Odyssey's bible 第四節 | 世界図書館

Odyssey's bible 第四節

第五節 狩る者、狩られる者


カツカツ…と、美しい磨かれた大理石の廊下を、足早に女性が歩いて行く。
そして、廊下の一番奥の部屋の扉をノックする。

…コンコン

「入れ。」

まるで来ることがわかっていた様に、男声が返ってくる。

「…失礼します。」

「…例の…件だな?」

「はい。………確りと確認しました。本人です。」

男は大きい椅子に深々と、どっしりと座っている。
 そして、その報告を聞くと、机の上の書類から女性に目を向ける。

「…様子はどうだ?」

「我々が緊急にかけた呪は不完全ではありますが、効果はあるようです。まだ能力も戻っていない様です。」

「…そうか。」

「早急に暗殺要員を選出し、派遣します。」

「まだ呪が効いている内に始末するんだ。いいな?」

「はっ。」

「それと―」

「はい?何でしょう。」

足早に去ろうとした女性を男が呼び止める。

「今回のこの件、全てお前が指揮を執れ。今まで就いていた任務は他の者を回す。それと、この件についての情報は何かあったら直ぐに私に情報をまわせ。」

「はっ。」

「…健闘を祈っているぞ。」

そう言うと、女性はお辞儀をして、部屋から出ていく。

「………いよいよ、か…」










日之本。
大陸の南の比較的小さい島国である。
 蒼穹を写した様な美しい海に、野生の香りが漂うマングローブ。
 また、古来から独自の文化を築きあげており、この地でしか手に入らない物を求め、様々なジャンルの人間が様々な目的でこの地を訪れる、是非一度行ってみたい国だ。

無論、アゼルは観光のつもりで来たのだが…








アゼルは、ある飲食店で食事をしていた。

初めて口にする筈の寿司だったが、味に覚えがある。
以前の俺も、ここに来ていたのか…と、残念に思いながら最後の玉子を口にしようとした瞬間、




カンカンカンカンカン!!!



と、警鐘が町の賑わいを吹き飛ばし、鳴り響く。
その音に反応し、他の客も外の様子を確認する。



 すると、一人の青年が息を切らして店に駆け込み、


「奴らだ!百鬼夜行が来たぞ!皆逃げるんだ!」


 そう言うと、青年は大急ぎで走り去った。


 彼の発言で、店内に響動めきが走る。



「百鬼夜行?なんであいつらが!?」

「嘘だろ!?自警団は!?」

「とっ、とにかく逃げるぞ!」

 他の客達の会話が聞こえてくる。
 アゼルは、先程の玉子をちゃんと食べてから、カウンターにお代を置き、外へ出た。



(兎に角、逃げ遅れた人達を助けるか。自警団…とか、言っていたな。それと協力すれば時間は稼げる。皆は港に逃げているようだしな。)



ところが、走り出したアゼルは、運悪く角で盗賊と出会してしまう。


(もうこんなところまで来ているのか…!)





だが相手は二人。この数なら問題は無い。


「おい、向こうに獲物がいるぞ。」
「お、よく見付けたな。よし、やっちまうか!」

如何にも下っ端な奴らだ。

アゼルは鞘から長剣を抜く。

 相手もこちらのやる気を察したのか、剣を抜いて襲い掛って来た。



アゼルは盗賊の右袈裟斬りが振り下ろされる前に、擦れ違い様に斬る。


「ぐわぁぁ!!」

鮮血が散り、盗賊は倒れる。


「ちっ、クソ野郎がっ!」

もう一人がアゼルに駆け寄り、素早く、連続で斬り掛って来るが、アゼルは全てを的確に防ぎ、その隙を突く。



ズシャ!!



その一人も倒れ、剣の血を払い、鞘に収めようとした。



 …がその時!








ズゴォォ!!




突然、頭上から刃が襲い掛るが、何とか横に回転して躱した。



「今のを、避けるのか。完璧な奇襲だったんだけどな…。こりゃ面白そうだ。」



そこには一人の、特異な形をした剣を持つ男がいた。



「貴様…!?」

「…おぅ?お前は何者だ?自警団じゃ無いのか?」

「………ボランティア。…とでも言っておこう。」

「ふん。………まぁ、そこの二人の仇はとらせて貰うぜ。」

男は再び剣を構える。



「………さぁ、お前の実力を見せて貰うぞ!!!」