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Odyssey's bible (作・紅さん)
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Odyssey's bible 第四節
第五節 狩る者、狩られる者
カツカツ…と、美しい磨かれた大理石の廊下を、足早に女性が歩いて行く。
そして、廊下の一番奥の部屋の扉をノックする。
…コンコン
「入れ。」
まるで来ることがわかっていた様に、男声が返ってくる。
「…失礼します。」
「…例の…件だな?」
「はい。………確りと確認しました。本人です。」
男は大きい椅子に深々と、どっしりと座っている。
そして、その報告を聞くと、机の上の書類から女性に目を向ける。
「…様子はどうだ?」
「我々が緊急にかけた呪は不完全ではありますが、効果はあるようです。まだ能力も戻っていない様です。」
「…そうか。」
「早急に暗殺要員を選出し、派遣します。」
「まだ呪が効いている内に始末するんだ。いいな?」
「はっ。」
「それと―」
「はい?何でしょう。」
足早に去ろうとした女性を男が呼び止める。
「今回のこの件、全てお前が指揮を執れ。今まで就いていた任務は他の者を回す。それと、この件についての情報は何かあったら直ぐに私に情報をまわせ。」
「はっ。」
「…健闘を祈っているぞ。」
そう言うと、女性はお辞儀をして、部屋から出ていく。
「………いよいよ、か…」
日之本。
大陸の南の比較的小さい島国である。
蒼穹を写した様な美しい海に、野生の香りが漂うマングローブ。
また、古来から独自の文化を築きあげており、この地でしか手に入らない物を求め、様々なジャンルの人間が様々な目的でこの地を訪れる、是非一度行ってみたい国だ。
無論、アゼルは観光のつもりで来たのだが…
アゼルは、ある飲食店で食事をしていた。
初めて口にする筈の寿司だったが、味に覚えがある。
以前の俺も、ここに来ていたのか…と、残念に思いながら最後の玉子を口にしようとした瞬間、
カンカンカンカンカン!!!
と、警鐘が町の賑わいを吹き飛ばし、鳴り響く。
その音に反応し、他の客も外の様子を確認する。
すると、一人の青年が息を切らして店に駆け込み、
「奴らだ!百鬼夜行が来たぞ!皆逃げるんだ!」
そう言うと、青年は大急ぎで走り去った。
彼の発言で、店内に響動めきが走る。
「百鬼夜行?なんであいつらが!?」
「嘘だろ!?自警団は!?」
「とっ、とにかく逃げるぞ!」
他の客達の会話が聞こえてくる。
アゼルは、先程の玉子をちゃんと食べてから、カウンターにお代を置き、外へ出た。
(兎に角、逃げ遅れた人達を助けるか。自警団…とか、言っていたな。それと協力すれば時間は稼げる。皆は港に逃げているようだしな。)
ところが、走り出したアゼルは、運悪く角で盗賊と出会してしまう。
(もうこんなところまで来ているのか…!)
だが相手は二人。この数なら問題は無い。
「おい、向こうに獲物がいるぞ。」
「お、よく見付けたな。よし、やっちまうか!」
如何にも下っ端な奴らだ。
アゼルは鞘から長剣を抜く。
相手もこちらのやる気を察したのか、剣を抜いて襲い掛って来た。
アゼルは盗賊の右袈裟斬りが振り下ろされる前に、擦れ違い様に斬る。
「ぐわぁぁ!!」
鮮血が散り、盗賊は倒れる。
「ちっ、クソ野郎がっ!」
もう一人がアゼルに駆け寄り、素早く、連続で斬り掛って来るが、アゼルは全てを的確に防ぎ、その隙を突く。
ズシャ!!
その一人も倒れ、剣の血を払い、鞘に収めようとした。
…がその時!
ズゴォォ!!
突然、頭上から刃が襲い掛るが、何とか横に回転して躱した。
「今のを、避けるのか。完璧な奇襲だったんだけどな…。こりゃ面白そうだ。」
そこには一人の、特異な形をした剣を持つ男がいた。
「貴様…!?」
「…おぅ?お前は何者だ?自警団じゃ無いのか?」
「………ボランティア。…とでも言っておこう。」
「ふん。………まぁ、そこの二人の仇はとらせて貰うぜ。」
男は再び剣を構える。
「………さぁ、お前の実力を見せて貰うぞ!!!」
カツカツ…と、美しい磨かれた大理石の廊下を、足早に女性が歩いて行く。
そして、廊下の一番奥の部屋の扉をノックする。
…コンコン
「入れ。」
まるで来ることがわかっていた様に、男声が返ってくる。
「…失礼します。」
「…例の…件だな?」
「はい。………確りと確認しました。本人です。」
男は大きい椅子に深々と、どっしりと座っている。
そして、その報告を聞くと、机の上の書類から女性に目を向ける。
「…様子はどうだ?」
「我々が緊急にかけた呪は不完全ではありますが、効果はあるようです。まだ能力も戻っていない様です。」
「…そうか。」
「早急に暗殺要員を選出し、派遣します。」
「まだ呪が効いている内に始末するんだ。いいな?」
「はっ。」
「それと―」
「はい?何でしょう。」
足早に去ろうとした女性を男が呼び止める。
「今回のこの件、全てお前が指揮を執れ。今まで就いていた任務は他の者を回す。それと、この件についての情報は何かあったら直ぐに私に情報をまわせ。」
「はっ。」
「…健闘を祈っているぞ。」
そう言うと、女性はお辞儀をして、部屋から出ていく。
「………いよいよ、か…」
日之本。
大陸の南の比較的小さい島国である。
蒼穹を写した様な美しい海に、野生の香りが漂うマングローブ。
また、古来から独自の文化を築きあげており、この地でしか手に入らない物を求め、様々なジャンルの人間が様々な目的でこの地を訪れる、是非一度行ってみたい国だ。
無論、アゼルは観光のつもりで来たのだが…
アゼルは、ある飲食店で食事をしていた。
初めて口にする筈の寿司だったが、味に覚えがある。
以前の俺も、ここに来ていたのか…と、残念に思いながら最後の玉子を口にしようとした瞬間、
カンカンカンカンカン!!!
