「 ブィーン ! 」
「 ブォーン ! 」
パンチは空気を切り裂きます
「 オラオラオラオラ ! 」
「 オラオラオラオラオラオラオラオラ ~! 」
破壊力抜群の 熊かゴリラを思わせるような 重量級パンチが
力任せのフルスイングで 娘の 華奢な顔面を 襲いました
< ひょい > < ひらり >
しかし義姉たちの 渾身のパンチも
娘は 蝶が舞うように 軽やかに
サイドステップやスエーバックで 紙一重でかわしました
「 避けるとは 卑怯なり ~! 」
「 ちょろちょろと コマネズミみたいに ~! 」
「 ブィーン ! 」
「 ブォーン ! 」
しかし 虚しくパンチは空振りして
二人は たたらを踏むようにバランスを崩し
フラフラ よろけました
そこを 娘が 軽くモップの先で
義姉たちの太い足に 足払いをかけました
< ずどん ! > < ぐしゃ ! >
「 ぎゃぁあ~! 」 「 うひゃぁあ~! 」
義姉たちは もんどりうって
重なり合い 転び ひっくり返りました
「 義姉様たちも 同じ目に合わせますよ
私が 日々 鍛えた技を
そのカボチャ頭で 味わいたいですか ? 」
「 なんだとうぅぅ ! カボチャ頭とは何だ ! 」
「 ふざけんなぁぁ ! ハロウィンは終わったぞ ! 」
義姉たちは カエルのような 無様な格好のまま 怒鳴りました
「 私は 日頃の掃除や水汲みや 薪割りや力仕事で
否応もなく 筋力が鍛えられました
日頃 グータラして脂肪ばかり蓄積している
あなた方が 私のスピードに敵うかしら ? 」
「 このぉ がきゃぁぁあ! 付け上がりやがってぇぇええ ~! 」
「 てめぇ~! 何様のつもりだ ~! 息の根を止めてやる ! 」
二人は体制を整え 再び攻撃をしようとしましたが
ヘビー級の体重で重なったところを
首根っこをモップで押さえつけられ
膝もひねり したたか床にぶつけたので
じたばたするだけで なかなか立ち上がれませんでした
「 うぎゃぁああ 痛いぃぃいいい~ ! 膝関節がぁ ~! 」
「 膝の靭帯を 痛めたかもぉおお ~!
あぁ とっとと 始末しておけば良かった ~! 」
「 はい はい 恨み事はそこまで
母娘三人とも 逮捕します ! 」
と 女性捜査官
「 よし 早く捕縛しろ ! 」
と 男性捜査官が 駆けつけてきた警吏たちを 家に入れました
「 何すんのよう ~!
乙女の柔肌の どこ触ってるのよう ~! 」
「 この変態 ~!
無辜な あたしの身体に触らないで ~!
いやあぁ~ん ! 」
「 ふざけんな 化け物ども !
さぁ きつく ふん縛れ ! 」
「 キィィイ~~ ! 」
「 ガルゥゥゥウ~! 」
継母と義姉たちは 警吏たちに
縄で ぐるぐる巻きにされ逮捕されました
「 お前らの 縛られた姿は
まんまチャーシューだぜ わははっ 」
男性捜査官は 笑いました
警吏たちも つられて苦笑しました
娘は 複雑な表情で 見つめていました
「 お嬢さん お見事でした
三人を 生きたままで捕えることができました 」
女性捜査官が 言いました
「 至近距離では あなたも傷つける恐れがあったので
犯人制圧用の銃を 使用することが出来ませんでした 」
「 お后候補を 蜂の巣にするわけにはいかないからな 」
男性捜査官の手には 鈍く光る
携帯用に銃身と銃把を切り詰められた
大口径の実弾が込められた 散弾銃が握られていました
ウィキペディアより
「 でも あなたなら 切り抜けられると思っていたわ
素晴らしく 軽やかなステップで
舞踏会の観衆の視線を 一身に浴びていたそうね
うわさ通りの 見事なフットワークでした 」
女性捜査官は 笑みを浮かべました
続 く