気功全体を樹木として考えてみた/静観塾・四日目-1 | ふれあいと癒しの交響曲(名古屋/京都/気功/教室/講習/和気信一郎)

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気功の理論や教室のこと、日々のことなどを書いています




(一)
 「先生、今日はどんなことを教えて頂けるんでしょうか?」
 私たちが丸テーブルを取り囲んで座るなり、結衣が敬語を使ったのだ。
 「あら、結衣ちゃん、今日は丁寧な言葉ですこと。」
と、巴が言うと、
「はい、わたくし、淑女ですもの、ほほほほほ。。」
と、結衣が右手を口に当てて応じ、充と私は顔を見合って笑った。
 「私は常々、気功を学び深めていく人の中に、疎か(おろそか)にしている事柄があると感じているんです。」
 私は結衣の問いに答える為に、今回の塾の入口になる問題を提起した。
 「疎疎かにしている事柄ってどんなことなんですか?」
 充が訊いた。
 「それは、気功を深めていく為に必要な理論だと思っています。
 動きや形、或いは訓練法には関心があるんだけれど、勿論、それは楽しいことなんだけれど、その奥にある生理学的な人体科学を押さえておく必要があるんですね。」
「その理論を理解しておかないと、前に学んだ犬の話のように、トイプードルとかダックスフンドの名前と形は覚えるけれど、そこに流れる〔犬〕という本質は理解できないということなんですね。」
 充が自分を納得させるような口調で語り、腕を組んだ。
 「特に初心者は、動きや形など、表面的なところに関心を向けてしまいます。
 それは仕方のないことかも知れないんですが、大切なことは、その動きや形は何を目的に行なわれているのか、その動きや形は如何なる解剖学的、生理学的な作用によってひきおこされていりのか、その動きや形の中にはどんな法則性があるのか等を掴むことが大切なんですよね。」
 「わたし、全くの初心者だけど、この塾のお陰で、理論もちゃんと勉強できるんだ!」
 結衣は普段の結衣に戻っていた。
 「塾のお陰じゃなくて、静観先生のお陰でしょ?
 結衣ちゃんだけじゃなく、私も含めた3人みんなが気功を深く学べる訳なんだからね。」
と、巴が結衣を諭すような口調で言った。
 「はい、そうでした。
 有り難い先生のお陰です。」
 そう言って結衣は私に向かって合掌し、充も巴も声を出して笑ったのである。
 「何故に理論も勉強する必要があるかと言えば、一つの動きなどの中に潜んでいる人体科学を理解すると、その動きの基本が解り、そのことによって、それを色んな場面で応用できることになるからなんですね。」
 「それって、鈍なことにも言えるよね。」
と、結衣が話し出した。
 「例えばさ、料理教室などにに習いに行った人が、教えられたレシピ通りにしないと料理できないみたいに考えて、スーパーに一つ二つの食材がないと、もう料理が作れない人がいるみたいなんだよね。
 特に、男の人なんだけどさ。」
ど充に笑って顔を向け、更に言葉を続け。
 「スーパーにその食材がなくても、その代わりになる食材はあるし、その違った食材を使うことによって新しい料理を作ることも出来るんだよね。」
 「なるほどね。
 特に男の料理教室などで実習してきた旦那さんなどが、食材がなくて怒り出すなんて話、聞くからなぁ。」
と、充が自分のことではないと言わんばかりに、腕を組んだまま喋った。
 「そんな応用が出来るのは、その食材の持っている特徴や他の食材との愛称などという基本的な理論(知識)を知っているからでしょうね。」
と、巴が本質的な話をした。
 「気功を勉強していく上で、気功の理論を勉強しないでいては、気功は深まらないと肝に銘じておいていて下さい。」
と告げた私に、三人は「はい!」と応えた。

(二)
 「さて、気功を学び深めていく上で、必要な理論にはどんなものがあるのかについて考えてみましょうか。
 あっ、これは結衣さんにはちょっと理解し難いかも知れませんが、、巴さんや充さんの話も聞きながら、ノートをとっておいてくださいね。」
と、私は結衣に告げ、結衣は「はい!」と首を縦に振った。
 「まず、気功の習練にはどんなものがあるのかという点について理解しておきましょう。」
 「気功って、習練なの?」
 結衣は思ったら直ぐに言葉が出てしまうのだが、真面目な顔でシーンと聴いていられるよりラクナので、私は結衣を塾生に選んだことを喜んでいる。
 「そう、気功は習練なんですよ。
 結衣さんが共感したように、パーラミターからの世界を観に行く為の習練なんですね。」
 「あっ、そうか!
 で、どんな種類があるの?」
 「大きく分けると、気の訓練と、決まった形や動きのある作品、つまり功法ですね、の二つの習練法がある訳です。」
 「それは車の両輪みたいな漢字ですか?」
と、充が訊いた。
 「車の両輪とは少し違うんじゃないかと思います。」
 充と巴が目を光らせた。
 「桜でも林檎でも構いませんが、樹木を想像してみて下さいな。
 大きな気功の木があるんです。
 私たちが愛でたり味わったりするのは花や果実で、それは気功で言えば功法、作品ということになるんです。
 その花や果実を良い作品にする為に1年掛けて頑張ってきたのが、根や幹、そして枝や葉っぱなどたちで、そこが気功で言えば〔気の訓練〕になる訳です。」
 「美しい花を咲かせたり、美味しい実にする為には、根っこから枝の先まで大切に育てなければならないし、そこが気功の柱になるんですね。」
と、巴が噛みしめるように語った。
 「そうか!」
 結衣が跳び上がらんばかりに体を伸ばして叫んだ。
 「だから、大切なところを根幹って言うんだ!」
 「そうか、気の訓練と作品は車の両輪ではなく、根幹と花や果実の関係なんだ。」
と言った後、充はノートに樹木の絵を描き、説明の文字を添えていた

(つづく)