今日は浜フィルの常光コンサートを聴きに、初めて浜松ホトニクスの常光製作所に伺いました。
やらまいか精神が生んだ「ものづくり」の街・浜松における、最先端技術の世界的企業・浜松ホトニクスの社屋の中に、驚くべき音響環境を備えたホールがあることにまず驚かされますが、今晩そこに登場するアーティストたちが、世界最高峰のオーケストラで活躍する音楽家たちということで、言葉では簡単にお伝えできないほど素晴らしすぎるひとときとなりました!
常光コンサートは、ホトニクスの社員の皆さんを対象にしたものですが、浜松フィルの賛助会員の方であれば有料(←超リーズナブル・驚)で鑑賞できるミニコンサートです。
出演は、世界最高峰のオーケストラ・ベルリンフィルハーモニー管弦楽団から、
オーボエ:クリストフ・ハルトマンさん、
クラリネット:ヴェンツェル・フックスさん、
ホルン:シュテファン・ドゥ・ルヴァル・イェジエルスキーさんの3人、
そして、ミュンヘン国際コンクールで最高位に輝き、世界で活躍する日本の若手ファゴット奏者・小山莉絵さん。
そこにピアニストの前田勇佑さんが共演し、演奏する曲は、モーツァルトとベートーヴェンがそれぞれ作曲した「ピアノと管楽のための五重奏曲」。
ピアノと4つの管楽器(オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット)という編成の作品をライブで聴くこと自体が初体験でしたが、音楽家ひとりひとりが素晴らしすぎて、演奏が感動的なことは言うまでもなく、超!贅沢で、ステキな響きの空間と時間を存分に楽しむことができるひとときとなりました。
ピアノ五重奏曲が演奏された本コンサートの前には、奏者の皆さん一人一人が曲目紹介とあいさつも交えながら、フレンドリーにソロやデュオやトリオなど、いろいろ演奏を聴かせていただき、とても楽しめました。
クラリネットのフックスさんは、ベルリン・フィルの首席奏者です。
帰宅後、私は過去録画してあったクラシック放送の中から、帝王カラヤンの後にベルリンフィルを指揮したクラウディオ・アバドが他界した際の追悼番組で放映された、1994年のベルリンフィル来日公演(チャイコフスキーの交響曲第5番)を、見直してみました。そうしたら、まだ当時、とても若いフックスさんが曲の冒頭のソロを吹いているではありませんか!?
1994年といえば、今から21年も前のことですが、当時から世界最高峰のベルリンフィルで活躍し続けているのですから、すごいですよね~。そのフックスさんの演奏とお話とブレス(息遣い・笑)を今晩、目の前で観ることができたのですから、感動もひとしおです。
浜松ホトニクスの役員であると同時に、プロオーケストラの浜松フィルハーモニー管弦楽団理事長の晝馬さんがホトニクスの社屋の中にあった体育館を改造して作られたというホールのようですが、音響空間の素晴らしさと、そこに置かれたピアノの音色もステキでした!
