偽作 シンデレラ 16 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい


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「 では この お嬢様を わたくしめが 

  王子様のもとに お連れいたします 」

  お城の人が言いました

「 ではよろしく 粗相のないように頼むぜ 」

  男性捜査官が言いました

「 頑張ってね これからは 幸せは自分で獲得するのよ 」

  女性捜査官が言いました

「 はい肝に命じておきます 御恩は忘れません 」

  娘は深々と 頭を下げました

  娘は 使いの者と共に お城に向かいました

  お城につくと娘は お城の侍女たちに 

  ゲストルームの風呂場で頭の先から足の先まで

  泡まみれにされ 徹底的に洗われました
  

「 薄汚れた作業着姿のままでは 

  王子様に 拝謁するわけにはまいりませんので、

  御召し物を お着替えください 」


  娘は 前夜の舞踏会の時のように

  新しい衣服に 着替えさせられました

  その姿は 思わず侍女たちも見とれ

  ため息をつくほどでした


「 父上 母上 このお嬢さんが

  仮面舞踏会の あの人です 」

「 おおおぅ そうか そうか うんうん   

  なんと綺麗で清楚で 男心をそそる娘じゃ

  うひょひょ 王子にはもったいないのう 

  わしの愛人じゃ だめかのう ? 」

「 あなた ! お下劣ですよ 

  後で ボコボコのサンドバックにするわよ 」

「 ひぇ~ ! やめて~ 暴力反対~ 」

「 ところで お嬢さんの お名前は

  なんと言うのですか ? 」

  と 王妃様

  娘は 満面の笑みで答えました


「 ” シ ン シ ア  ” と 申します

「 ほ う !

『 シ ン シ ア 』 か ?

  ふ む なかなか 良い名前じゃのう 」

  と 王様

「 たしか その名は 月の女神 アルテミス の別名

” キュンティア ” から来ているのでしょうね 」

  と 王妃様

「 もともとは 月の女神様の名前とは

  月の夜の 舞踏会で巡りあったのだから

  ほんとうに ぴったりの名前ですね 」

  と 王子 

  シンシアは 王様と王妃様にも気に入られ 

  王子様と 華燭の典を挙げしました

  城下を馬車による 豪華な婚姻の儀のパレードが行われました

  シンシアの たっての希望で かぼちゃ型の馬車が使われました



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  沿道には 国旗の旗を振る人々が溢れかえりました

  紙吹雪や ライスシャワーが舞いました


「 なんて お綺麗なのでしょうねぇ 

  王子様がコロリと やられちゃうのもわかるわぁ 」

「 でも何で カボチャの馬車なのかしら ? 」

「 庶民性を 出そうとしているんじゃないのぉ ? 」

「 プリンセス・シンシアは 民間出身なのよねぇ 」

「 綺麗なだけで 王室で やっていけるかしら 」

「 お城の中で イジメにあわなきゃいいけど 」

「 華やかな王宮だからこそ 

  その裏では 口うるさい侍従のものとか多そうね 」

「 ネチネチと 慇懃無礼に精神的に

  いじめられるんじゃないのぉ うふふふ ♪ 」

「 新入りは イビられるものよねぇ おほほ ♪ 」

「 まぁ 庶民は そんなゴシップこそ

  と~っても 楽しみなんだけどね うひひひ ♪ 」


  高い身分は 必ずしも 

  完璧な幸せとは 限らないのでした


  民間出身の シンシアは やがて宮廷内の関係者の 

  陰湿で ネチネチしたイジメにあったり

  イエロージャーナリズムの餌食になり

  継母たちの悪行や 父親の死をゴシップ雑誌に

  面白おかしく 色々書かれたりして

  精神的に追い詰められ 気が滅入る状態になったり

  帯状疱疹にもなったりもしたのです


  しかし あの継母たちとの生活に比べたら

  よほど ましと考え直し 開き直り

  精神的 肉体的に タフに成長したシンシアは

  少しトロくさい 王子様を支えながら 

  幾つものトラブルをかいくぐり 

  財政問題の改善 国家経営にも参画し 

  国際紛争状況にも腐心しながらも 頑張りました


「 王子に 綺麗な嫁のシンシアが来て

  ワシも ウレシイなぁ ~♪ 

  晩酌も 進むというものじゃぁ 

  ワインを もう一杯 イヒヒヒ ♪ 」

「 あなた ~! 鼻の下がだらしなく伸びているわよ !

  義理の娘のシンシアに 変な気を起こしたら

  命は 無いからね ! 」

「 じゃぁワシ ボジョレー・ヌーボーみたいな 

  若い愛人が 一人でいいから ほしいなぁ~ ♪ 」

「 あなたを 今 切り刻んで

  ワインの オードブルにするわよ ! 」

「 母上 ~ 父上は脂身ばかりで 不味そうですよ

  よ~く炙って 脂を落とさないと 」

  と 王子 

「 しっかり 火を通しましょう 

  生肉は食中毒の恐れがあって 危ないですからね 」

  と 王妃 

「 私は 贅沢を言いません

  脂身が多くてもかまいませんわ  」

  でも 女性とワインは年月を経て 

  熟成されていくのが良いのですよね うふふふっ ♪ 」

  シンシアは そう言うと 

  なんて冗談の好きな 楽しい家族なのだろうと思い

  幸せそうに 微笑みました

  でも シンシア以外の三人は 高貴な生まれなので

  庶民のように言いたいことを我慢することも必要ないため 

  表裏のない性格で 本音を言い合っただけなのでした


  シンシアには その後の苦労も沢山あったりするのですが 

  それは また 別のお話なのです
  
  シンシアは 末永く そこそこ幸せに暮らしましたとさ



  めでたし めでたし



      続 く