「誠人が私のすべてだったのにこれから私はどうすればいいのよっ!?…やっぱり日本になんて行かせなきゃよかったわっ!!」

静香は取り乱しそう言って悔しそうに唇を噛んだ。

誠人はそんな静香を哀しそうに見つめた。

『お義母さん…いつからこうなったんだろう……』

昔の静香は血の繋がりがなくとも母親になろうと一生懸命誠人を世話してくれたはずなのにもうあまり思い出せない。

「そんな目で見ないでよっ!アメリカに帰ったらその考えは必ず変わるんだからっ!!」

静香は誠人の視線に気付くとそう吐き捨て病室を出ていった。

誠人はアメリカでの生活に不安を覚えノートに視線を移した。

この想いが抑えられなくなるかもしれないと思いつつも不安な心は麻琴との繋がりを求め開かずにいたノートを開いた。

ノートはびっしりと見慣れた麻琴の文字で埋め尽されていた。

どのページも赤ペンでチェックを入れて丁寧に説明書きまでしてあった。

「っっ!!!」

誠人は最後のページに書いてあった文字を見ると息を詰まらせて手の動きを止めた。

すれ違ってばかりの2人の心はそこで1つに繋がっていた。










「好き。」
「ずっとしてないから誠人さんもつらいでしょ?」

そう言って静香はギブスで巻かれた右足から誠人の身体の中心へと指を進めていった。

誠人はその手つきが何か別の生物が身体の上を這っている感覚に陥り気色悪くなって静香の手を取った。

「お義母さん!」

「大丈夫よ、しばらく誰も来ないって言ってるでしょ?……誠人さん?」

そう言って事を進めようとする静香の手を誠人は離さなかった。

「もう…やめてください。」

「どうして…?私のことが嫌いになったの!?」

誠人からの突然の拒絶に静香はヒステリックに叫んだ。

誠人はその不快感を感じた瞬間にすべてを悟った。

もうこれ以上汚れたくない―

「好きな奴が…いるんです。」

「っ!!」

誠人の告白に静香は絶句した。

誠人はそれ以上何も言わず膝の上の紙袋を握りしめた。

麻琴への想いを秘めてアメリカに帰っても静香と関係を続けることはできなかった。

その決心は麻琴に対する揺らぐことない想いと共に誠人の心に根強く芽生えた。

報われない想いだとしても忘れることなんてできない。

麻琴以外はもう目に入らない。
「誠人さん。2人きりね。」

そういうと義母は「ふふっ」と含み笑いをしギブスで巻かれた誠人の右足を指先で往復させた。

「お義母さん。」

「静香って呼んでって言ってるでしょ。」

そう言って手を止めようとした誠人に静香はそう言い返し手を止めようとはしなかった。

1度関係を持った後静香は誠人を求め誠人はなし崩しにそれに応じた。

―お義母さんの涙がこれで止まるのなら―

しかしその誠人の気持ちとは裏腹に静香は頻繁に誠人を求めるようになり誠人の中ではだんだんと嫌悪感が膨らんで行った。

自分は汚れている―

多感な時期に受けた衝撃は血の繋がりはないとはいえ母親とのその背徳感も加え誠人を今でも苦しめていた。

そんな中逃げるようにやってきた日本で麻琴に出会った。

自分とは対照的な麻琴の純粋で無垢な所に最初は興味を持った。

ストーカーに催淫薬をかがされた時をきっかけに誠人の中で小さな想いが芽生えた。

麻琴を抱いた時も誠人の中には充足感が広がり初めて満たされた気がした。

麻琴を想っている時は自分はきれいだと思えた。

禁欲的なまでにきれいな麻琴に魅せられている誠人がそこにいた。