と、警鐘が町の賑わいを吹き飛ばし、鳴り響く。
その音に反応し、他の客も外の様子を確認する。
すると、一人の青年が息を切らして店に駆け込み、
「奴らだ!百鬼夜行が来たぞ!皆逃げるんだ!」
そう言うと、青年は大急ぎで走り去った。
彼の発言で、店内に響動めきが走る。
「百鬼夜行?なんであいつらが!?」
「嘘だろ!?自警団は!?」
「とっ、とにかく逃げるぞ!」
他の客達の会話が聞こえてくる。
アゼルは、先程の玉子をちゃんと食べてから、カウンターにお代を置き、外へ出た。
(兎に角、逃げ遅れた人達を助けるか。自警団…とか、言っていたな。それと協力すれば時間は稼げる。皆は港に逃げているようだしな。)
ところが、走り出したアゼルは、運悪く角で盗賊と出会してしまう。
(もうこんなところまで来ているのか…!)
だが相手は二人。この数なら問題は無い。
「おい、向こうに獲物がいるぞ。」
「お、よく見付けたな。よし、やっちまうか!」
如何にも下っ端な奴らだ。
アゼルは鞘から長剣を抜く。
相手もこちらのやる気を察したのか、剣を抜いて襲い掛って来た。
アゼルは盗賊の右袈裟斬りが振り下ろされる前に、擦れ違い様に斬る。
「ぐわぁぁ!!」
鮮血が散り、盗賊は倒れる。
「ちっ、クソ野郎がっ!」
もう一人がアゼルに駆け寄り、素早く、連続で斬り掛って来るが、アゼルは全てを的確に防ぎ、その隙を突く。
ズシャ!!
その一人も倒れ、剣の血を払い、鞘に収めようとした。
…がその時!
ズゴォォ!!
突然、頭上から刃が襲い掛るが、何とか横に回転して躱した。
「今のを、避けるのか。完璧な奇襲だったんだけどな…。こりゃ面白そうだ。」
そこには一人の、特異な形をした剣を持つ男がいた。
「貴様…!?」
「…おぅ?お前は何者だ?自警団じゃ無いのか?」
「………ボランティア。…とでも言っておこう。」
「ふん。………まぁ、そこの二人の仇はとらせて貰うぜ。」
男は再び剣を構える。
「………さぁ、お前の実力を見せて貰うぞ!!!」
Odyssey's bible 第四節
第四節 伝説の叙事詩
強い日差しを恐れて、ゆっくりと瞼を開き、ベッドから降りる。
ルティは…チェックアウトしに行ったのだろうか。荷物が見当たらない。
さっさと支度をして、下に降りるか。
「あっ、アゼルさん。」
予想通り、ルティがいた。
「もうチェックアウトは済ませました。忘れ物は無いですか?」
相変わらず手際の良い娘だ。
「ああ、大丈夫だ。」
確認もせずに言う。
「では、行きましょうか。」
宿は大通りでも一際目立つ所にある。
その周りに様々な店が並んでおり、広場となっている。
「…さて、これからどうするんだ?」
広場の噴水のすぐ近く、落ち着いて話せそうな場所で尋ねる。
「…アゼルさんが手伝ってくれたおかげで、お金は用意できました。これから私はまた、やるべき事があるので…」
「………俺もやるべき事があるんだ。………記憶を取り戻したい。」
「………やっぱり。」
「……………ここでお別れだな。」
「………そうですね。また、いつか会えると良いですね。」
「じゃあ、その時まで、な。」
アゼルは、ルティより先に振り向き、歩き出す。
「短い間だが、世話になったな…」
…さて…、まずは買い物だな。
まずは宿のすぐ近くにある、 「武の博物館」 と、書かれている武具屋と思しい店に入る。
…にしても、多い。博物館の名も伊達ではない。
入口の両側からショーケースの列。それに伴い人の列。
刀剣、槍に戟、斧、弓、ボウガン、錫杖、双節棍や三節棍、九節鞭まである。
「えらい、マニアックな武器もあるな…。使う奴いるのか?と言うか何で俺は知っているんだ?」
とりあえず、手頃な長剣を一本、動きやすい脚絆と、薄いが頑丈な胸当てを購入し、武具屋を後にする。
「まぁ…、後はもう揃えてあるからな…。………さて、と。」
アゼルは、腰に提げたポーチから、巻かれた地図を取り出し、広げる。
アルバニア周辺地方の地図だ。
「………当ては無いからな……。適当に旅をすれば、その内、何か思い出してくるだろう。」
ならば目的地はすぐに決まる。
―――日之本国。「倭国」などとも呼ばれている、比較的小さな島国だ。
他国との交流が少なく、独特な文化を築いている。
王都から出ている飛行船を使えば港町にはすぐに着く。だが、急ぐ必要もなければ、お金を使う必要もない。第一、歩いても大した距離ではない。
と言うわけで、陸路で日之本を目指すことにした。
「ふぅ………。」
と、アゼルは軽いため息をつき、悠々とした足取りで歩き出す。
“Odyssey”の始まりである…。