アクトシティ中ホールのような音楽専用ホールでしたら当然のことで別段驚くことでもないかもしれませんが、それが、製作所内のホールにあるのですから、それ自体がビックリですし、衝撃的な空間に感じました(驚)
、
そこに世界最高峰のオケのメンバーたちが集まっての演奏ですから、異空間に遭遇したような「新鮮さ」があり、一層感動を増幅してくれたように感じました。
今回、ベルリンフィルメンバーと小山さんの共演は、他の地域にもまわるジャパンツアーの一つという訳ではなく、5/24の浜フィルの名曲コンサート出演のためだけに集まったというから、これまたすごいことです。超ぜいたくなことですよね♪
会場は、アクトシティの中にある音楽工房ホールのようなフラットなフロアで、座席はフリーレイアウト式のホールです。雰囲気はとてもフレンドリーです。演奏者と同じ目線で距離感が近く感じれれ、私は今日、前から二列目に座りましたので、ベルリンフィルのメンバーや小山さんが私から5mほど先に居て、一緒にアンサンブルの輪に加わっているような臨場感があり、奏者の息遣いも間近に感じることができました。
感動!という言葉はこれまでも何回も使ってきましたが、今日は、そこに格別な意味合いを感じたのです。
演奏された曲は、モーツァルトとベートーベンの作品。
二人の大作曲家がこの作品を創作したのは、今も音楽の都と呼ばれるウィーン。
そして、活躍著しい二人の近くには、当時、開発と改良が進み、進化を続けていたピアノと4つの管楽器の名手たちがいたと言われています。
当時のウィーンは、今以上に世界ダントツの音楽の都ですから、そこで活躍する各楽器の演奏家たちは、まさに当時の「世界一」の名手であったでしょう。モーツァルトもベートーヴェンもそういった名手たちの演奏をイメージしながら、彼らの表現力や技術を存分に発揮できるような傑作が生まれたに違いありません。
そうして生んだ作品を発表できる場を提供していたのが、当時のウィーンで音楽をこよなく愛した王侯貴族などの人々です。その財力を投入して王宮や貴族の大邸宅の中に演奏会が出来るような広い空間と、ピアノなどの楽器を整え、ステキな音楽会のひとときを楽しんでいたことと思います。彼らの音楽文化への理解や思いがなければ、今の私たちに世界的な名曲が伝えられることは無かったかもしれません。
二人の大作曲家が、今晩のプログラム「ピアノと管楽のための五重奏曲」を初演したのは、18世紀後半です。当時、これらの作品を演奏できる環境は、庶民の家や地域のコミュニティの中にはなく、本当に限られた場所にしか存在していませんでした。一般庶民の生活とは、まったく別世界ともいえる「特異な空間」がそこにあったと言えるのではないでしょうか?
現代の大ホールのような巨大な空間ではなく、ホテルの宴会場ほどの大広間といった空間に、最高の楽器を整え、そして、何より「世界一」の名手たちが周辺の国や地域から集まっていたということ自体、当時、世界ダントツの音楽の都・ウィーンが成せる業でした。
産業革命もさらに進展し、もう少し時代が進めば、一般市民でも自分の家をサロンのようにして交流の場にするなど、さらなる広がりを見せる時代を迎えますが、モーツァルトやベートーヴェンの時代においては、音楽文化を格別に愛する王侯貴族など理解者の存在が無ければ、実現できなかったことと考えられます。
このような18世紀後半にウィーンにあった音楽界が、今日この浜松で、世界に誇る最先端企業の社屋の中に実在し、それが一般市民にも開かれる形で、まさに「特異な空間」を再現しているように感じたのです!
・日常にはない広い空間 (しかも音響も素晴らしい!)
・ステキな音を奏でるピアノ (もちろん前田さんの演奏が素晴らしい!)
・世界的な名手たち (言うまでもなく世界最高峰のオケのメンバーたちだから当たり前に素晴らしい!)
私はこれまで、浜松が「音楽の都」といっても、正直どこが?、という疑問を抱かざるを得ませんでした。
私自身も浜松の出身で、30代半ばまで実家があり、実家から学校に通い、会社にも10年近く勤務した第一のふるさとで格別に愛着もあります。学生時代には吹奏楽や管弦楽で部活動を、サラリーマン時代には、仕事の傍ら、吹奏楽団や合唱団に所属して活動していました。
浜松は、世界的な楽器メーカーが数多く集積している、屈指の「楽器の街」であることは、誰もが認めるところで、疑いの余地はありません。さらに、私自身もその一人でしたが、一般市民の中に音楽演奏を楽しむ愛好家の、総人口に占める割合が非常に高い街であることは、地方都市の中にあって特筆すべきことです。
しかし、それらを考慮したとしても、音楽の「都」と宣言してしまうことは、どうなのでしょうか??
