著者の入江杏さんは、
世田谷一家殺人事件の被害者遺族です。
相談員の私との構図だけ見れば、
「加害者側の支援者」
と、
「被害者側の支援者」
です。
私は、加害者と被害者という対極にあっても、
入江さんの活動を身近なものと感じています。
事件は、あらゆるラベルを付けをされ報道されます。
それに翻弄される報道被害をたくさん見てきました。
報道被害によって人の抱く悲しみと混乱の感情は、
被害者も加害者も分け隔てなく抱くものです。
入江さんは、多くの報道被害を受けました。
押しかけるマスコミ。
近隣者による推測や風評。
誤報や事実と確認されていない事を決めつけた報道。
事実を故意に編集し誇張した報道。
それらが被報道者の生活基盤、人間関係、名誉などを破壊します。
この本は、報道被害に苦しんでいる獄中者の家族にもぜひ読んでいただきたいです。
また、刑事施設の収容者にオススメします。
入江さんは、悲しみについて思いを馳せる会ミシュカの森を10年以上続けています。
そこには、喪失の悲しみを抱いた方がたくさん訪れます。
事件後から現在に至るまで学びを重ね、
事件事故、
自死遺族や終末期ケア、
被災者支援など、
多方面の社会活動に携わる中で、
「当事者だけを囲い込んで
悲しみを背負わせてはならない。」
と感じるようになったそうです。
当事者以外の人が、
「あの人たちの悲しみは自分には関係ない」
という距離を作ってしまわないためにも、
或いはどう関わっていいかわからず、
罪悪感を抱きつつ、見ないふりをしてしまわないためにも、
この本は、悲しみという感情にどう向き合うかの教科書です。
心に響きます。
収容者の心を動かす一冊になればと思い、紹介します。
刑務所の職員はまず、受刑者に対し、
「事件を反省しろ。二度と同じことをするな。被害者の気持ちを思え。」
と、強要します。
刑法28条には、
「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは~仮に釈放することができる。」
とあります。
この「改悛の状」を穿ってみれば、
「仮釈放が欲しければ、『反省している』と言うしかない。」
のです。
選択肢を持てないので、「強要」です。
ある無期囚は手紙で私に
「被害者は、私を殺したいほど憎んでいるだけ。和解はできない。」
と告げました。
これでは、自分の感情に向き合うことができません。
たしかに、被害者と加害者の和解はとても難しいです。
それぞれの個人が思う気持ちがあり、相容れない感情もあります。
それでも、共通する悲しみがあります。
この本は、その悲しみの受け容れ方に気づかせてくれる本です。
ここ最近、「寄り添う。」という言葉が独り歩きし、
綺麗で安く見られがちな言葉にも思います。
それに比べたら入江さんの文体は正直で読みやすいのです。
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