強い日差しを恐れて、ゆっくりと瞼を開き、ベッドから降りる。
ルティは…チェックアウトしに行ったのだろうか。荷物が見当たらない。
さっさと支度をして、下に降りるか。
「あっ、アゼルさん。」
予想通り、ルティがいた。
「もうチェックアウトは済ませました。忘れ物は無いですか?」
相変わらず手際の良い娘だ。
「ああ、大丈夫だ。」
確認もせずに言う。
「では、行きましょうか。」
宿は大通りでも一際目立つ所にある。
その周りに様々な店が並んでおり、広場となっている。
「…さて、これからどうするんだ?」
広場の噴水のすぐ近く、落ち着いて話せそうな場所で尋ねる。
「…アゼルさんが手伝ってくれたおかげで、お金は用意できました。これから私はまた、やるべき事があるので…」
「………俺もやるべき事があるんだ。………記憶を取り戻したい。」
「………やっぱり。」
「……………ここでお別れだな。」
「………そうですね。また、いつか会えると良いですね。」
「じゃあ、その時まで、な。」
アゼルは、ルティより先に振り向き、歩き出す。
「短い間だが、世話になったな…」
…さて…、まずは買い物だな。
まずは宿のすぐ近くにある、 「武の博物館」 と、書かれている武具屋と思しい店に入る。
…にしても、多い。博物館の名も伊達ではない。
入口の両側からショーケースの列。それに伴い人の列。
刀剣、槍に戟、斧、弓、ボウガン、錫杖、双節棍や三節棍、九節鞭まである。
「えらい、マニアックな武器もあるな…。使う奴いるのか?と言うか何で俺は知っているんだ?」
とりあえず、手頃な長剣を一本、動きやすい脚絆と、薄いが頑丈な胸当てを購入し、武具屋を後にする。
「まぁ…、後はもう揃えてあるからな…。………さて、と。」
アゼルは、腰に提げたポーチから、巻かれた地図を取り出し、広げる。
アルバニア周辺地方の地図だ。
「………当ては無いからな……。適当に旅をすれば、その内、何か思い出してくるだろう。」
ならば目的地はすぐに決まる。
―――日之本国。「倭国」などとも呼ばれている、比較的小さな島国だ。
他国との交流が少なく、独特な文化を築いている。
王都から出ている飛行船を使えば港町にはすぐに着く。だが、急ぐ必要もなければ、お金を使う必要もない。第一、歩いても大した距離ではない。
と言うわけで、陸路で日之本を目指すことにした。
「ふぅ………。」
と、アゼルは軽いため息をつき、悠々とした足取りで歩き出す。
“Odyssey”の始まりである…。
Odyssey's bible 第一章 第三節
第三節 Identity
仕事を終えたアゼルとルティは、王都に戻り、報酬金を受け取った後、あの時の事について落ち着いて話をする為に、宿に戻る事にした。
…あれからまだそんなに時間は経っていない。
突然の体の異変。
あの感覚は一体…?
「お待たせしました。」
ルティが数冊の書物を持って部屋に入る。
「ギルドでは落ち着いて話ができませんし、この宿は明日の朝で、チェックアウトなんで。」
何処からか持って来た書物を机に置きながら言う。
「これは、私が研究していた事を記録したものなんですが…」
「あったあった、ここです。アゼルさんは、記憶喪失なんですよね?」
ルティは書物をこちらに向け、指しながら言う。
「記憶についての事項です。」
「まず、原因ですが、主に三種類あります。頭部外傷及び損傷、錯乱を伴うことが多いヒステリー、アルコール中毒、まぁ、後は老化等がありますがこれは無いでしょう。」
一枚ページを捲り、さらに説明する。
「で、記憶の回復についてですが…」
「ちょっと待ってくれ、俺がデーモンを一撃で倒した事と記憶に何の関係がある?」
アゼルがすかさず言う。
「まぁ、とりあえず私の話を聞いて下さい。憶測なんですけどね…」
「………」
アゼルは黙り、ルティは話を続ける。
「記憶の回復は、専門的な治療以外の場合、その人が好んだ音楽を聞かせる、写真を見せる、等、感覚的なものなんです。」
「で、私が思うに、実はアゼルさんは凄い武人で、命を賭けた戦いの中で記憶を取り戻して、デーモンを倒した…って事です。」
「…なるほど。」
アゼルは納得した様子で言う。
「…まぁ、所詮この程度で申し訳ないです。」
「いやいや、そんな事は無い。」
アゼルは申し訳無さそうに言うルティにすぐに返す。
「仕事を手伝ってくれたお礼になればいいんですが…」
「十分だ。それに、俺はこの宿を借りるんだ。貸し借りは無しだろう?」
「それもそうですね。」
話が一段落したところで、アゼルは寝室に行き、上着を脱ぐ。
「………はぁ………」
俺が凄腕の武人?
