UFC279 感想 | 銀玉戦士のアトリエ

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試合3日前にカムザット・チマエフとケヴィン・ホランド両陣営の乱闘騒ぎが発生→本計量で乱闘騒ぎの張本人チマエフが8ポンドオーバーの計量ミス→これを受けてメインカード3試合をシャッフル、と、開催前からてんやわんやの騒動が巻き起こった今回のUFC279。

 

けしからんと思いつつも、一方でこういうイレギュラーな事件が起きてこそのワクワク感というのも格闘技興行にはつきものであります。いつぞやのK‘SFESTAで俺😝の3階級制覇😝👑👑👑を賭けた大雅💢とのタイトルマッチが決定→大雅が突然新生K-1から脱北💢→開催1ヶ月前で急遽ワンデートーナメントに変更→俺😝が優勝して3階級制覇達成😝👍なんて事もありましたが、あれはピンチをお釣りが来るほどのチャンスに変えてしまった良采配でした。

 

とはいえ、流石に8ポンドオーバーのチマエフをネイトに当てるのはUFC最終戦となったレジェンドのネイトにとってあまりにもアンフェア過ぎますし、かと言ってネイトとチマエフのカードを消滅させてしまうと、PPV大会のラインナップとしてはかなり苦しい。

なのでUFC陣営としても、ケヴィン・ホランドVSダニエル・ロドリゲスの試合がチマエフの計量オーバーの体重に近い180ポンド契約なのも幸いしてか、直前にカードをシャッフルするという策で試合を成立させたのは(興行的に)英断だったと思います。

本来ならばこれだけ体重オーバーした選手は失格処分で試合出場停止にするのが本来のあるべき姿なのでしょう。しかし一方で特にメジャー格闘技興行全般に言える事なんですけど、一握りのスター選手を欠場させてしまえばTV視聴率やPPVやチケット売り上げの面において数億~数百億の売り上げの違いが生まれてしまうわけで、マイナーな選手とかと違っておいそれと出場停止には出来ないという理由があります。なのでシャッフルによってメインとセミの試合の体重を合わせたのは、グレーゾーンのギリギリの形であれ競技としての体を一応保てたのかもしれません。もちろんこんな事は乱発すべきでないと言う事だけは釘を刺しておきましょう。

 

ただ、一番の貧乏くじを引いて自分よりも10ポンド重いダニエル・ロドリゲスと対戦するハメになってしまったリー・ジンリャンは試合を断っても良かったとは思いますが、不利な条件の試合を引き受けただけでも感謝するしかないです。当のジンリャンはスプリットで負けてしまったけど仕方がない。そういう意味では今大会の影のMVPでした。 UFCはジンリャンにも勝利者ボーナスを上げて下さい。

 

 

 

🏟 UFCウェルター級ワンマッチ🏟

⚪️🇺🇸ネイト・ディアスVSトニー・ファーガソン🇺🇸⚫️(4R一本勝利)

 

 

ボクシングが得意なネイトに対し、ファーガソンは序盤からネイトの射程の外の距離をキープしつつ、追い突き右フックや回転肘やカーフキック、前蹴りなどの多彩な攻撃を繰り出し、打ったら離れるというヒットアンドアウェイの立ち回り。

この辺りはいつものファーガソンらしい攻めではありますし、ネイト相手には打ち合いの距離には近づかないというのはレオン・エドワーズも徹底してやっていた事ですが、ただファーガソンの動きにキレが無く、揺さぶりを掛けているようにも見えますが反面無駄な動きが多いようにも見えます。

 

そんなファーガソンに対し、ネイトは有効打数では互角でしたが、ファーガソンが動いた後の際やガードの隙間を狙っての右ジャブ、ワンツー、右フックを急所を目掛けて的確に当てていきます。このボクシングの精度の高さがディアス兄弟の最大の武器です。ファーガソンは目蓋だけでなく脛にも出血が見られ、攻撃もネイトのバックステップでスカされて身体が流れるシーンも見られます。

 

3Rはファーガソンが重いローキックを蹴っていきますが、ネイトもパンチから右ミドル、ローキックへと繋げるコンビネーションがヒットし、ファーガソンを徐々に追い込んでいきます。ファーガソンの組みに対する脅威をあまり感じず、打撃戦に付き合ってくれたという事もあってか、ネイトとしてもガードを高くして戦えたというのも大きかったと思います。

これとバックステップを組み合わた事でファーガソンの攻撃を単発に終わらせ、致命打を貰わずに済む事が出来ました。

 

4R、苦し紛れにサークリングで逃れるファーガソンに対し、追い込んでワンツー、ボディへと繋げる得意のコンビネーションで蜂の巣にしていくネイト。と、ファーガソンはここでタックルを仕掛けてTDに成功しますが、ネイトは待ってましたとばかりにカウンターギロチンをセットしファーガソンはタップアウト。

大混乱の幕開けとなった UFC279でしたが、UFC契約最終戦となったネイト・ディアスがいかにも彼らしい一本勝ちでメインイベンターとして綺麗に興行を締めてくれました。

