「秋の七草より」…くず
甘い香りに誘われた先にはむらさき色の「クズ」の花が咲いています。
「クズ」はつる性で、濃い緑色の大きな葉で周りを埋め尽くしています。
葛もち、葛きり、葛湯など透明感のある葛の繊細なイメージとは違い、その姿に強さを感じます。
生命力の強さから「侵略的外来種ワースト100」の一つとなっています。
秋の七草である「クズ」
根を採取し乾燥させたものが生薬の「葛根」、
葛根を水にさらしながらデンプンを取り出したものが「葛粉」
葛根は漢方の葛根湯に配合され、風邪が流行する時期にはよく耳にします。
また「葛粉」は和菓子の材料として用いられ、日本の夏に涼しさを演出してくれます。
葛粉にお湯と砂糖を加えた、とろみのある「葛湯」は、風邪の時にいただきたい食べ物。
寒気や熱をとり、のどの渇きや下痢をとめるといわれています。
旺盛に伸びる蔓はリースやかごの材料に使用できます。
「うらみ草」の別名をもつ「クズ」、葉の裏が白いことが由縁ですが
物事は表裏一体、その基準は全てが自分の中にあるのです。
悪いことがあると、その対象物を責めがちですが、それはあなたの都合ではないでしょうか?
葛は自分の生命力をもって、私たちにそのことを教えてくれているのです。
「秋の七草より」…なでしこ
古来の日本人がもっとも愛惜した草花「なでしこ」
秋の七草ではありますが、夏から花を咲かせ、秋への季節の橋渡しをしてくれます。
華奢な姿が、夏の景色には涼しげに、秋の景色にはしめやかに馴染みます。
弱々しく見えますが、土質を選ばず、寒さにも強く丈夫な性質をもっています。
こようなところから、どのような場にも順応し、優しさの中にも、芯の強さを持つ日本女性をこの花に例え「やまとなでしこ」といいます。
また、名前の由来は、可憐な花が、かわいいわが子を撫でたい、と思う気持ちと同じ気持ちを抱かせることから「撫子」と名付けられたとのこと。
そのような気持ちを抱かせるのはその姿とともに、なでしこ色の魔法かもしれません。
ピンク系の色は愛情にかかわりの深い色。そして、ピンクは「なでしこ」の英名そのもの。
ピンク色の心情は、なでしに抱く、その気持ちそのものなのです。
「優しさ」と「強さ」と「かわいらしさ」
どれも兼ね備えた「なでしこ」
女性から見てもあこがれの姿です。まだまだ、なでしこから学ぶことがありそうですね。
「秋の七草から」…はぎ
小さな愛らしい花をちりばめて、秋の野を彩ってくれるは「ハギ」
「草かんむりに秋」と書くことからも、秋の代表的な植物ということが分かります。
秋分の日にお供えする「おはぎ」
この時期はとれたての小豆が使え、皮ごと煮て作った粒あんで餅を作ります。その粒が萩の花の咲いている姿に似ているからこの名前がついたといわれています。
現在は、ぼたもちとの比較からそのようにとりあげられことが多いですが、
古来に、萩の実を粉にして、粟と混ぜ、餅にして食べていたという歴史もあるので、萩の実を使わなくなった今も他の植物ではなく、「ハギ」の名前がそのまま残っているのかもしれません。
ハギにも、たくさんの種類がありますが、万葉の頃より私たちと生活を共にしてきたのは「ヤマハギ」
新芽はお茶、根は民間薬で婦人病に、茎は箒や萩天井に、花はハギ染めに、家畜の餌や緑肥として用いられてきました。
このように万葉から人々に親しまれた「ハギ」、やがて種子は動物の体や衣服にくっつき、やがて離れた場所で芽を出します。
小さな花ですが、生き抜く強さを私たちに教えてくれています。
※写真はミヤギハギ


