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「 では この お嬢様を わたくしめが
王子様のもとに お連れいたします 」
お城の人が言いました
「 ではよろしく 粗相のないように頼むぜ 」
男性捜査官が言いました
「 頑張ってね これからは 幸せは自分で獲得するのよ 」
女性捜査官が言いました
「 はい肝に命じておきます 御恩は忘れません 」
娘は深々と 頭を下げました
娘は 使いの者と共に お城に向かいました
娘は お城の侍女たちにゲストルームの風呂場で
頭の先から足の先まで 徹底的に洗われました
「 作業着姿のままでは 王子様に
拝謁するわけには まいりませんので、
御召し物を お着替えください 」
娘は 前夜の舞踏会の時のように
新しい衣服に 着替えさせられました
その姿は 思わず侍女たちも見とれ
ため息をつくほどでした
「 父上 母上 このお嬢さんが
仮面舞踏会の あの人です 」
「 おおおぅ そうか そうか うん うん
なんと綺麗で清楚で 男心をそそる娘じゃ
うひょひょ 王子にはもったいないのう
わしの愛人じゃ だめかのう ? 」
「 あなた ! お下劣ですよ
後で ボコボコのサンドバックにするわよ 」
「 ひぇ~ ! やめて~ 暴力反対~ 」
「 ところで お嬢さんの お名前は なんと言うのですか ? 」
と 王妃様
娘は 満面の笑みで答えました
「 ” シ ン シ ア ” と 申します
「 ほ う !
『 シ ン シ ア 』 か 良い名前じゃ 」
と 王様
「 たしか その名は 月の女神 アルテミス の別名
” キュンティア ” から来ているのでしょうね 」
と 王妃様
「 もともとは 月の女神様の名前とは
月の夜の 舞踏会で巡りあったのだから
ほんとうに ぴったりの名前ですね 」
と王子
娘 シンシアは 王様と 王妃様にも気に入られ
王子様と 華燭の典を挙げしました
城下を 馬車による 豪華な婚姻の儀のパレードが行われました
シンシアの たっての希望で かぼちゃ型の馬車が使われました
沿道には 国旗の旗を振る人々が溢れかえりました
紙吹雪や ライスシャワーが舞いました
「 なんて お綺麗なのでしょうねぇ 」
「 でも プリンセス・シンシアは 民間出身なのね 」
「 綺麗なだけで やっていけるかしら
お城の中で イジメにあわなきゃいいけど 」
「 まぁ 庶民は そんなゴシップこそ
と~っても 楽しみなんだけどね うひひひ ♪ 」
高い身分は 必ずしも
完璧な幸せとは 限らないのでした
民間出身の シンシアは やがて宮廷内の関係者の
陰湿で ネチネチしたイジメにあったり
イエロージャーナリズムの餌食になり
継母たちの悪行や 父親の死をゴシップ雑誌に
面白おかしく 色々書かれたりして
精神的に追い詰められ
帯状疱疹にもなったりもしたのです
しかし あの継母たちとの生活に比べたら
よほど ましと考え直し
精神的 肉体的に タフに成長したシンシアは
少しトロくさい 王子様を支えながら
幾つものトラブルをかいくぐり
財政問題の改善 国家経営にも参画し
国際状況にも腐心しながらも 頑張りました
「 王子に 綺麗な嫁のシンシアが来て
ワシも ウレシイなぁ ~♪
晩酌も 進むというものじゃぁ
ワインを もう一杯 イヒヒヒ ♪ 」
「 あなた ~! 鼻の下がだらしなく伸びているわよ !
義理の娘のシンシアに 変な気を起こしたら
命は 無いからね ! 」
「 じゃぁワシ ボジョレー・ヌーボーみたいな
若い愛人が一人でいいから ほしいなぁ~ ♪ 」
「 あなたを 今 切り刻んで
ワインの オードブルにするわよ ! 」
「 母上~ 父上は 脂身ばかりで不味そうですよ
よ~く炙って 脂を落とさないと
しっかり 火を通しましょう
生肉は食中毒の恐れがあって 危ないですからね 」
と 王子
「 私は 贅沢を言いません
脂身が多くてもかまいませんわ 」
でも 女性とワインは年月を経て
熟成されていくのが良いのですよね うふふふっ ♪ 」
シンシアは そう言うと
なんて冗談の好きな 楽しい家族なのだろうと思い
幸せそうに 微笑みました
でも シンシア以外の三人は 高貴な生まれなので
庶民のように言いたいことを我慢することも必要ないため
表裏のない性格で 本音を言い合っただけなのでした
シンシアには その後の苦労も沢山あったりするのですが
それは また 別のお話なのです
シンシアは 末永く そこそこ幸せに暮らしましたとさ
めでたし めでたし
続 く