偽作シンデレラ8 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい

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「 お城の 食べ物と言っても 大したことないねぇ 」

「 お上品で こんなんじゃぁ 食った気が しないわ がばがばがば ! 」

「 もっと ギトギトと 脂ぎってないとねぇ ばくばくばくばく ! 」














「 お嬢様 お帰りの お時間です 」

  太っちょの御者が近づき 声をかけました

  楽しい時間は、あっという間に過ぎて

  気がつくと12時15分前です


「 あっ いけない もう時間だわ 」 

「 えっ ? もう 」

「 門限が有りますので これで失礼します おやすみなさい 王子様 」

  彼女は 丁寧に おじぎをすると 急いで大広間を出て行きました


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  慌てていたため ハイヒールが階段にひっかかり

  勢い余って 汗ばんでいた足から

 「 すっぽん ! 」 と

  片方の ガラスのハイヒールが ぬげてしまいました

記憶形状樹脂を施してあっても 

  いかんせん 脱げやすい形状のハイヒールです


「 あっ 靴が脱げてしまいました 」

「 約束の 十二時まで もうわずかです お急ぎください 」

  ガラスのハイヒールを 取りに戻る余裕がありません

  彼女は御者に促され馬車に飛び乗ると急いで家へ帰りました




  継母たちは まだまだ 貪欲に飲み食いしていました


「 お城の食い物を 食い尽くしてやるわさ ! 」

「 もっと 食うぞ ~! もっと持ってこい ~! 」

「 酒も ぜんぜん足りないぞ~! 

  ケチケチすんなよ ! ぐえっ~~ぷ ! 」




  彼女の後を追ってきた王子は

  階段に落ちていたハイヒールを拾いました


「 これは あの娘が履いていた ガラスの靴 」


  会場に戻ると 王様と王妃様に言いました


「 父上 僕は あの娘と結婚したいと思います 」

「 王子は あの娘で 構わんのかい ?

  もっとエロイのも いたぞ 」

「 僕は あまりにもエロいのは苦手です 」

「 でも もう帰ってしまったようですが ? 」

「 はい 母上 何故か慌てて 途中で帰りました 」

「 門限が あるのかのぅ ? 名は なんと申すのか ? 」

「 踊りに夢中で 聞くのを忘れました 」

「 名前が 分からないとは困るではないか 

  王子は やることが抜けておるのう 

  女の子の 名前と連絡先は

  速攻で抑えねばならぬのじゃ 

  そして すぐに パクっとな ! 」

「 このヒヒジジイ そんな肉食獣のような事 

  王子に 入れ智慧しないで良いのです ! 」

「 男はオオカミなのよ~ 気をつけなさい ~♪ 

  がるるるる ~ ♪ 」

「 このエロジジイ 下半身を猟銃で撃つわよ !

  まったく古臭いオヤジだわね 

  それ前世紀の歌だし 若い人は知らないわよ
 
  さて王子 それではどうしましょう ? 」

「 そうですね あの娘を探さなくてはなりませんね 」

「 仮面舞踏会なので 素顔は見ていないのではないですか ? 」
 
「 手がかりがないと どうしたら良いものやら ?

  わしゃ わからんぞぃ 」

「 はい 名も知らず 仮面で顔は はっきりとは分かりませんが 

  残された このガラスの靴があります 

  この靴に合う足の女性が 彼女です

  そして 美しく 憂いを含んだ 濡れた瞳をしていました 」

「 では 早く捜索しなくてはいけないだろうね 

  なぁ 妃よ うひょひょひょ ♪ 」

「 さっそく夜が明けたら 侍従の者に捜索を始めさせましょう 」

「 なぁ 王子よ 若いおねえちゃんの

  靴の匂いを 嗅がせてくれないかのぅ ? 」

「 なぜです ? 父上 」

「 いやぁなに ワシが匂いを憶えて おねえちゃんを 

  嗅ぎ出せるんじゃないかなぁ 、、、

  なんてね うほほはっ ♪ 」

「 あなた 本物の変態だったのね

  靴の匂いが嗅ぎたきゃ 私の靴を嗅ぎなさい! 」


「 いや おばさん臭いのは かんべんじゃ

  若い娘のがいいんじゃ ~ 」


「 あなたこそ じじい臭い加齢臭出しまくってるくせに~!

  その鼻の穴に 私の靴を突っ込んでやるわよ~! 」


< ぐり! ぐり! ぐり! >


「 ウホホホッ なんか刺激的 ~ ♪ 」


「 おりゃぁ~ ! 嗅覚機能を低下させてやるわ ! 」 


< ぐり! ぐり! ぐり! >


「 ぐあぁぁ ! 鼻血がぁ~! 鼻血がぁ~! ブ ~ ! 」


  王妃の靴は 鼻血に塗れました








 娘の足から 離れ 

 王子の手に残された クリスタルカットのハイヒールは  

 あたかも 希望の未来を示すかのように 

 王子の手の中で 虹色に美しく光り輝いていました



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  娘を乗せた馬車が 家に戻りました

  例の女性と男性が 待っていました


「 遅くなりました いま 帰りました 」

「 なんとか セーフね 」

「 実は慌てて靴が脱げて 片方お城に置いてきてしまいました 」

「 えぇ ! あれは 私の 、、、、、、 

  う~ん 、、、 まぁ無いものは しょうがないわ 

  そのうち何とか回収しましょう 片方だけでも持ち帰るわ 」


「 本当に ごめんなさい こんなに お世話になって 

  なんと お礼を言ったらよいのか 、、、 」

「 いいのよ気にしないで またね おやすみ お嬢さん 」
 
「 まるで 夢のようでした 

  今も夢心地で 信じられません

  ありがとうございました おやすみなさい  」

「 こちらこそ ありがとう 証拠固めが できたわ 」

「 えっ ? なんのことでしょう? 」

「 いえ こっちのこと 気にしないで 」


  女性はドレスや 小物や 片方の靴を回収して 

  男性と馬車に乗り あたふたと帰りました

  娘は 去って行くカボチャの形の馬車を 

  手を振りながら 見送りました


「 本当に あの人たちは 魔法使いかもしれない 

  それとも 天国の お父さん お母さんが遣わした

  天使たち なのかしら 、、、、、 」



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