…確かに、あの漲る力、頭に流れ込む戦術、自分が思った以上に動く程の身体能力と技、戦っていた時間は短いが、それでも分かるくらいだ…。
「………はぁ………」
アゼルは少し強く溜め息をつき、ベッドに身を捨てて、瞼を閉じた。
仕事を終えたアゼルとルティは、王都に戻り、報酬金を受け取った後、あの時の事について落ち着いて話をする為に、宿に戻る事にした。
…あれからまだそんなに時間は経っていない。
突然の体の異変。
あの感覚は一体…?
「お待たせしました。」
ルティが数冊の書物を持って部屋に入る。
「ギルドでは落ち着いて話ができませんし、この宿は明日の朝で、チェックアウトなんで。」
何処からか持って来た書物を机に置きながら言う。
「これは、私が研究していた事を記録したものなんですが…」
「あったあった、ここです。アゼルさんは、記憶喪失なんですよね?」
ルティは書物をこちらに向け、指しながら言う。
「記憶についての事項です。」
「まず、原因ですが、主に三種類あります。頭部外傷及び損傷、錯乱を伴うことが多いヒステリー、アルコール中毒、まぁ、後は老化等がありますがこれは無いでしょう。」
一枚ページを捲り、さらに説明する。
「で、記憶の回復についてですが…」
「ちょっと待ってくれ、俺がデーモンを一撃で倒した事と記憶に何の関係がある?」
アゼルがすかさず言う。
「まぁ、とりあえず私の話を聞いて下さい。憶測なんですけどね…」
「………」
アゼルは黙り、ルティは話を続ける。
「記憶の回復は、専門的な治療以外の場合、その人が好んだ音楽を聞かせる、写真を見せる、等、感覚的なものなんです。」
「で、私が思うに、実はアゼルさんは凄い武人で、命を賭けた戦いの中で記憶を取り戻して、デーモンを倒した…って事です。」
「…なるほど。」
アゼルは納得した様子で言う。
「…まぁ、所詮この程度で申し訳ないです。」
「いやいや、そんな事は無い。」
アゼルは申し訳無さそうに言うルティにすぐに返す。
「仕事を手伝ってくれたお礼になればいいんですが…」
「十分だ。それに、俺はこの宿を借りるんだ。貸し借りは無しだろう?」
「それもそうですね。」
話が一段落したところで、アゼルは寝室に行き、上着を脱ぐ。
「………はぁ………」
俺が凄腕の武人?
…確かに、あの漲る力、頭に流れ込む戦術、自分が思った以上に動く程の身体能力と技、戦っていた時間は短いが、それでも分かるくらいだ…。
「………はぁ………」
アゼルは少し強く溜め息をつき、ベッドに身を捨てて、瞼を閉じた。
Odyssey's bible 第一章 第二節
第二節 発端
…王都の郊外、先に説明したように、今のここに昔の姿はない。
ここには魔物の姿が確認されているが、殆どの個体が危険性のあまり高くないもので、ある程度の腕があれば比較的楽に倒せる。
だが…。
ルティ「…問題はここです。」
ルティが地図を指して言う。
ルティ「ここには、昔教会だった廃墟があって、そこを住処にしている魔物がいるんです。
で、今回のターゲットがその魔物なんですが…。」
アゼル「…何かあるのか?」
アゼルが聞く。
ルティ「私一人だと無理な理由がこれなんです。」
ルティは真面目な顔をして言う。
ルティ「そこにいる魔物は、俗にデーモンと言われる大型の悪魔の類です。相手が一体なら問題無いんですが…。」
アゼル「…そいつが複数いるのか?」
アゼルも真面目な顔をして聞く。
ルティ「そうです。相手はヴァイオレントデーモン2体。」
ルティ「作戦として、2体同時は無理です。そこでアゼルさんは、もう一体の相手をして下さい。私は廃墟の外におびき寄せるんで、アゼルさんは廃墟の中に止める感じでお願いします。で、私が片付き次第、もう一方を始末します。」
アゼル「廃墟の中、か…。確かに、廃墟の方が体の大きい奴は動きにくいしな。」
アゼルは手を拱きながら、納得した様子で言う。
ルティ「…さて、じゃあ廃墟に着いたら奴らを確認次第、作戦に移りましょう。」
アゼル「わかった。」