世界にも日本の他地域にも、若手プロ奏者を輩出する国際音楽コンクールを開催している地域は多数あります。
また、クラシックを中心にしたハイクオリティな音楽興業等のソフト産業とその発展のベースとなる市場規模、さらに、高額なチケット料金の興業に出演を続け、多方面からオファーが殺到するようなプロの演奏家など、トップクラスの人材を輩出する有名音楽大学などなど、日本では「東京」がダントツで、地方都市はまったく比べものになりません・・・。
「ものづくり」という観点以外に、名実ともに世界トップクラスといえるようなハイクオリティな音楽文化がそこにあり、他の都市では出会うことができないようなものがなければ、何をもって浜松が「音楽の都」といえるのでしょうか?・・・、と真面目に首をかしげてしまいます。
そういったことを日頃から感じていましたので、今晩のコンサートで体験したことこそ、18世紀後半に実際に音楽の都・ウィーンで実現していた音楽世界そのもののように感じました!
18世紀後半のウィーンでは、封建的かつ階層的な身分社会といった構造が背景にあり、王侯貴族たちに財力が集中していました。モーツァルトやベートーヴェンが活躍した舞台では、音楽文化を特に愛好し、文化を格別に大事に考えていた王侯貴族たちが資金を提供して実現できていた「特異な空間」であったといえます。いわゆる資産家の音楽文化への莫大な投資があったからこそ、世界的な作曲家や、それぞれの楽器の世界的名手たちが集って活躍できる「音楽の都」が発展していきました。
そして現代では、民主的かつ自由主義経済の社会の中で、ここ浜松に最高の技術を有するクリエイティブな人材が集って世界のトップクラスに飛躍していった企業の一つが浜松ホトニクスです。
そして、音楽文化をこよなく愛好し、社会にとって大切なものとして考える経営者のもと、事業発展の中から生み出していった資産を活用して実現された「特異な空間」が、まさに今晩の常光コンサートという捉え方もできるのではないかと思います。
このこと自体、なんと凄く、ステキなことでしょうか!?
18世紀後半のウィーンのような封建的な社会では、一般庶民がモーツァルトやベートーヴェンのピアノ五重奏曲の演奏にふれることはそうそうできることではありませんでしたが、現代は違います。
浜松フィルは市民の誰でも鑑賞することができ、その活動に賛同し、社会にとって大切なものであるという点で共感し賛助会員になれば、超リーズナブルといえる料金で、だれでも常光コンサートが創り出す「特異な空間」に遭遇することができるんです!
浜松ホトニクスの社内にこのようなホールを作って7年になるそうですが、コンサートの最後に、浜松フィルの晝馬理事長が、「(当時はいろいろ言われたりもしたが・・・、)このホールを作って、今日、本当によかったと思いました」と語られていたのが、とても印象に残りました。
私は、これぞ浜松が「音楽の都」と語れるに相応しい一瞬ではないかな?と思います!
また今日、私のとなりに、数名の中高生たちが座って鑑賞していました。
このような若い世代の子どもたちは、今日、ほかのどの場所に行っても、そうそう出会うことができない、得難いものを体験できているわけですし、浜松が真に音楽の都になっていく礎になっていってほしい、と願うばかりです。
そして、今日の常光コンサートを実現していただいた、浜松フィルの晝馬理事長をはじめ、中心となってご尽力されているオーボエ奏者の清水さんをはじめ、関係の皆様に深く敬意を表します。
18世紀後半のウィーンで実現していた、素晴らしすぎる音楽会が、今晩浜松で再現されたことに驚きとともに、心の底から感謝の気持ちでいっぱいです!
ありがとうございました!!
from FCN staff
(追伸)
最後に、4人のステキすぎる管楽器奏者と共演されたピアニストの前田勇佑さんの演奏もすばらしく、とてもステキでした。美しいピアノの響き、管楽器たちとの会話をするかのような自然な掛け合いの美しさ、すべてが感動的でした。
FCN公式WEBのイベント情報でもご案内していますが、前田さんは、この秋、9/12にFCN主催“クラシックとジャズの響宴”に出演されます!
掛川の美感ホールは、一般的な公共施設ですので、ホトニクスの常光ホールのような「特異な空間」といえるような環境ではありませんが、素敵な音響空間と世界最高級のピアノがあります。
ぜひ前田さんのピアノリサイタルを直接聴きにいらしてください♪
[イベント情報]
9/12 FCN主催“クラシックとジャスの響宴”
前田勇佑ピアノリサイタル
http://www.fuji2010.net/event/910.html