

利用したのはアーミッシュビレッジのバスツアーです。
ドライバーはドンさん(確か。名前覚えるの苦手で)。
元高校教師で、リタイヤ後このお仕事をしてるんだそう。
1600年代、ドイツ付近でアーミッシュ派が発生した成り立ちや、
それがアメリカに渡って、1737年ごろにペンシルベニアに定住した経緯から教えてくれました。
現在このランカスター周辺には、42,000人ほどのアーミッシュの方たちが住んでいて、前回触れたように人口はどんどん増えているそうです。
アーミッシュの家庭は子だくさんで(多分避妊が許されていないのもあるかと)
平均で8人くらい、中には15人も子供がいる家庭もあるそうですから
そりゃ人口増えますよね…。
ドンさんには、アーミッシュファミリーのお友達一家がおり、その家族との交流エピソードも聞くことができました。
教えてくれた内容は盛りだくさんだったのですけど、特に意外に感じたポイントを挙げていきますね。
アーミッシュだけで住んでるわけではない
アーミッシュもイングリッシュも同じエリアに暮らし、活発に交流を持っているということ。
たくさんある牧場も、アーミッシュ経営のところとイングリッシュ経営のところが隣り合ったりしています。
こちらはアーミッシュの牧場だけど、
このサイロにアメリカ国旗が書いてあるのはイングリッシュ経営の牧場、とか
車は自分で運転しなきゃヨシ
電気は使わない、けど…?
アーミッシュは、自動車、トラクターなどの農作業用の車を使わず、さらに電気も使わないと言われています。
考え方としては、別にそれらがEvil(邪悪)なものと思ってるわけじゃないそうです。
ただ伝統を守りたい、自分たちはこの生き方を選んでるだけ、と。
人口が増えてることもあり、アーミッシュの人がイングリッシュが住んでいた家を購入することもあるそうですが、
その場合は電線を撤去し電気の供給がなされないよう工事してから、
ビショップ(司教)に中をチェックしてもらい、住み始めるとのこと。
ただ、現代のアーミッシュは新しいことも柔軟に取り入れてるそうで。
電気を使わない代わりに、プロパンガスを動力として、冷蔵庫や洗濯機、乾燥機などを使っているのだそう!
中にはシャワーが使えるようになっているお家もあるそうです。
※後日追記 このときのガイドさん「ドライヤー」って言ってた気がしたのですが、別の日のガイドさん曰く、乾燥機は使わないとのことでした。
他にはstove(暖房器具か料理用コンロか不明)もアリと。クーラーは使わないそうです。
…これって、かなりイメージ変わりません?
電気はダメだけどガスならいいって、多分理屈はあるんでしょうけど、なんか良くないですか、おおらかで。
電話もネットもダメと言うけど…
電話に関しては、現代ではやはり全くないというのも難しいようで、
各家庭携帯電話を持っていることが多いそうです。
ただ教義上、家の中で使うことはNG。
家の外に何軒かで共通して使う電話ブースがあり、そこで使うみたい。
(ここちょっと聞き取りあいまいだったかも)
さっきのUber呼ぶのも、家の外でなら必要に応じてスマホも使えるということかな?
なおドンさん曰く、アーミッシュの若者がひと気のないところで夢中で携帯でテキストを打ってるところを目撃したりもするそうです。
それが悪いというのではなく、人間らしくていいなって微笑ましく見守ってるようでした。
農耕牧畜で自給自足?
ネットの情報だとそのように書かれてることが多いですが、実際は農業や牧畜業以外で生計を立てているアーミッシュも多くいます。
人口増えてるし、農地も限られますし。
自分でビジネスを立ち上げる人もいれば、
イングリッシュの会社に勤める人もいるそう。
通勤手段が馬車なので、やはりあまり遠く離れた土地には勤めに出られません。
事業が成功してかなりお金持ちになっている人も多いみたい。
「アーミッシュはお金をもうけるのは好きだから」と言ってました。
基本勤勉をよしとする教えだからかな。
なお、ビジネスの場、オフィスではインターネットやパソコン、電話を使うのはOKだそうで。
ホームページを用意するアーミッシュ経営の会社も増えてきてるって言ってました。
医療は?