──廃墟への道のりは遠くなく、10分で着く程度だ。
道中、他の魔物とも運良く出会わず、廃教会が見えて来た。
廃教会は意外と大きく、中も少し入り組んでいそうだ。
アゼル「…しかし皮肉なものだな…。」
アゼルが唐突に口を開く。
アゼル「…教会が魔物の住処になろうとはな…。」
アゼルは皮肉を込めて言う。
ルティ「…そうですね…。」
──静かな会話は風に流され、閑散とした空気が漂う。
比喩するなら、嵐の前の静けさ が最も適しているだろう。
そうこうしている内に、廃教会はもう目前だ。
ルティ「…多分、一体は中庭にいると思います。私は外からその一体の相手をしますが、アゼルさんは廃墟の中を探索、敵を見付けたら…」
アゼル「外に出さなければいいんだな?」
割り込んでアゼルが言う。
ルティ「そうです。なるべくこっちも早く決着をつけるんで。」
ルティは、軽い準備運動の様な動きをしながら言う。
アゼル「わかった。」
ルティ「……緊張しないんですか?」
とても不思議そうな声でアゼルに聞く。
アゼル「まぁ、…何故か、な…。なんだか慣れている様な感じだ。」
ルティ「………デーモンと戦うのに緊張しないなんて…、かなりの手練か精神的にきちゃってる人くらいですよ。」
アゼル「…悪かったな。精神的にきちゃってて。」
アゼルは不満げに言う。
アゼル「それならそっちはどうなんだ?」
すかさずアゼルが問う。
ルティ「まぁ、私は…、自分で言うのもなんですが、前者、ですかね。」
ルティは言う。
アゼル「まぁ、そのくらいじゃないと、デーモンと2連戦は出来ないだろうな。」
アゼルはまた、手を拱きながら言う。
ルティ「…さて!そろそろ行きましょうか!」
そう言うと、ルティは勢いよく駆け出した。
アゼル「…よし!」
アゼルは、それに負けないように素早く廃墟内に侵入する。
廃墟の中は、思った通り意外と広く、幾つかの部屋に別れていて、2階や地下倉庫もある。
アゼル「…………」
アゼルは、刀身80cmほどの長剣を構えながら、廃墟内を進んで行く。
──ドオォォォン!!!
アゼル「!!」
大きな爆音が響く。
アゼル「……何だ?今のは………。まさか、あいつが─」
そう思った瞬間。
ドッ…、ドッ…、
重い足音がする。
アゼル「…今の爆音で目が覚めたってとこか…。」
ちょうど廊下が二手に分かれているところで、デーモンと出くわしてしまった。
背中には退化したのだろう、小さな翼、全身は体毛に覆われているて、頭には2本の角、細い尻尾、そして如何にも鋭そうな牙と爪。体長は2mと少しある。
「……グオオオオオ!!」
かなり不機嫌のようだ。
アゼル「くっ、まさか起きているとなると…。」
「グオォォォ!!」
言うまでも無く、そんな事はお構いなしに、デーモンは爪で襲って来る。
ギィン!!
アゼルは何とかデーモンの攻撃を防いだが、凄まじい力でもう剣は刃こぼれしてしまっている。
アゼル(くそ、たった一撃で…)
間髪いれずにデーモンが攻撃を仕掛ける。
ガッ!!
アゼル「ぐおっ!!」
一応剣で防いだが、まるごと吹き飛ばされる。
ドサッ!!
アゼル「くっ…」
「ガアァァ!!」
体を起こす前にはもう、デーモンが迫って来ている。
ドガァッ!!
デーモンの体当たりをまともに食らい、吹き飛ばされ、アゼルは壁に叩き付けられる。
アゼル「くっ…、……何故無理に戦おうとしているんだ?…俺は…。」
ズキズキと頭が痛む。
それと同時に、何かが頭に流れ込む感じがする…。
…何だ?この感じは…。
ふらふらと立ち上がるアゼルに、デーモンは再び襲いかかる。
ズシャッ!!
ゴトッ…
静かに、デーモンの首だけが落ちる。
アゼル「…何が…あったんだ…?」
アゼル「…俺は一体どうしたって言うんだ……?」
アゼル「…! ルティの所へ行かなければ…。」
アゼルはすぐさま中庭へ走る。
ガチャン!!
鉄製の薄い扉を蹴り開けると、ルティとデーモンが戦っている。
ルティ「──燃え尽きよ!ブラスティックヒート!!」
ズドォォォン!!!
