
どっちも まともじゃないけどね 」
「 まともじゃないなら 行きたくないわ、
例えば、作曲偽装して釈明会見して逆ギレしたり、
『 ステテコ細胞は ありますぅ ~ 』 と言って
国費の無駄遣いをしていた研究者だったり、
若くして成功して有頂天になり
長年 シ▼ブ 決め放題だった某有名歌手とか、
またもや シ▼ブで捕まった エッチな元グラドルとか、
記者会見で大泣きしてバカを晒した
政務調査費詐欺の市議とか、
遺産目的で再婚 次々に亭主をXXした後妻業の女や、
偽装万引きをネットにアップする反社会性向のある人とか、
偽作といって原作を貶める
おバカな駄文を書いたりするブロガーとか、
そんな人たちじゃないでしょうね ? 」
と アリス。
「 世間には いろんな変な奴がいる、それは仕方ないよね。
標準的な型に嵌った工業製品じゃ無い、
それぞれが それぞれの異差を持つんだよ。
だから、ここいらの連中 まともじゃないんだ。
ぼくも まともじゃない、あんたも まともじゃない ~ 」
「 どうして あたしが まともじゃないのよ !? 」
とアリス。
「 残念だが あんたは まともじゃないのさ、
そうでなきゃ まともじゃない ここには来れないのさ、
ここに存在すること事態が まともじゃない。
不思議だなぁ どうしてそれに気づかないんだい ? 」
と チェシャ猫。
「 じゃぁ、あなたは どうして まともじゃないの ? 」
「 ここにいる以上 僕はまともじゃないのさ そういうこと 」
アリスには理解できませんでした。
「 そうそう 公爵夫人は 女王様と今日、クロケーをするの ? 」
と アリス。
「 そのようだねぇ、でも ぼくは招待されてないのさ、
でも 後で そこで会おうね 待ってるよ 」
と 言って、チェシャ猫の姿は消えました。
「 なによ それ ?
招待されてないのに勝手に行けってこと ? 」
アリスは チェシャ猫の消えた場所を見ていると、
また、いきなり現れました。
「 聞き忘れたが ところで、
公爵夫人の抱いていた赤ちゃんは どうなった ? 」
と チェシャ猫。
「 あれは ブタの赤ちゃん だったわ 」
と アリス。
「 そうだろうと思ったよ、ブヒブヒ 騒いでいたからね、
なぜ 伯爵夫人がブタの子守をしていたのか不思議だよね 」
「 そう言えば そうよね 」
「 でも答えは無いんだよ 疑問は投げっぱなしで
回収されないんだ、それが ここのルールなのさ 」
「 変なの ?
世間じゃ それは許されないわよ、
疑問は解決しないと 気持ち悪いじゃない ? 」
「 それは ジグソーパズルの
足りないピースを探すことに似ているよね。
でも見つからないほうが多いかもしれないよ、
人生に何らかの意義を見出そうとしている人も
本当はそんなことは無意味だと気づかない人が多いよね 」
「 人生に意義を求めてはいけないの ? 」
「 意義は結果として 後からついてくるものさ、
意義のために生きる事は 意義に縛られて
ろくな結果にならないものさ、
君に異議はないよね、そんじゃぁねぇ ~ 」
チェシャ猫は、また消えました。
「 はぁぁぁ ~ やれ やれ ~
何を言っているのか ちっとも分からないわ、
猫と人は きっと思考回路が違うのかもね 」
アリスは ため息をついてから、
三月うさぎの住んでいる方角に歩きだしました。
「 帽子屋さんなら町にもあるし 見たことあるし、
紳士淑女の行くお店だから 普通でしょうね、
三月うさぎ とやらのほうがいいかもね 」
こう言いながら、ふと目をあげると、
またチェシャ猫が 木の枝に座っていました。
「 あの赤ちゃんを ブタって言った ?
それとも 煮豚 酢豚 焼き豚 まぶた なべぶた うらぶた ? 」
とチェシャ猫。
「 ただの 仔ブタよ !
調理したら きっと柔らかくて
味も染み込みやすくて美味しいわよ !
それと、そんなに頻繁に出たり消えたりしないでくれる ?
点滅してるみたいで
子供が ショック症状を起こしたらどうしてくれるのよ 」
「 あぁ はぃ はぃ むかしアニメで問題になったよね ~ 」
と チェシャ猫。
「 ちょいと あんた !
化け猫アニメ映画のキャラクターのパクリじゃないのぉお ? 」
「 ちがうよ 向こうが ぼくをパクってるのさ
こっちが 正真正銘 由緒正しい 本家本元 」
そして こんどは、ゆっくり消えていきました。
シッポの先から消え始めて、最後はニタニタ笑っている顔。
最後まで笑っている口周りが残っていました。
アリスは 思いました。
「 笑わない猫なら よく見かけるけれど、
でも 猫なしの 笑う口とはねぇ、
今までの人生の中で 最高に変なものだわ 」
アリスは 三日月うさぎのいる方角に向かいました。
しばらく歩くと、三月うさぎの家が見えてきました。
家の煙突が うさぎの耳の形で、
毛皮を貼った屋根だったからです。
「 想像通りの家だわ。
想定内だけど やっぱ変な家、
一見かわいいけど 近くで見て よく考えると
毛皮を張った屋根なんて ちょっとグロイかも ~! 」
そして こう思いました。
「 やっぱり まともじゃないのかも ~
バッグス・バニーみたいなら良いけど、
皮を剥ぐような猟奇的な やっすいホラーみたいだと嫌かも ~
帽子屋さんの方に行ったほうが 良かったかも ~ 」
続 く
* 三月うさぎ
「 精神に異常をきたしている 」 と評される三月ウサギは、
「 三月のウサギのように 気が変になっている 」
という英語の言い回しから生み出されたキャラクターである。
( ウィキペディア )