“歴史の重みと新たな感動” ~浜松バッハ研究会創立30周年 “マタイ受難曲”演奏会~ | FCN公式ブログ “ふじのくに・静岡から音楽と共に”

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昨日(4月19日)、浜松バッハ研究会の創立30周年記念の演奏会に伺いました。


演目は、バッハ作曲 “マタイ受難曲”
浜松バッハ研究会 マタイ受難曲演奏会 2015.4.19


私事で恐縮ですが、演奏者として、リスナーとして、公演事業のプロデューサーとして多方面の文化と出会ってきた私自身の音楽人生も40年を迎えようとしています。そして、40年目にして初めてバッハの大作“マタイ受難曲”の演奏会をライブで鑑賞できる幸運に恵まれました♪

 

多彩な歌声と楽器の音色が響き、ステキな音楽空間に包まれた瞬間でしたが、端的に表現するとしたら、“歴史の重みと新たな感動”の演奏会だったと私は率直に感じました。

 

この公演を前に、FCNでは、30周年を迎えた浜松バッハ研究会の河野周平代表にインタビューをお願いし、取材記事をFCN音楽文化情報サイトで公開しています。


FCN音楽文化情報サイト記事掲載 浜松バッハ研究会

FCN音楽文化情報サイト掲載の取材記事はこちら

 

「バッハは現代のいま聴いても新しい」と語られた河野代表のお話が印象的でしたが、その言葉の一端を感じることができたような気がします。あまりに大作なため、すべてを一度に感じて理解することは難しいのですが、新鮮な感動や発見がいくつもあり、魅力満載のバッハの音楽世界を堪能できました。

 

冒頭の前奏の最初の音が響いた瞬間からいきなり感動でした!

イントロから続くバッハ研究会の皆さんの合唱が両サイドに分かれてステレオサウンドで響きながら、そこに中央から響く浜松少年少女合唱団のピュアな歌声が登場し、合唱のハーモニーがオーケストラと一体となって織りなす響きの空間に最初から魅了されました。

 

そして、指揮の三澤先生のチェンバロに導かれながら次々と登場するソリストの皆さんたちの歌唱、とりわけ福音史家のテノール歌手・畑さんのソロは素晴らしすぎて言葉になりません。

合唱は、同じようなコラールが何度も歌われますが、それぞれに表情や和音の色彩が異なり、発音ひとつとっても、深みやアクセントが異なるなど、単調な感じがなく印象的でした。

 

オーケストラは、二つのオーケストラが左右それぞれに配置され、このような形式で演奏を聴くこと自体が初めてのことでした。両方が一緒に演奏する時のサウンドと、左だけ、右だけといった、それぞれのオケのサウンドと響きの違いなど、これも楽しめるポイントの一つです。

そのほか多彩なソロ楽器の登場もこの作品の魅力です。

 

指揮者の三澤先生が奏でるチェンバロをはじめ、途中数曲で登場するヴィオラ・ダ・ガンバの音色、オルガンの響き、とても印象的だったリコーダーの二重奏、さらに後半の曲では、それぞれのオーケストラのコンミスが演奏するヴァイオリンによるロマンティックな旋律を奏でる独奏も際立つなど、単に作曲の素晴らしさだけでなく、演出家バッハを思わせる面白さも満載といった感じがしました。

 

演奏や響きの魅力ばかり書き連ねましたが、やはり、作品自体がキリストの受難を伝える聖書の聖句をテキストにしたものであることから、字幕を通して伝わる歌詞の言葉ひとつひとつが、バッハが作品にこめた内面的な深みのある世界にふれることができました。

 

さらに、私はFCNの企画担当として、格別な意味をもって今回のマタイ公演を鑑賞しました。

 

それは、昨年12月20日に同じアクトシティ浜松・中ホールで初演した、ふじのくにリスペクトミュージックフェスティバル“世界で一番の贈り物”浜松公演♪

 
RMF2014浜松公演 世界で一番の贈り物 2014.12.20
↑RMF2014浜松公演の詳しい伊情報はこちら

 

当公演の主人公フェリックス・メンデルスゾーンの生涯を大きく左右することになった、14歳のクリスマスにおばあさんからプレゼントされたものが、“マタイ受難曲”のスコアだったこと。

そして、没後一度も演奏されずに忘れ去られてしまっていたバッハの音楽に再び光を当て、現代の音楽の父としての地位を確立するきっかけとなったのが、メンデルスゾーンが20歳の年におこなったマタイ受難曲の歴史的蘇演(復活公演)でした。

 

14歳のフェリックス少年(メンデルスゾーン)が、「この作品こそ、世界中の多くの人々に聴いてほしい!」と強烈なインパクトを受けた作品を、ライブで体験できる機会となり、その意味でも歴史的な重みを感じるひとときとなりました。バッハへのリスペクト(敬意と感謝)に加え、メンデルスゾーンへのリスペクトもあらためて感じる機会となり、昨日の鑑賞をもって、昨年12月20日に初演した“世界で一番の贈り物”が実質的な意味で完結したような感じがしました。

 

河野代表のインタビュー記事に詳細が書かれていますが、今回のようなマタイ公演が、このようにライブで鑑賞できる「浜松」という街の文化がいかに恵まれているかということと、さらに、それを30年にわたり継続して歌い続けてこられているバッハ研究会の皆さんに心からの敬意と感謝をしたい気持ちになりました。今回のマタイ公演一つをとっても、合唱団の皆さんが積み重ねてこられた練習と、これだけ規模の大きな演奏会を実現するにあたって傾けてこられた努力は半端なものではないと思います。素晴らしい演奏会を本当にありがとうございました!

 

河野代表のお話の中で、これまでの音楽はすべてのバッハに流れ込み、その後の音楽はバッハから始まる・・・という、バッハはある種の根源的な「安心感」を与えてもらえる音楽であるという言葉が強く印象に残っています。

 

私個人においても、音楽人生40年目にして初めてバッハ演奏会に巡り会えた幸運にただただ感謝ですし、ここが“新たな出発点”ではないかな?とも感じる、たいへん貴重な一日となりました。関係する皆さまに御礼申し上げます。ありがとうございました(深々と礼・・・)

 

from FCN staff