デーモンは空間から吹き出た熱波により、一瞬で灰燼と化してしまった。
アゼル「…さっきの爆音はこれか…。…と言うか、魔術士だったんだな。」
アゼルはルティに近付きながら言う。
ルティ「アゼルさん!?…デーモンは?」
驚いた様子で聞くルティ。
アゼル「……倒したぞ。」
ルティ「…そんな…。魔術ならまだしも、剣一本で倒すなんて…。」
驚きを隠せないルティ。
アゼル「…自分でも信じられんさ。突然、頭が痛んでな、体が動く様になったんだ…。おまけに体の回復も何故か早い。」
まだ疑っているルティに、その時の状況を話す。
ルティ「………ま、まぁ、とりあえずこれで仕事は終了ですね、帰りましょうか。話はそれからしましょう。」
冷静になったルティは、手早く準備を整え、アゼルとルティは町に戻る事にした。
激しい戦闘があっても、廃墟を覆う風は静かに全てを流す。
まるで戦いがあった事を消す様に。
…王都の郊外、先に説明したように、今のここに昔の姿はない。
ここには魔物の姿が確認されているが、殆どの個体が危険性のあまり高くないもので、ある程度の腕があれば比較的楽に倒せる。
だが…。
ルティ「…問題はここです。」
ルティが地図を指して言う。
ルティ「ここには、昔教会だった廃墟があって、そこを住処にしている魔物がいるんです。
で、今回のターゲットがその魔物なんですが…。」
アゼル「…何かあるのか?」
アゼルが聞く。
ルティ「私一人だと無理な理由がこれなんです。」
ルティは真面目な顔をして言う。
ルティ「そこにいる魔物は、俗にデーモンと言われる大型の悪魔の類です。相手が一体なら問題無いんですが…。」
アゼル「…そいつが複数いるのか?」
アゼルも真面目な顔をして聞く。
ルティ「そうです。相手はヴァイオレントデーモン2体。」
ルティ「作戦として、2体同時は無理です。そこでアゼルさんは、もう一体の相手をして下さい。私は廃墟の外におびき寄せるんで、アゼルさんは廃墟の中に止める感じでお願いします。で、私が片付き次第、もう一方を始末します。」
アゼル「廃墟の中、か…。確かに、廃墟の方が体の大きい奴は動きにくいしな。」
アゼルは手を拱きながら、納得した様子で言う。
ルティ「…さて、じゃあ廃墟に着いたら奴らを確認次第、作戦に移りましょう。」
アゼル「わかった。」
──廃墟への道のりは遠くなく、10分で着く程度だ。
道中、他の魔物とも運良く出会わず、廃教会が見えて来た。
廃教会は意外と大きく、中も少し入り組んでいそうだ。
アゼル「…しかし皮肉なものだな…。」
アゼルが唐突に口を開く。
アゼル「…教会が魔物の住処になろうとはな…。」
アゼルは皮肉を込めて言う。
ルティ「…そうですね…。」
──静かな会話は風に流され、閑散とした空気が漂う。
比喩するなら、嵐の前の静けさ が最も適しているだろう。
そうこうしている内に、廃教会はもう目前だ。
ルティ「…多分、一体は中庭にいると思います。私は外からその一体の相手をしますが、アゼルさんは廃墟の中を探索、敵を見付けたら…」
アゼル「外に出さなければいいんだな?」
割り込んでアゼルが言う。
ルティ「そうです。なるべくこっちも早く決着をつけるんで。」
ルティは、軽い準備運動の様な動きをしながら言う。
アゼル「わかった。」
ルティ「……緊張しないんですか?」
とても不思議そうな声でアゼルに聞く。
アゼル「まぁ、…何故か、な…。なんだか慣れている様な感じだ。」
ルティ「………デーモンと戦うのに緊張しないなんて…、かなりの手練か精神的にきちゃってる人くらいですよ。」
アゼル「…悪かったな。精神的にきちゃってて。」
アゼルは不満げに言う。
アゼル「それならそっちはどうなんだ?」
すかさずアゼルが問う。
ルティ「まぁ、私は…、自分で言うのもなんですが、前者、ですかね。」
ルティは言う。
アゼル「まぁ、そのくらいじゃないと、デーモンと2連戦は出来ないだろうな。」
アゼルはまた、手を拱きながら言う。
ルティ「…さて!そろそろ行きましょうか!」
そう言うと、ルティは勢いよく駆け出した。
アゼル「…よし!」
アゼルは、それに負けないように素早く廃墟内に侵入する。
廃墟の中は、思った通り意外と広く、幾つかの部屋に別れていて、2階や地下倉庫もある。
アゼル「…………」
アゼルは、刀身80cmほどの長剣を構えながら、廃墟内を進んで行く。
──ドオォォォン!!!
アゼル「!!」
大きな爆音が響く。
アゼル「……何だ?今のは………。まさか、あいつが─」
そう思った瞬間。
ドッ…、ドッ…、
重い足音がする。
アゼル「…今の爆音で目が覚めたってとこか…。」
ちょうど廊下が二手に分かれているところで、デーモンと出くわしてしまった。
背中には退化したのだろう、小さな翼、全身は体毛に覆われているて、頭には2本の角、細い尻尾、そして如何にも鋭そうな牙と爪。体長は2mと少しある。
「……グオオオオオ!!」
かなり不機嫌のようだ。
アゼル「くっ、まさか起きているとなると…。」
「グオォォォ!!」
言うまでも無く、そんな事はお構いなしに、デーモンは爪で襲って来る。
ギィン!!
アゼルは何とかデーモンの攻撃を防いだが、凄まじい力でもう剣は刃こぼれしてしまっている。
アゼル(くそ、たった一撃で…)
間髪いれずにデーモンが攻撃を仕掛ける。
ガッ!!
アゼル「ぐおっ!!」
一応剣で防いだが、まるごと吹き飛ばされる。
ドサッ!!
アゼル「くっ…」
「ガアァァ!!」
体を起こす前にはもう、デーモンが迫って来ている。
ドガァッ!!
デーモンの体当たりをまともに食らい、吹き飛ばされ、アゼルは壁に叩き付けられる。
アゼル「くっ…、……何故無理に戦おうとしているんだ?…俺は…。」
ズキズキと頭が痛む。
それと同時に、何かが頭に流れ込む感じがする…。
…何だ?この感じは…。
ふらふらと立ち上がるアゼルに、デーモンは再び襲いかかる。
ズシャッ!!
