偽作シンデレラ 14 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい

「 これから 義母と義姉たちは どうなるのですか ? 」

  娘は尋ねました

 
「 継母と娘たちは 然るべき刑になるでしょう

  もちろん 極刑も含めてね 」

  女性捜査官が言いました


「 犯行は何件もあって

  裁判に長い期間がかかるかもな

  でも土地や財産は お嬢さんに戻るよ 」

  と 男の捜査官


「 一つ 教えてください 」

  娘は 尋ねました


「 なにかしら ? 」


「 なぜ 私は 12時前に お城から 

  帰らなくてはいけなかったのですか ? 」


「 あぁ それはね うふふふ ♪ 」

  女性捜査官は 笑いながら答えました


「 馬車は レンタルなのね 

  夜の舞踏会に行くため 借りて

  営業終了時間の午前1時に返すので

  お城から ここまで戻りレンタル馬車屋まで帰るには 

  ギリギリ 午前12時なのよ 」


「 ちなみに御者は 被害関係者にしてもらいました

  仮面舞踏会で 連中を確認してもらうためにね

  あの太っちょの おじさんです

  彼も 肉親を失くしました 」

  男性捜査官が 言いました


「 不景気で厳しい昨今 

  捜査の経費を あまり掛けられなくて

  だから 翌日返しで二日分レンタル代払うのは  

  キツイのよ 

  経理に認められないと 自腹を切ることになるの 」

  と 女性捜査官


「 不況なのですね 

  だから こんな人達も跋扈するのでしょうか 」


  娘は顔を曇らせ 深くため息を付きました
  
  男手ひとつで自分を育てるため苦労していた

  父の幸せを願い 義母との結婚に賛成したこと  

  良かれと思ったことが 父の死を招いたと知り 

  残念で 悔しくて堪りませんでした

  娘は くちびるを噛みました


「 えぇぇっと わたくし先ほどの王室の者ですがぁ 

  捜査官さん この娘さんは犯罪とは関係ないのですねぇ ? 」


「 もちろん このお嬢さんは被害者です 」


「 それはなにより なにせ王子様の お妃候補ですから 」


「 そうでしたね とても喜ばしいことですわ 」

  と 女性捜査官


「 てめぇ ~! この ~!

  灰かぶりの 下女の分際で  

  一人だけ 幸せなんて許さないよ ~! 」

  頭にタンコブのできた 手錠腰紐姿の継母が

  意識を取り戻し 叫びました


「 あたしらのほうが 淫靡で 

  プンプンと 濃密なエロさなのに~!

  あぁぁ 玉の輿がぁぁああ ~~! 」


「 き~ぃぃぃぃいいいい!

  ロリコン王子めぇぇぇえええ~!

  私たちの 熟れ熟れの ドロドロの卑猥な魅力が

  なぜ わからないんだぁぁぁああ~! 」 


  義姉たちも 悪態をつき 吠えました

  壁塗りのような化粧も ボロボロと崩れ落ち 

  今や 醜悪な化物のようです

  人は なかなか自分を

  客観視 出来ないものだなぁと

  娘は 思いました


「 早く連れて行きなさい ! 

  ほんと最低 見苦しいわ ! 」

  と 女性捜査官


「 ちょっと わたしの話も聞きな ! 」

  義母が言いました


「 何かしら ? 」

  と 女性捜査官


「 わたしだって生まれた時から

  犯罪者だったわけじゃないんだよ

  もともとは ちったぁ いいとこのお嬢だったんだ 」


「 ほう それは知らなかったぜ 」

  と 男性捜査官


「 父は とある国の 大地主だった

  だが わたしが子供だった ある日

  隣国との戦争が起き 侵略され 

  わたしたち一家は命からがら 

  着の身着のままで 土地を追われてしまったんだ

  父と母は わたしを育てるために 

  無理を重ね なれない力仕事にも従事した

  やがて無理が祟り 流行病で父と母は倒れた 

  医者代薬代で僅かに持ちだした財産をなくした

  そして 金の切れ目が 

  縁の切れ目 運の切れ目 命の切れ目

  医者にかかれなくなった父と母は 

  あっという間に 亡くなった

  貧乏な孤児に 世間は冷たいものさ

  親戚をたらい回しにされ 下女のように扱われ

  穀潰しと 疎まれて育ったんだ

  まるで 汚い野良犬のようにね

  やがて 親戚の家を飛び出て

  生きるためには 物をくすね人を騙し 

  悪事と言われることは 何でもやったよ 

  非合法だろうがなんだろうが かまっちゃいられないさ

  世間は 金があるやつばかりを優遇して

  貧乏人を ろくに護っちゃくれないからね

  この世は弱肉強食 食うか食われるか

  油断してたら 食われるのさ

  だから私は 食う側に回ったのさ 」


「 だからといって 人を殺して

  財産を奪って いいわけがないわ ! 」

  と 女性捜査官


「 国は 時に他国を攻め

  領地を奪い 財宝を奪い

  罪もない民をも 殺しているじゃないか

  それを 個人でやってるだけのことさ 」


「 個人犯罪と 国は違うだろう ! 」

  と 男性捜査官


「 違うもんか ! この権力の犬めが ! 」


「 何い ! 」

  と 男性捜査員


「 個人の悪行なんか たかが知れてるのさ

  僅かな人間を殺すのが 精一杯だよ

  だが戦争は 何万人でも 何十万人でも

  簡単に 殺すのさ アリを踏みつけるようにね

  為政者の思惑だけで 正義の御旗を振りかざして 

  国こそが 巨悪の大元なんだよぉぉおおお ~!! 」

  そう 捨て台詞を吐きながら

  義母たちは 連行されていきました

  
「 女って 怖いな ~ 」

  と 男性捜査官


「 なんですって !

  女と言うだけで 一括りにしないで 」

  女性捜査官は 睨みつけました


「 おぉ 怖い 」

  男性捜査官が 肩をすくめました


  継母と義姉たちは 

  ぎゃぁぎゃぁ 騒ぎながら連行されました


 
 
「 お嬢さん あなたには是非 幸せになってほしいわ 」

  と 女性捜査官


「 そうだ 今まで苦労した分と

  無念だった お父さんの分もね 」

  と 男性捜査官


「 ありがとうございます 幸せになれるように努力します

  これから どんな運命が待ち構えていたとしても

  くじけずに 未来を切り開いていきたいと思います 」

  娘は言いました


「 私たちは 長い間 あの親娘を追ってきました 

  私生活をも犠牲にしてね 」


「 まぁ ! 」

  娘は 驚きました


「 仮面舞踏会に使った

  ドレスや ティアラや 首飾り

  そして あのガラスの靴も

  いつか 私たちの結婚式で

  使おうと思っていた私物なのです ねぇ ♪ 」


  女性捜査官は 男性捜査官の顔を見て 言いました


 「 ぽっ 」

  男性捜査官の 頬が赤らみました
  

「 あらっ そういう事でしたか 、、、 」

  憂い顔だった娘は 一転 笑顔になりました


「 舞踏会の帰りで 脱げてしまった靴も

  無事 私の手元に戻ったわ

  でも あのガラスの靴は

  貴方にこそ相応しいわ うふふふっ ♪ 」

  女性捜査官が 言いました


  ガラスの ハイヒールは 

  全ての暗雲を 晴らすかのように

  道標として 明るい未来を し示すかのように 

  虹色に 夢色に 光り輝きました



       続  く