『日本企業はなぜ「強味」を捨てるのか』

タイトルに惹かれて読みました。

 

マインドフルネス、ティール組織、心理的安全性、

エンゲージメントなど、アメリカから持ち込まれる

人を活かす経営手法は、もともと日本企業にあった強みじゃないか。

 

仕事柄そう思うことは多かったのですが、

高度成長期はもちろんバブル経済も知らない

平成生まれの経営学者である著者・岩尾俊兵さんが

徹底的に調べ上げて、喝破した本。

 

失われた30年に自信を失い続けてきた日本。

岩尾さんは

「日本は経営の実践で負けたのではない。

 コンセプト化に負けたのだ」と言います。

 

確かに。

 

多くの企業の人材育成支援を手掛けるなかで

よく聞かれるフレーズが

「うちの会社は独特なので」

「うちの会社の個別事情が多い」。

 

ただ、16年にわたり、

400社以上を支援してきて思うのは、

そう考える企業ほど他企業と似た構造問題を

抱えているということ。

 

また、やはり世界共通語ではない日本語

という曖昧なニュアンスを重んじる言語が

経営コンセプトに簡略化し汎用化することの

壁になっている可能性が高いということ。

 

白黒をはっきりつけやすく、

簡略化しやすい言語である英語と対照的ですね。

 

高度成長期は、アメリカが作ったコンセプトを模倣して

得意な経営実践すればよかったため猛烈な追い上げができた。

 

しかし世界の頂点に近づくと

自信の経営実践をコンセプトにする必要が出てきて、

これは不得意なので失速してしまった

というのが日本の切なさなのかもしれません。

 

ただコンセプト化は簡略化にも通じ、

人類の歴史をさかのぼると、

簡略化には格差の助長や対立を煽るリスクがあることも

踏まえておかなければならないとも思います。

 

■人類史上一瞬で寿命が2倍になり、

所得が14倍になった世界の先は?『格差の起源』

 

 

 

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・BCG創業メンバーで東京オフィス初代社長

 ジェームズ・アベグレン

 

・BCG初のフレームワークとして

 喧伝される「タイムベース競争」にいたっては、

 明確にトヨタ生産方式からの応用

 

・経営技術とは

 「経営に関する手法そのものと、

 その手法を生み出すための実践的な思考フレームワーク」

 

・両利きの経営のコンセプトに対して、

 少なくとも部分的には、日本のカイゼンに関する

 研究が影響してきた

 

・アジャイル開発、リーン・シンキング、

 リーン・スタートアップ、フロントローディング、

 ボトルネック。日本の経営実践が源流にありつつも

 メイド・イン・アメリカのコンセプトとして

 日本の受け入れられているものは多々ある

 

・日本の経営実践、経営技術を基にした

 メイド・イン・ジャパンのコンセプトが、

 いつの間にかメイド・イン・アメリカになってしまい、

 再度日本に持ち込まれる

 

・経営技術のコンセプト化が得意な諸外国

 

・コンセプト化・パッケージ化が弱かったのは

 日本企業だけではなく、筆者も含めた研究者や、

 日本政府も同様である

 

・両利きの経営

 既存の技術や知識を活用しつつ、

 新しい技術や知識を探索したり、

 新しいビジネスを模索したりするというのは

 日本企業の得意技ではないだろうか

 

・イノベーションを外から内に流入させる方向のオープンと、

 反対に内から外に流出させるオープンとがある

 

・QCサークルはユーザー・イノベーションなのである

 

・リーン・スタートアップというのは、

 とりあえず作ってみて(Build)、市場の反応を見て(Measure)、

 そして学習(Learn)するというプロセスを高速で回していく

 起業方法

 

・「リーン・スタートアップの元はトヨタ生産方式だよ」

 

・トヨタ生産方式の究極の形はグーグルなのである

 

・ティール組織の流行は、日本的経営の三種の神器を

 知らない者による日本的経営への憧憬か、

 あるいは日本的経営を失いつつある日本企業に

 属する者の解雇主義に近いかもしれない

 

・現在の「アジャイル開発」に一橋大学・野中郁次郎名誉教授の

 「スクラム開発」が内容面で影響を与えた点は間違いない

 

・アメリカのコンセプト化の上手さと、世界中から

 優れた経営技術をどん欲に取り入れる

 健全なハングリー精神は、日本も見習うべきである

 

・日本は経営実践や経営技術では健闘しているものの、

 コンセプではほとんどボロ負けである

 

・日本企業は「知識創造の経営」を可能にする

 経営技術を確立してきた

 

 ホダの「ワイガヤ」や「山ごもり」

 

・デンソーの技術者たちは、この二次元バーコードに

 クイック・レスポンスというコンセプトから

 頭文字をとって「QR」コードという名前をつけた

 

 JISとISOに登録し、QRコードを一般公開

 (パブリック・ドメイン化)

 

・経営者は現場の怠慢を責め、現場は経営者の無理解を愚痴る

 

・グローバル化とは、ヒト・モノ・カネ・情報の

 異動コストが限りなくゼロに近づくこと

 

・もっとも単純な答えはコンセプト化で負けたということだろう

 

 日本はもともと文脈依存度の高いコミュニケーションを

 強みとしてきた。だからこそ、多民族・多国籍の人に

 普遍的に伝わるようなコミュニケーションの方法、すなわち

 抽象度と論理モデル化の訓練の場が少なかったといえる

 

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すべては、日本の上司を元気にするために。