ゴトッ…
静かに、デーモンの首だけが落ちる。
アゼル「…何が…あったんだ…?」
アゼル「…俺は一体どうしたって言うんだ……?」
アゼル「…! ルティの所へ行かなければ…。」
アゼルはすぐさま中庭へ走る。
ガチャン!!
鉄製の薄い扉を蹴り開けると、ルティとデーモンが戦っている。
ルティ「──燃え尽きよ!ブラスティックヒート!!」
ズドォォォン!!!
デーモンは空間から吹き出た熱波により、一瞬で灰燼と化してしまった。
アゼル「…さっきの爆音はこれか…。…と言うか、魔術士だったんだな。」
アゼルはルティに近付きながら言う。
ルティ「アゼルさん!?…デーモンは?」
驚いた様子で聞くルティ。
アゼル「……倒したぞ。」
ルティ「…そんな…。魔術ならまだしも、剣一本で倒すなんて…。」
驚きを隠せないルティ。
アゼル「…自分でも信じられんさ。突然、頭が痛んでな、体が動く様になったんだ…。おまけに体の回復も何故か早い。」
まだ疑っているルティに、その時の状況を話す。
ルティ「………ま、まぁ、とりあえずこれで仕事は終了ですね、帰りましょうか。話はそれからしましょう。」
冷静になったルティは、手早く準備を整え、アゼルとルティは町に戻る事にした。
激しい戦闘があっても、廃墟を覆う風は静かに全てを流す。
まるで戦いがあった事を消す様に。
Odyassey's bible 第一章 第一節
第一章 ~始まる歩み~
第一節 一歩
王都の郊外はいつも寂れていた。
少し前までは、旅の商人達が自慢の珍品を売っていたというのに。
今では魔物の姿さえ幾つか確認できる。
新暦996年に起こった戦争。
まだ一年も経っていないのに戦況は停戦という形で泥沼化している。
この光景はその突然の戦争によって至った結果であろう。
恐らくそれはこの国だけではない筈…。
男は此処、アルバニア共和国の古めかしい建物の玄関に立っていた。
名はアゼル・アシュヴィン。
記憶喪失で王都の近郊で目覚めた。
自分に関する事を殆ど覚えておらず、この名も自分で考えた。
無論、金は一切持っていないので、なんとかして稼がないとまずいと思ったアゼルは、王都を彷徨って此処に辿り着いた。
木でできた軽い扉を押し開けると、以外ときれいで広いロビーで、多くの旅人や冒険家が飲み食いしたり、話したりしている。
アゼルはその雰囲気にとても金を稼げる要素を感じなかった。
確かに町の人から訊いたんだが。
と、戸惑っているともう一人、困った様子の女の娘を見つける。
カウンターの人と話している様だが…。
少し気になって近付くと、以外にも彼女は自分に気付き、声を掛けて来た。
「あっ、あの、突然ですいません。仕事を受注してますか?」
紅い短髪で軽装の鎧の上に薄紫のローブを着て、腰には剣を携えていて、身長はアゼルよりも20cmくらい低く、少し幼なさが醸し出されている。
アゼルは何と返せばいいか困った。
アゼル「…あー、悪いんだが、俺はここ初めてなんだ。」
と、とりあえず言う。
「あっ、そうなんですか…。」
女の娘は再び困った表情で顎に手を添え、考え込むが、はっ、とすぐに女の娘が口を開く。
「えっ、初めて?」
アゼル「あっ、ああ。」
「でも、ここにいるって事は、仕事をする気があるんですよね?」
希望に満ちた目でアゼルを見つめる。
アゼル「ちょ、ちょっと待ってくれ、先にここが何なのか教えてくれないか?」
慌ててアゼルは一番訊きたい事を訊く。
「…聞いたことくらいないですか?ギルド って。」
アゼル「ギルド?」
「そう、様々な人が仕事を依頼してくる施設で、それを私達、旅人や冒険家がその依頼をこなしていくんです。因みに余談だけど一応一般の人も利用できますよ。」
アゼル「ほう…。」
「…で、私は今仕事を受注しようとしたんですけど…」
アゼル「…ですけど?」
「いまいち自信が無くって…失敗する訳には…」
女の娘は少し哀しそうな顔をする。
アゼル「…まぁ、誰でもいいなら協力するが。」
間髪入れずに女の娘が反応する。
「本当ですか!?助かったぁ…」
アゼル「と言うか見ず知らずの人間にそんな期待していいのか?」
「いえ…、まぁ、一人よりはマシなんで…それに、あなたなんとなく強そうですし。」
アゼル「…そんなんでいいのか…?」
「まぁ、とりあえず受注して来ますね。」
すると女の娘はまたカウンターの人と話始め、契約を終わらせる。
アゼル「ところで、君の名前は?」
「そういえば忘れてましたね。私はルティシア・ハーツです。長いんでルティ、でお願いします。」
アゼル「わかった。ルティ、よろしくな。」
ルティ「こちらこそ。」
アゼル「…して、仕事の内容は?」
それから仕事の説明、自己紹介などで時間は過ぎて行く。
そしてルティが手配した宿で一泊する事になる。
