偽作 不思議の国のアリス 11 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい



  ネズミが しゃべり初めているにも関わらず、

  すでに アリスの頭の中ではネズミについての

  勝手な妄想が 渦巻いていました。

  とかく少女は 妄想や他人の悲劇話が

  三度の サンドウィッチの食事と匹敵するほど好きなのです。

  脳内妄想は こんなふうになりました。



。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。



  家の中で 出くわした犬と猫が ネズミに言うことにゃ、

「 これから裁判しよう、お前を訴追してやる。

  さぁ来い ! 嫌とは言わせんぞ !

  住居不法侵入だ ! 食料の窃盗だ ! 

  壁をかじったから器物損壊だ ! とりあえず裁判だ。:

  だって 今朝からオレたちは ヒマ 

  何もすることないんだからな 」


  ネズミが 犬と猫に答えて言うには、

 
「 陪審員も判事もいない、

  そんな裁判なぞありえない、せめて弁護士を呼んでくれ ! 」


「 オレたちが 検察で 判事で 陪審員だ 文句あるか 」

  と 犬と猫。 


「 これは 非合法の 裁判だ 」


「 オレたちが 全容疑を裁く、貴様に死刑を宣告してくれる。」


「 それは 不当な違法裁判で 私刑の 死刑宣告だ ~

  オイラ 金がないから 国選弁護士を呼べ ~! 」


「 片腹痛いわ 犯罪人が権利の主張とは、

  即時 処刑でもいいんだぞ ! 」


「 それじゃ まるで どっかの三代目

  トッチャンぼうや北の将軍様

  みたいじゃないかぁぁああ ~! 」


「 それなら 保釈金 1億ポンド出せ ! 」


「 お前ら どっかの テロリストかよ ! 」


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。



「 おい 嬢ちゃん ! ちゃんと聞いてないな ! 」

  とネズミは、きびしい調子でアリスに言いました。

「 あら ごめんなさい 」 

  とアリスは言いました。

「 せっかく 悲しい身の上を話してるのに ! 」

「 たしか、高等裁判所の判決あたりまで いきましたっけ ? 」

「 何を 聞いていた ! そんなことは 言ってないぞ 」

  とネズミは怒り声で言いました。

「 ふざけた事ばかり言って オイラをバカにしてる ! 」

  とネズミは立ちあがって その場を離れ歩きだしました。
 
「 そんな つもりじゃないのよ ! 」

  と アリス。

「 オイラの家は もともと 

  イタリア人みたいに 大家族だったんだ、

  だけど 今は天涯孤独なんだ なんでか分かるか ! 」


「 バブル崩壊で 事業経営が傾き 低空飛行、

  リーマン・ショックで 青息吐息で

  消費税増税で トドメを刺され、

  経営破綻して 夜逃げした挙句 一家離散したの ? 」


「 ざっけんな ! おれ以外の家族が

  猫や 犬や 猛禽類に 連れ去られたんだ ! 

  後のことは 言わなくても分かるな ? 」 

   
「 でも、ネズミさん あたしに 

  そんなに怒らなくても いいんじゃない ? 

  怒りの矛先が違うような気がするわ、

  拉致する連中が悪いのよ、

  だって あたしたち 拉致事件には

  わぁわぁぶぅぶぅ言うだけで 手も足も出ないんだものぉ~。

  だからもっと 理性的になりましょう、

  そうよ 司法の手に委ねましょうね。

  短気は損気よ 心拍数が早すぎるんじゃない ?

