偽作 シンデレラ 15 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい




「 ちょっと あたしの話も 聞きな ! 」

  義母が言いました


「 何かしら ? 」

  と 女性捜査官


「 あたしだって生まれた時から

  犯罪者だったわけじゃないんだよ

  もともとは ちったぁ いいとこのお嬢だったんだ 」


「 ほう それは知らなかったぜ

  生まれつき ろくでなしの悪党かと思ってたがなぁ 」

  と 男性捜査官


「 父は とある国の 地主だった

  父母とあたし 一家は 裕福に暮らしていたんだ

  だが あたしが子供だった ある日

  隣国との戦争が起き 故郷を侵略され 

  あたしたち一家は 命からがら

  着の身着のままで 土地を逃れ 

  難民になってしまったんだ

  食うや食わずで あちこちを転々としたのさ

  親子ともども ひもじい毎日だったよ

  父と母は あたしを育てるために 

  無理を重ね なれない力仕事にも従事した

  劣悪な環境で やがて無理が祟り 

  はやり病で 父と母は倒れた 

  幼いあたしは 必死で 看病したのさ

  医者代薬代で 僅かに持ちだした金銭や

  身につけた宝石類を 全て手放した

  そして その日が来た 

  金の切れ目が 縁の切れ目

  運の切れ目 命の切れ目

  医者にかかれなくなった父と母は 

  あっという間に 亡くなったよ

  幼い私の手を握りしめ 涙を流し 詫びながらね

  両親は 何一つ 悪くないのにさ

  残された貧乏な孤児に 世間は冷たいものさ

  あちこち たらい回しにされ 下女のように扱われ

  穀潰しと 疎まれて育ったんだ

  まるで 汚い野良犬のようにね

  この世を嘆き 恨んだよ

  やがて 物をくすね 人を騙し 

  悪事と言われることは 何でもやったよ 

  非合法だろうが なんだろうが

  生きるためには かまっちゃいられないさ 」


「 神様は 人の行いを 必ず見ているわ 」


「 ふん 戯れ言を言うな ! 

  お前らが崇める 神など いない !

  例え いたとしても もう神は死んだんだ !

  そうだろう 神がいるなら

  貧乏というだけで 虫けらのように死んでいく 

  理不尽な悲劇を こんな不平等な社会を

  慈悲深い神が 許すわけが無いからね

  世間は 金があるやつばかりを優遇して

  貧乏人を ろくに護っちゃくれない

  この世は弱肉強食 食うか食われるか

  油断してたら 食われるんだよ

  食われたら 食った者の栄養となり

  後は無残な 屍になるだけさ

  だから あたしは 食う側に回ったのさ 」


「 だからといって 人を殺して

  財産を奪って いいわけがないわ ! 」

  と 女性捜査官


「 国は 時に他国を攻め

  領地を奪い 財宝を奪い

  罪もない民をも 平気で殺しているじゃないか !

  それを あたしが 個人で見習ってるだけのことさ 」


「 個人犯罪と 国は違うだろう ! 」

  と 男性捜査官


「 違うもんか ! この権力の犬めが ! 」


「 何 い ! 」

  と 男性捜査員


「 個人の悪行なんか たかが知れてるのさ

  僅かな人間を殺すのが 精一杯だよ

  だが戦争は 為政者の思惑で 

  何万人でも何十万人でも 簡単に人を殺すのさ
 
  まるで遊びでアリを踏みつけるかのようにね

  声高に正義を唱え 正義の御旗を掲げて 

  喜々として 人殺しを奨励する奴らが

  殺せば殺すほど 勲章も 恩給ももらえるって 

  ものを知らない 愚民たちの戦意を煽り 

  その裏で 死の商人らと手を組んで

  しこたま 儲けるのさ

  この世の 地獄を 生み出すのは

  人の命を 塵芥のように扱う連中

  そいつらが巣食う体制の有り様

  国こそが 巨悪の大元なんだよぉぉおおお ~!! 」


「  生い立ちを 犯罪の言い訳にしてはいけないわ 」

   
「 ふ ん !

  人は 飢えから逃れるため 生き延びるため  

  一杯のスープ 一切れのパンのため

  悪魔に 魂を売ることもあるのさ ! 

  この世の地獄を 見たことの無い

  温室育ちの甘ちゃんに 言われたかぁないね ! 」

  義母は そう捨て台詞を吐きました


  娘は 悲しげな表情で立ち尽くしていました


  継母と義姉たちは 官吏たちに連行されました



  


「 ブルブル 女って 怖いな ~ 」

  と 男性捜査官

「 なんですって !

  女と言うだけで 一括りにしないで !

  辛い境遇を耐えて まっすぐに生きる人だっているわ 」

  女性捜査官は 睨みつけました

「 おぉ 怖い 」

  男性捜査官が 肩をすくめました
 
「 お嬢さん あなたには是非 幸せになってほしいわ 」

  と 女性捜査官

「 そうだ 今まで苦労した分と

  無念だった お父さんの分もね 」

  と 男性捜査官

「 ありがとうございます

  幸せになれるように努力します

  これから どんな運命が待ち構えていたとしても

  くじけずに 未来を切り開いていきたいと思います 」

  娘は言いました

「 そうだ 逆境に負けて

  あの女のようになってはいけない 」

  と 男性捜査官

「 私たちは 長い間 あの親娘を追ってきました 

  私生活をも犠牲にしてね 」

「 ま ぁ ! 」

  娘は 驚きました

「 仮面舞踏会に使った

  ドレスや ティアラや 首飾り

  そして あのガラスの靴も

  いつか 私たちの結婚式で

  使おうと思っていた私物なのです ねぇ ♪ 」

  女性捜査官は 男性捜査官の顔を見て言いました

 「 ぽ っ 」

  男性捜査官の 頬が赤らみました  

「 あらっ そういう事でしたか 、、、 」

  憂い顔だった娘は 一転 笑顔になりました

「 舞踏会の帰りで 脱げてしまった靴も

  無事 私の手元に戻ったわ

  でも あのガラスの靴は

  貴方にこそ相応しいわ うふふふっ ♪ 」

  女性捜査官が 言いました


  ガラスの ハイヒールは 

  全ての暗雲を 晴らすかのように

  道標として 明るい未来を示すかのように 

  虹色に 夢色に 光り輝きました



       続  く