基本的には、アーミッシュに伝わる伝統的な薬で治療をするものだそうですが
高度な医療が必要とされる病気の場合は、イングリッシュの病院を使うこともあるのだとか。
ただアーミッシュは保険を使ってはいけない決まりがあります。
すべてイングリッシュと同じ税金を国や州に納めていますが
ソーシャルセキュリティー税だけ払わないのはそれが理由で。
では、この医療費の高い国で無保険でどうするのか?というと
教会が実質保険のような機能を担っているんだって。
アーミッシュの人たちは教会に保険料的にお金をおさめており
何かが起きたときはその教会がプールしたお金を使うとのことです。
アーミッシュにならない選択をする割合は
ドンさん曰く、
ラムスプリンガの後、アーミッシュになるかならないかを選択しますが、
アーミッシュになることを拒む若者は10%ほどなのだそうです。
そしてその後、「やっぱりアーミッシュになる」と考えを変える人が7%いるので
結果としてアーミッシュを離れるのは全体の3%ほどにしかならないのだそう。
なお、洗礼を拒み集落を離れたら勘当となるかといえばそうではなく、
洗礼を受ける前にコミュニティを離れイングリッシュと結婚した場合は、その後孫を連れて実家に帰省したりなど、交流は続けられる。
でも洗礼を受けた後に「やっぱりイングリッシュと結婚するわ」とコミュニティを離れる場合は、勘当・絶縁コースになるようです。
あと、イングリッシュの女性がアーミッシュの男性と結婚する際は、数か月ビショップによる研修を受ければ、洗礼を受けて仲間になれるけど、
イングリッシュの男性がアーミッシュの女性と結婚してアーミッシュになりたい、というケースだと、その研修というか見極め期間が5年になるらしい。
そしてそのケースはドンさんも一度も聞いたことがないそうです。
所感
他にもたくさん面白い話があったのですが、キリがないのでこの辺で…。
このツアーに参加する前は、
「生まれたときからアーミッシュの教育のみ受けて育ち、
外界から隔絶され娯楽を否定され
アーミッシュの生き方をするようレールを敷かれるのだとしたら
私はイヤかもな…自由がないよな…」
そんなふうに考えていました。
(心に進撃の巨人のエレンがいるタイプなので)
でも、イングリッシュとも交流がある“よき隣人”であるということ、
何が何でも現代技術を拒んでいるわけでもないこと、
たった3%しかコミュニティを離脱しないということ、
そして何よりドンさんの友人のアーミッシュ家族のエピソードを聞いたことで
もしお父さんとお母さんがちゃんといい人で、
愛情をもって育ててくれて
生活が貧しくなく満たされているならば
コミュニティにアーミッシュ仲間の幼馴染もたくさんいて、
将来も仕事に就けないという不安があまり生じず、
神を信じ、人が支え合って生きる大切さを信じながら暮らすのは
ひとつの幸せな生き方なのではないか…
そんなふうに感じました。
一方で触れないといけないと思うのは、
数年前にアーミッシュ社会において深刻な虐待が行われている、と告発した記事の存在です。
読んでいて胸が痛くなる内容です。
おそらくこのような事実はあるのだと思いますし
苦しむ子どもは救われてほしい、そのための手立てがとられてほしいと心から願います。
でも、だからといって
「やっぱり危険なカルトだ」と決めつけて差別したり
アーミッシュの生き方は不自然だと一方的に断じて、
彼らが生きたいように生きる自由を侵害するのは違うとも思うのですよね…。
両方の側面を知っておいて、判断・断定はせず、あるがままをまずは受け止めたいなと
そういう気持ちでこれを書いています。
あ、あと、アーミッシュの方、写真はよくないものと考えているそうです。
なので今回、人物にカメラを向けるのは後ろ姿であっても避けました。
おまけ
アーミッシュが乗る自転車。サドルとペダルがありません。ストイック。
あまり遠くに行けるのはよくないって考えなんだろうな。
地面に丸く見えるのはいわゆる肥溜め、肥料として利用するそう。
ジビエ料理の店に食肉として売られるため、アーミッシュの人に育てられている鹿ちゃんたち。
隔週日曜は教会の集まり。
教会といっても特定の建物はなく、それぞれのおうちで持ち回りで開催するんだって。
広い部屋が必要ですね。
駐車場ならぬ、馬置き場?
あとこちらの施設、アーミッシュの家で飼われるような家畜が見られます、たのしい。
ロバと馬のあいの子、ミュール(日本語ではラバ)は、めちゃくちゃ大きい。
馬より大きいです。
なんかサイズ感バグって見えます。ぜひ実物見てほしい。
普通の馬もいるし、
これなに?七面鳥?ほかに鶏もいました。