ルティ「出発は明朝4時。目的は魔物の討伐です。寝坊しないで下さいよ。」
アゼル「わかった…。」
…今思えば、まさか記憶喪失とは…。
記憶を失う前はどんな生活をしていたのだろうか…。
そんな事を考えながら、アゼルは瞼を閉じた。
第一節 一歩
王都の郊外はいつも寂れていた。
少し前までは、旅の商人達が自慢の珍品を売っていたというのに。
今では魔物の姿さえ幾つか確認できる。
新暦996年に起こった戦争。
まだ一年も経っていないのに戦況は停戦という形で泥沼化している。
この光景はその突然の戦争によって至った結果であろう。
恐らくそれはこの国だけではない筈…。
男は此処、アルバニア共和国の古めかしい建物の玄関に立っていた。
名はアゼル・アシュヴィン。
記憶喪失で王都の近郊で目覚めた。
自分に関する事を殆ど覚えておらず、この名も自分で考えた。
無論、金は一切持っていないので、なんとかして稼がないとまずいと思ったアゼルは、王都を彷徨って此処に辿り着いた。
木でできた軽い扉を押し開けると、以外ときれいで広いロビーで、多くの旅人や冒険家が飲み食いしたり、話したりしている。
アゼルはその雰囲気にとても金を稼げる要素を感じなかった。
確かに町の人から訊いたんだが。
と、戸惑っているともう一人、困った様子の女の娘を見つける。
カウンターの人と話している様だが…。
少し気になって近付くと、以外にも彼女は自分に気付き、声を掛けて来た。
「あっ、あの、突然ですいません。仕事を受注してますか?」
紅い短髪で軽装の鎧の上に薄紫のローブを着て、腰には剣を携えていて、身長はアゼルよりも20cmくらい低く、少し幼なさが醸し出されている。
アゼルは何と返せばいいか困った。
アゼル「…あー、悪いんだが、俺はここ初めてなんだ。」
と、とりあえず言う。
「あっ、そうなんですか…。」
女の娘は再び困った表情で顎に手を添え、考え込むが、はっ、とすぐに女の娘が口を開く。
「えっ、初めて?」
アゼル「あっ、ああ。」
「でも、ここにいるって事は、仕事をする気があるんですよね?」
希望に満ちた目でアゼルを見つめる。
アゼル「ちょ、ちょっと待ってくれ、先にここが何なのか教えてくれないか?」
慌ててアゼルは一番訊きたい事を訊く。
「…聞いたことくらいないですか?ギルド って。」
アゼル「ギルド?」
「そう、様々な人が仕事を依頼してくる施設で、それを私達、旅人や冒険家がその依頼をこなしていくんです。因みに余談だけど一応一般の人も利用できますよ。」
アゼル「ほう…。」
「…で、私は今仕事を受注しようとしたんですけど…」
アゼル「…ですけど?」
「いまいち自信が無くって…失敗する訳には…」
女の娘は少し哀しそうな顔をする。
アゼル「…まぁ、誰でもいいなら協力するが。」
間髪入れずに女の娘が反応する。
「本当ですか!?助かったぁ…」
アゼル「と言うか見ず知らずの人間にそんな期待していいのか?」
「いえ…、まぁ、一人よりはマシなんで…それに、あなたなんとなく強そうですし。」
アゼル「…そんなんでいいのか…?」
「まぁ、とりあえず受注して来ますね。」
すると女の娘はまたカウンターの人と話始め、契約を終わらせる。
アゼル「ところで、君の名前は?」
「そういえば忘れてましたね。私はルティシア・ハーツです。長いんでルティ、でお願いします。」
アゼル「わかった。ルティ、よろしくな。」
ルティ「こちらこそ。」
アゼル「…して、仕事の内容は?」
それから仕事の説明、自己紹介などで時間は過ぎて行く。
そしてルティが手配した宿で一泊する事になる。
ルティ「出発は明朝4時。目的は魔物の討伐です。寝坊しないで下さいよ。」
アゼル「わかった…。」
…今思えば、まさか記憶喪失とは…。
記憶を失う前はどんな生活をしていたのだろうか…。
そんな事を考えながら、アゼルは瞼を閉じた。
Odyassey's bible 序章
序章 ~プロローグ~
…古の時代より、神が創造したと言われる大陸エタニティ…
世界は大きく分けて、大陸北部から西部にかけて広大な国土を誇るカザニ帝国
大陸中央に位置するエリトリア連合国
エリトリア連合国の南東に位置するアルバニア共和国
大陸南西部に位置するオデッサ独立国
大陸東部に、雄大な自然が広がるアンカレジ連邦国家
北東に極寒の島国、ウエレン王国
そして真南の島国、日之本国
多少の小競り合いはあるものの、大事には発展せず、どの国も穏やかな日々を送っていた…。
だが、新暦993年、カザニ帝国の皇帝ガープが死去してから、カザニ帝国が不穏な動きを見せ始める。
そしてその三年後、戦争が勃発。それに伴い各地で魔物の動きが活発になる。
…新暦996年、平穏は破られる…