もし計量オーバーのチマエフと対戦させてたらかなり後味の悪いメインイベントになっていたので、ファーガソンにカードを変更して正解でした。

試合後のネイトの表情が清々しかったです。インタビューでは「UFCという団体には愛情と憎しみの両方があった」と語っていましたが、これが彼の偽らざる本音なんだと思います。

 

「チマエフの試合を見てしまうと・・・」とか「ファーガソンの衰えが・・・」とか色々見方があった試合でしたが、ネイトは良くも悪くもいつものネイト・ディアスだけど割と冷静に戦えていましたし(今日の出来を見るとサンチアゴ・ポンジニピオやヴィセンテ・ルケ辺りには相性で勝てると思います)、ファーガソンは衰えたけど急遽メインイベンターに抜擢されてネイトと試合できたのは良かったのかな?と試合後の両者の表情を観ていて思いました。

ファーガソンはこれで5連敗。あのサム・アルビーでも8連敗してリリースされなかったので、 功労者の一人として本人に離脱する意思がなければ簡単にはリリースされないでしょうが、次戦は適当な相手と試合して勝って引退、というのが良い引き際かなと思います。

 

一方で今回がUFC契約最終戦となったネイト・ディアスは、一旦UFCを離れて自身の団体の旗揚げとボクシング進出を語り、同時にベルトを獲るためにUFCへ戻ってくる可能性も示唆していました。

この辺りは今後の世界のMMAプロモーションの流れが見えてくる発言でもあるので、次回のエントリーで語っていきます。

 

 

 

🏟キャッチウェイト(180ポンド)ワンマッチ🏟

⚪️🇸🇪カムザット・チマエフVSケヴィン・ホランド🇺🇸⚫️(1R一本勝利)

 

 

試合3日前にホテルで乱闘騒ぎを起こした張本人がこの両者。その直後にチマエフ、ホランド両名共に何食わぬ顔でインスタに写真をアップしていましたし、チマエフはインスタライブも行っていました。

 

この表情。反省するどころか、お騒がせして「してやったり」と思っているのでしょう。

 

フェイスオフの時も、一応口喧嘩してるんだけどお互い憎み合っているというよりかは、何だか心なしか楽しそう。これは試合が終わった後にどうせ仲直りするパターンだなとこの時思いました。

 

 

試合開始前、グローブタッチする両者。乱闘騒ぎ起こしてたくせにそこは律儀なんだなwww

 

試合開始後、ホランドがタッチしようと手を伸ばしていったところへ、すかさず開幕タックルを仕掛けてTDに成功したチマエフ。このタッチはホランドが心理的に無意識にビビってしまっているようにも見えましたが、試合が始まってしまえば情は要りません。

 

組み伏せようとするチマエフに対し、柔術ベースのグラウンドエスケープで逃れようとするホランド。この辺りはスリリングな場面でしたが、チマエフはダースチョークをセットし、そこから逃れたホランドに再度ダースをセットしてタップアウト。

カムザット・チマエフ、体重超過は頂けないもののいつも通りの平常運転でケヴィン・ホランドを全く苦にせず一蹴。

 

試合後のインタビューで「体重超過なんて知ったこっちゃねーよ‼️」とヒールっぷりを炸裂させたチマエフ。実力は当然申し分なし。ウェルター級に再び落とせるかは怪しいところですが、ミドル級に上げても問題なくトップ戦線でやっていけるでしょう。

 

 

 

🏟 UFCライトヘビー級ワンマッチ🏟

⚪️🇧🇷ジョニー・ウォーカーVSイオン・クデラバ🇷🇴⚫️(1R一本勝利)

 

 

連敗中でここで負けたらリリースもありうるジョニー・ウォーカーでしたが、リアネイキドチョークで見事な一本勝ちを納めました。

 

ポイントとなったのがバックを取っての投げから、即座に四の字フックの形を取れた事だと思います。あれでバックコントロールで相手を逃さなかったのがフィニッシュの布石となりました。

 

連敗中は中遠距離打撃で組ませずポイントアウトで妙に綺麗に戦おうとして、それが仇になっていたウォーカーでしたが、この選手の持ち味は少々荒っぽくとも身体能力を活かしたダイナミックな攻撃のはずです。なので弱点であった組み技を強化し一本勝ちを納めたのは彼にとって非常に大きいです。得意の打撃においても彼本来の野生を取り戻していければ調子も上向きになってくるでしょう。

 

 

 

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 

先日、元UFCファイターでミドル級ランカーだったカナダ出身のエリアス・テオドロウが34歳の若さで亡くなりました。

 

2014年にTUFのトーナメントで優勝してUFCデビュー。2019年にUFCをリリースされるまで8勝3敗という戦績を納めていました。

リリース後はフィーダーショー団体で3試合戦い、3連勝を納めメジャー団体への復帰も間近と思われていましたが、その裏では癌が進行していたようで、2022年9月11日、この世を去っていきました。

ロングヘアーが印象的で、回転系の蹴り技を主体に遠距離打撃で制空権を支配するのが得意なストライカーでした。

ご冥福をお祈りいたします。