  ネズミさんの短い寿命が もっと短くなるわよ うふふ ♪ 」


<  ギシ ギシ ギリ ギリ ! >


  ネズミは 歯ぎしりしました。

「 お前らは いつも高みの見物なんだ、

  非難するだけだ ! 当事者じゃないからな、

  勝手な議論ばかりで 役に立たない烏合の衆だ ! 」


「 ねぇ 戻ってきて、お話を最後まで聞かせて、

  中途半端で尻切れトンボはいけないわ、

  ドラマチックな盛り上がりや 

  どんでん返しや、あっと驚く結末を

  みんな 楽しみにしてるのにぃ ~ 」

  アリスが ハードルをあげるような事を言うと、

  他のみんなも声を上げました。


「 うん、たのむよ ! 」 「 そうだ そうだ 」

「 これから うんと面白くなるんだろう ? 」 
 
「 まだ話は お前さんの生まれる前の

  父親ネズミと母親ネズミの ロマンスの途中だぞ 」


  でも、ネズミは首を振るだけで、

  足早に 去ってしまいました。

  ネズミが完全に見えなくなると インコが悪態をつきました。


「 これから面白くなりそうだったのに

  話の半ばで帰っていっちゃった、

  誰かさんが 真剣に聞かないからだ ! 」

 
「 話を せがんでおきながら 上の空なんて

  なんて いいかげんな 嬢ちゃんなんだ ! 」


  お婆さんガニが 孫カニに言いました。

「 あなた 人の話を ちゃんと聞かなくてはいけませんよ 

  上の空で 適当な返事をしてして 

  話す方の好意を ないがしろにするような事しちゃだめよ、

  誠実さが大切なのよ、カニ脳みそに刻みなさい、わかりましたね 」

  孫カニが、答えます。


「 そうね なにかと人間は傲慢だわ、諍いばかりして,

  他者の権利を暴力で蹂躙したり 体面を毀損したりするのよ。 

  あの女の子の 態度を見れば分かるわ。

  おまけに わたしたちを茹でて食用にするし、

  怖くて恐怖で 泡吹いちゃうわ あわあわ ! 」


「 ちぇ~ ダイナが いたらいいのになぁ 」

  と アリスは顔を醜く歪め 憎々しげに言いました。

「 そしたら すぐにネズミさんを咥えて連れてきてくれるのに、

  ここの みんなも ひと睨みで恐怖に凍りつかせて 

  簡単に黙らせることが 出来るでしょうね、

  ふふふ ふふふ ふふふ ♪ 」

 
「 その ダイナとは 誰ですかな ? 」

  と インコ。

  アリスは 嬉しげに答えました。

「 ダイナは うちの猫なの、

  それで、ネズミ捕りは名人級なの、

  電 光 石 火 ! 

  するどいツメで グサッ、ザクリとね、

  小鳥だって一瞬で捕らえ パクっと食べちゃうんです ! 」


「 うぉおお ~ 」 「 ひゃぁぁ ~ 」


  一同は 総毛立ちました。

  あわてて 逃げる鳥もいます。

  老カササギは、身繕いをして言いました。

「 そろそろ 帰宅せねばなりませんわい、

  夜風が きついもんでして 

  寄る年波には勝てませんなぁ ごほごほ 」


  カナリアが 子どもたちを 呼びました。

「 みんな、帰るわよ もう ベッドの時間ですよ ! 」

  なんだかんだと、みんな足早に去ってしまい、

  アリス 一人だけが残されてしまいました。

「 みんな 勝手に湧いて出て 勝手に帰ってしまったわ、

  だいたい どっから来て どこに帰るのよ ?

  とりとめのない話だけで 何も結論が出ないなんて、

  ちゃんと オチをつけてほしいものだわ、

  一体どうなってんの ? わけ分かんない ! 」

   
  アリスは また一人ぼっちで寂しく哀しくなりました。


「 ダイナのこと、言わなきゃよかったのかな ?

  変よねぇ 誰もダイナを好かないみたい。

  ネズミも 鳥も 簡単に仕留めてしまう、

  ミッキー・ローク顔負けの 必殺の猫パンチの使い手で、 

  あたしの自慢の 良い猫なのにぃ ~ 」

  


 < ピタ ピタ > 

  遠くから小さな足音が聞こえてきました。

  アリスは 顔をあげました。

  ネズミの気が変わって 最後まで話をしようと

  戻ってきたのかな、と 思ったのです。



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