「 お城の 食べ物と言っても 大したことないねぇ 」
「 お上品で こんなんじゃぁ 食った気が しないわ がばがばがば ! 」
「 もっと ギトギトと 脂ぎってないとねぇ ばくばくばくばく ! 」
「 お嬢様 お帰りの お時間です 」
太っちょの御者が近づき 声をかけました
楽しい時間は、あっという間に過ぎて
気がつくと12時15分前です
「 あっ いけない もう時間だわ 」
「 えっ ? もう 」
「 門限が有りますので これで失礼します おやすみなさい 王子様 」
彼女は 丁寧に おじぎをすると 急いで大広間を出て行きました
慌てていたため ハイヒールが階段にひっかかり
勢い余って 汗ばんでいた足から
「 すっぽん ! 」 と
片方の ガラスのハイヒールが ぬげてしまいました
記憶形状樹脂を施してあっても
いかんせん 脱げやすい形状のハイヒールです
「 あっ 靴が脱げてしまいました 」
「 約束の 十二時まで もうわずかです お急ぎください 」
ガラスのハイヒールを 取りに戻る余裕がありません
彼女は御者に促され馬車に飛び乗ると急いで家へ帰りました
継母たちは まだまだ 貪欲に飲み食いしていました
「 お城の食い物を 食い尽くしてやるわさ ! 」
「 もっと 食うぞ ~! もっと持ってこい ~! 」
「 酒も ぜんぜん足りないぞ~!
ケチケチすんなよ ! ぐえっ~~ぷ ! 」
彼女の後を追ってきた王子は
階段に落ちていたハイヒールを拾いました
「 これは あの娘が履いていた ガラスの靴 」
会場に戻ると 王様と王妃様に言いました
「 父上 僕は あの娘と結婚したいと思います 」
「 王子は あの娘で 構わんのかい ?
もっとエロイのも いたぞ 」
「 僕は あまりにもエロいのは苦手です 」
「 でも もう帰ってしまったようですが ? 」
「 はい 母上 何故か慌てて 途中で帰りました 」
「 門限が あるのかのぅ ? 名は なんと申すのか ? 」
「 踊りに夢中で 聞くのを忘れました 」
「 名前が 分からないとは困るではないか
王子は やることが抜けておるのう
女の子の 名前と連絡先は
速攻で抑えねばならぬのじゃ
そして すぐに パクっとな ! 」
「 このヒヒジジイ そんな肉食獣のような事
王子に 入れ智慧しないで良いのです ! 」
「 男はオオカミなのよ~ 気をつけなさい ~♪
がるるるる ~ ♪ 」
「 このエロジジイ 下半身を猟銃で撃つわよ !
まったく古臭いオヤジだわね
それ前世紀の歌だし 若い人は知らないわよ
さて王子 それではどうしましょう ? 」
「 そうですね あの娘を探さなくてはなりませんね 」
「 仮面舞踏会なので 素顔は見ていないのではないですか ? 」
「 手がかりがないと どうしたら良いものやら ?
わしゃ わからんぞぃ 」
「 はい 名も知らず 仮面で顔は はっきりとは分かりませんが
残された このガラスの靴があります
この靴に合う足の女性が 彼女です
そして 美しく 憂いを含んだ 濡れた瞳をしていました 」
「 では 早く捜索しなくてはいけないだろうね
なぁ 妃よ うひょひょひょ ♪ 」
「 さっそく夜が明けたら 侍従の者に捜索を始めさせましょう 」
「 なぁ 王子よ 若いおねえちゃんの
靴の匂いを 嗅がせてくれないかのぅ ? 」
「 なぜです ? 父上 」
「 いやぁなに ワシが匂いを憶えて おねえちゃんを
嗅ぎ出せるんじゃないかなぁ 、、、
なんてね うほほはっ ♪ 」
「 あなた 本物の変態だったのね
靴の匂いが嗅ぎたきゃ 私の靴を嗅ぎなさい! 」
「 いや おばさん臭いのは かんべんじゃ
若い娘のがいいんじゃ ~ 」
「 あなたこそ じじい臭い加齢臭出しまくってるくせに~!
その鼻の穴に 私の靴を突っ込んでやるわよ~! 」
< ぐり! ぐり! ぐり! >
「 ウホホホッ なんか刺激的 ~ ♪ 」
「 おりゃぁ~ ! 嗅覚機能を低下させてやるわ ! 」
< ぐり! ぐり! ぐり! >
「 ぐあぁぁ ! 鼻血がぁ~! 鼻血がぁ~! ブ ~ ! 」
王妃の靴は 鼻血に塗れました
娘の足から 離れ
王子の手に残された クリスタルカットのハイヒールは
あたかも 希望の未来を示すかのように
王子の手の中で 虹色に美しく光り輝いていました
娘を乗せた馬車が 家に戻りました
例の女性と男性が 待っていました
「 遅くなりました いま 帰りました 」
「 なんとか セーフね 」
「 実は慌てて靴が脱げて 片方お城に置いてきてしまいました 」
「 えぇ ! あれは 私の 、、、、、、
う~ん 、、、 まぁ無いものは しょうがないわ
そのうち何とか回収しましょう 片方だけでも持ち帰るわ 」
「 本当に ごめんなさい こんなに お世話になって
なんと お礼を言ったらよいのか 、、、 」
「 いいのよ気にしないで またね おやすみ お嬢さん 」
「 まるで 夢のようでした
今も夢心地で 信じられません
ありがとうございました おやすみなさい 」
「 こちらこそ ありがとう 証拠固めが できたわ 」
「 えっ ? なんのことでしょう? 」
「 いえ こっちのこと 気にしないで 」
女性はドレスや 小物や 片方の靴を回収して
男性と馬車に乗り あたふたと帰りました
娘は 去って行くカボチャの形の馬車を
手を振りながら 見送りました
「 本当に あの人たちは 魔法使いかもしれない
それとも 天国の お父さん お母さんが遣わした
天使たち なのかしら 、、、、、 」
続 く