Young Prospect〜チェイス・フーパー〜 | 銀玉戦士のアトリエ

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🇺🇸チェイス・フーパー🇺🇸(UFCフェザー級)

生年月日  1999年9月13日(22歳)

プロMMA戦績  11勝2敗

 

 

元UFCライト級王者、チャールズ・オリベイラは2010年、20歳の時にUFCデビューを果たし、そこから11年間UFCで戦い続けようやく昨年悲願のUFCのベルトを巻く事が出来ました。

他にもマックス・ホロウェイ、ダスティン・ポイエー等、20代前半でUFCデビューを果たし、30代というキャリアの円熟期となった現在、UFCで主力として活躍している選手は数多いです。

若くしてUFCデビューを果たしたのだから、当然その頃から何かしら光る部分はあったのですが、だからと言って彼らのUFCでのキャリアが最初から順風満帆だったのかと言うと、決してそうではありませんでした。

彼らに共通する点は、UFCの舞台で時には敗北を喫しながらも、それをバネにしていって研鑽を積み重ねていって、5~10年位の年月を重ねていって自身のMMAスタイルを完成形にまで磨き上げていった事です。あくまでもリリースされない事が前提ですが、若い頃からUFCで様々なタイプの選手を相手に試合経験を数多く積んでいく事はそれだけでも財産となります。

 

今回紹介するファイターは、2019年に20歳の若さでUFCデビューを果たしたチェイス・フーパーです。

 

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 

ワシントン州で生まれたチェイス・フーパー。

高校生だった2016年、17歳でアマチュアMMAデビューし、ブラジリアン柔術の大会でも少年の部で金メダルと銀メダルを獲得しました。

2017年にプロMMAファイターとしてデビュー。5勝無敗のレコードでプロデビューから僅か1年、2018年7月に18歳という年齢で「デイナ・ホワイト・コンテンダーシリーズ」に出場します。

フーパーは1Rに相手の猛攻に遭い、いきなりピンチを迎えるも、顔を腫らしながらもそこから足技を絡めたグラウンドへの引き込みに成功し、パスガードで優位なポジションを奪取してのパウンド連打で反撃。初回に奪われたポイントを2Rと3Rで引っくり返し、判定で見事な逆転勝利を納め、史上最年少でのUFCとの正式契約を果たします。

 

🌲試合動画🔜https://youtu.be/IigWphaMX64 🌲

 

コンテンダーシリーズの試合動画なのに740万回再生。若くて根性があるというのもそうですが、何よりもこの年齢にしては既に高いグラウンドスキルを試合の中で披露しているというのも評価されている点でしょう。

 

かくして、18歳という若さでUFCと正式契約を果たしたチェイス・フーパー。しかしレベルの高いUFCの舞台で戦うにはまだ経験不足と判断したUFC側は、フーパーをUFCパフォーマンスセンターでトレーニングさせつつ、Titan FCやIsland fightsといったフィーダーショー団体で1年間、試合経験を積ませてから本戦デビューさせる事にしました。

 

育成期間が終了し、2019年12月にUFCデビュー戦を迎えたフーパー。対戦相手の元キックボクサー、ダニエル・テイマーに先制のテイクダウンを奪うと、バックからのパウンド連打と、マウントポジションからの打ち下ろしのエルボーで滅多打ちにし、デビュー戦を1RTKO勝利で飾りました。

 

あどけない表情が残る20歳の青年のUFC初勝利に、UFCファン界隈は早くも沸き立ちます。

髪型がベン・アスクレンに似ている事から「ベン・アスクレンの息子」とネット上ではイジられるようになり、本人達もノリ気になってSNS上でやり取りをする姿が見られるようになりました。

 

フーパーはアスクレンのレスリングスクールに出稽古にも行っており、そのプロモーション映像はUFCファイトパスで見られます(英語のみ)。

 

 

そんな、ブルーチッププロスペクトとして期待される事となったチェイス・フーパーのUFC2戦目の相手は、アレックス・カサレス。UFC歴10年で未だタイトル挑戦経験は無いものの、近年ファイトスタイルに老獪さが備わりつつあるベテラン選手です。

 

 

 

 

この試合でフーパーはUFCの壁というものを初めて痛感する事となります。サウスポーに構えるカサレスの打撃とフットワークに対応できず被弾が蓄積していったフーパーは、得意のグラウンドの形に持っていく事が出来ず、完敗を喫してしまいます。

打撃のディフェンス面での課題はコンテンダーシリーズから既に露呈されていましたが、その部分が修正されておらずカサレスに弱点を突かれた形となってしまいました。

 

続くピーター・バラット戦では粘りに粘ってのヒールフックで一本勝ちを納めたフーパー。しかしその次のスティーブン・ピーターソン戦では、相手の体重超過もあって同情の余地はあるものの、UFCで2敗目を喫してしまいました。

 

そこから約1年の充電期間を経て、2022年5月に行われたフェリペ・コラレス戦。

柔術、柔道黒帯というコラレスに対し、フーパーはサウスポーに構えワンツー、左ストレートをヒットさせていきながら、相手の蹴りをキャッチしたりケージに押し付けてのテイクダウンに成功します。

そこからパウンドを放ちダメージを与えていくフーパー。柔術黒帯のコラレスもスイープで上を取っていきますが、フーパーもオモプラータや金網蹴り上げ後転スイープといったアクロバティックな柔術スキルを駆使してポジションを取り返し、動きのあるスクランブルの攻防を優位に進めていきます。

3Rにはケージ際で強烈な肘を効かせていったフーパー。課題であった打撃での向上の爪跡を見せたフーパーは、そこからバックマウントで組み伏せてレフェリーストップでTKO勝利を納めました。

 

🌲ハイライト動画🔜https://youtu.be/DCMP28vKZxE🌲

 

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 

フーパーのベースは柔術で、185cmの高身長と192cmの高リーチ、そして長い手足からのボディトライアングル(4の字フック)やラバーガードから派生する多彩なサブミッションで一本勝ちを狙います。

身体の柔らかさと身のこなしからスイープ、ローリングといった動きのあるグラウンドゲームを行使し、不利なポジションからでも逆転していける技術を豊富に兼ね備えています。比較的寝技の攻防を観るのが苦手なファンにとっても、フーパーの試合は楽しめるかと思います。

そして柔術が得意でありながらもマウントポジションやバックポジションからの強烈なパウンドも得意としているのが特徴的で、そのグラウンドスタイルはさながらハビブ・ヌルマゴメドフとチャールズ・オリベイラを融合させたように見えます。

 

🌲ハイライト動画🔜https://youtu.be/ncLpxYhS4Sw🌲

 

反面、MMAファイターとしてのパラメーターが寝技に突出している部分があり、ディフェンスを含めた打撃面やテイクダウン能力、そしてまだ若いという事もあってフィジカル面においてもUFCのランカークラスと対等に渡り合えるレベルには至っていない、というのが当面の課題ではありますが、直近のコラレス戦ではムエタイの技術が強化されてやや改善の傾向が見られており、これからの成長に期待したいところです。特にディフェンス面ではあまり打たれ過ぎると選手としてのピークに達した年齢になった時に打たれ弱くなってしまう、という懸念もあるので、これからは安定した試合運びというのも覚えていきたいところです。

 

何だかモデル並の美人のフィアンセも居て、意外とリア充を絵に描いたような日々を送っているフーパー。今の彼を観ていると柔術に特化していた10年前のチャールズ・オリベイラを思い出しますが、3年後もまだ25歳、これから怪我なく順調にMMAファイターとして成長していければ、将来的にUFC2階級制覇を達成できる存在になれるかもしれません。